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医療樹脂、対策本部始動でも配分は民間判断

2026年4月1日 (水)

行政・団体経済産業省と厚生労働省は3月31日、「中東情勢に影響を受ける医薬品・医療機器・医療物資等の確保対策本部」を共同設置し、第1回会合を開いた。本部長は赤澤亮正経産相と上野賢一郎厚労相の2人。高市早苗首相は同日の関係閣僚会議で、透析回路や輸血パックなどナフサ由来の樹脂製医療資材を具体的に挙げ、「国民の命に直結する。万が一にも支障があってはならない」と指示した。前日30日には日本化学工業協会と石油化学工業協会に対し、医療向け素材の優先供給を要請している。ただし要請に強制力はなく、ひっ迫局面では配分は各企業の契約と採算で決まる。(編集長・赤澤裕介)

▲医療樹脂を巡る政策対応の整理(クリックで拡大)

対策本部が対象に挙げた品目は透析回路、廃液容器、輸血パック、注射器、医療用手袋、エプロンだ。多くが中東産ナフサを原料としてタイやベトナムなどアジアの工場で生産されている。首相はこの点に直接触れ、「アジア諸国との製品供給・サプライチェーン確保の観点からの相互協力・支援も検討する」と述べた。厚労省は全国の医療現場で樹脂性消耗品の一斉点検を進めている。

上野厚労相は「直ちに供給が滞る状況にはない」としつつ、「通常の災害と異なり、時間が経つほど厳しい条件の製品が出てくる可能性がある」との認識を示した。使い捨ての医療資材は透析に限らず手術、救急、日常診療の現場で消費されており、樹脂供給の制約は医療全体に及ぶ。

全産業共通の原料、配分はこれからの課題

▲ナフサ由来樹脂の用途競合構造(クリックで拡大)

経産省は非中東産ナフサの確保を平時の2倍、月90万キロリットル規模に拡大する方針を示した。米国やペルーなどからの追加調達を進め、川下在庫と合わせ4か月分の需要を賄える見込みとしている。ただしこれは需要が均等に配分される前提の数字だ。ナフサから生成されるエチレンやプロピレンは食品包装、建材、自動車部品と同じ原料であり、いずれも社会インフラに関わる用途だ。特定用途に集中すれば、4か月は大幅に縮む。

配分の意思決定は石化メーカー、成形加工メーカー、商社、医療機器メーカーといった多段階の民間企業に分散している。各社は長期契約と採算を基準に原料の行き先を判断する。政府は業界2団体への要請と対策本部の情報集約で優先配分を促しているが、経済安全保障推進法の特定重要物資に医療用プラスチック原料は指定されておらず、配分を担保する制度的な仕組みは整っていない。

供給に余裕がある間は、要請と調整で回る。焦点はアジア工場のナフサ在庫が尽き、代替調達の到着が遅れる局面に移る。本誌が3月28日付で報じた通り、透析患者は国内に33万7414人、週3回の治療で使い捨て資材を消費する。代替調達の総量は確保に向かっている。一方で、逼迫局面での医療向け優先を担保する仕組みは、対策本部の発足後もまだ整っていない。

◆ この記事をより深く理解するために ◆

・TF設置と配分権限の課題
「赤澤経産相が担当相兼務、重要物資の供給調整が焦点」(3月30日)

・医療樹脂の供給構造と透析現場への影響
「透析34万人の命綱、樹脂が届かない」(3月27日)

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