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利用運送にも管理簿・書面義務が拡大

2026年4月1日 (水)

ロジスティクス4月1日、改正貨物自動車運送事業法(2024年公布)の追加施行で、元請けとして荷主から受託する貨物利用運送事業者にも、実運送体制管理簿の作成義務と書面交付義務が及んだ。求められるのは書類を作ることではない。委託のたびに変わる実運送事業者と請負階層を、後から説明できる状態を維持することだ。だが、受託時点で実運送主体と請負階層を確定できる前提で業務が設計されているケースは多くない。(編集長・赤澤裕介)

委託の記録が問われる

まず制度の変化を整理する。

▲改正貨物自動車運送事業法の適用範囲拡大(クリックで拡大)

25年4月施行で管理簿と書面交付の基本枠組みは始まっていた。ただし当時の国交省Q&Aでは、管理簿の作成主体は「真荷主から貨物の運送を引き受けた貨物自動車運送事業者」と整理されており、利用運送事業者は対象外だった。その後の追加改正で利用運送事業者にも準用が拡大され、26年4月1日に施行された。

管理簿の記載事項は、実運送事業者の商号・名称、貨物の内容・運送区間、請負階層の3点だ。対象は引受時の総重量が1.5トン以上の貨物で、保存期間は運送完了日から1年間、営業所に備え置く。

では、利用運送事業者にとって管理簿の作成はどこで詰まるのか。

国交省Q&Aに重要な整理がある。受託時点で実運送事業者と請負階層が実質的に特定できている場合は、運送ごとの記録は不要で一度作れば足りる。逆に、受託時点で未確定なら運送ごとの記録が必要になる。受託時点で末端の実運送事業者と請負階層を確定できない運用が、管理簿作成を困難にする。

朝、荷主からスポット案件が入る。利用運送事業者は協力会社に打診する。協力会社がさらに別の実運送事業者へ振る。受託時点では末端の実運送が未確定で、請負階層も固まっていない。運行後にようやく実運送主体が判明し、附帯作業と高速代も後から発生する。このとき問題になるのは記入作業の負担ではない。受託時点で未確定だった実態を、後から管理簿と書面の双方で整合させる必要が生じることだ。

管理簿は元請けが単独で完結して埋める書類ではない。元請けから委託先への通知(元請け連絡先、真荷主名、請負階層)と、実運送側から元請けへの通知(実運送事業者の商号、貨物内容・区間、請負階層)が連鎖して初めて管理簿が埋まる。通知フローが途切れた瞬間に、管理簿は埋まらない。利用運送の取引単位と実際の運行単位が一致しないことが、混載時のデータ切り出しをさらに難しくしている。

本誌が報じた契約管理の実態調査では、運送会社との契約管理を紙で保管している企業が35%、Excel(エクセル)やWord(ワード)で管理している企業が18%を占め、過半数がアナログ運用に依存していた。54.8%の企業が契約条件の認識違いや更新漏れといった契約起因のトラブルを経験しているとの回答もあった。

書面交付でも、問われるのは実態変化への追随だ。法定の記載事項は、運送役務の内容・対価、附帯業務がある場合はその内容・対価、高速料や燃料サーチャージなどの特別費用、当事者の氏名・住所、支払方法、交付年月日の6項目で、交付書面の写しは1年間保存する。電磁的方法は相手方の承諾がある場合に限り利用できる。

受託時点で附帯業務の有無が固まっていない場合や、高速代・待機といった特別費用が後から発生した場合、初回の書面と運行の実態は乖離しやすい。メールで送れても、承諾の取得、更新履歴の管理、再交付の判断が別途必要になる。書面と管理簿を配車・発注・請求のプロセスから切り離して扱えば、記録は残っても実態との整合は崩れやすい。

年間の利用運送量が100万トン以上の事業者には、さらに運送利用管理規程の作成と運送利用管理者の選任・届出が義務づけられた。管理規程には運営方針、健全化措置の内容、管理体制、管理者選任を記載し、管理者は事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者から選任する。管理者の職務には管理体制の整備に加え、管理簿作成事務の監督が含まれる。管理規程の不届出や虚偽届出等には100万円以下の罰金が定められている。書面不交付や管理簿の不備も行政処分の対象になりうる。

対応力には明確な差が出る。専任部門や情報集約の仕組みを置きやすい大手の利用運送事業者と、配車や受発注が人に依存しやすい中堅・地場の利用運送事業者では、末端情報の取得にかかる実務負担が大きく異なる。ただし差が出るのはシステムの有無ではない。受託時点で誰が情報を確定し、どこで更新し、誰が最終責任を持つかを決めているかどうかだ。

利用運送にも義務は及んだ。管理簿も書面も、委託の実態を追える業務設計があるかどうかを映し出す装置になる。まず委託先との通知フローを固める。次に書面テンプレートと更新ルールをそろえる。そのうえで、誰が最終責任を持つか決める。先に決めるべきなのはシステムではない。情報の流れと責任の所在だ。

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