ロジスティクス2026年4月1日、改正貨物自動車運送事業法が施行される。白ナンバーの無許可業者に運送を委託した荷主が、新たに刑事罰の対象となる。これまで主に処罰されてきたのは白トラ事業者だったが、同日以降は委託した側にも100万円以下の罰金が科される。問われるのは、使ったかどうかだけではない。委託先が本当に許可事業者か、荷主は確認できているのか。多重下請けと人手不足のなかで、見えない末端をどう管理するかが現場の焦点になる。(編集長・赤澤裕介)
白ナンバーの無許可業者による有償運送、いわゆる白トラはこれまでも違法だった。ただし処罰の中心は白トラ事業者であり、荷主が刑事責任を問われるには共犯関係の立証が必要で、実際に罰せられることはほとんどなかった。変わるのは4月1日からだ。共犯の立証がなくても、委託した側が独立に罰則の対象になる。
改正法で新設された第65条の2は「何人も」無許可で運送事業を経営する者に貨物の運送を委託してはならないと定め、違反した者に100万円以下の罰金を科す。「何人も」の射程は広い。荷主だけでなく、利用運送事業者(水屋)も元請け運送事業者も、等しくこの規定の対象になる。射程は一般貨物だけでなく、特定貨物や貨物軽自動車の領域にも及ぶ。
刑事罰とは別に、行政指導も同日から動き出す。白トラを利用しているおそれがある荷主に対しては、国土交通大臣が改善を「要請」する。要請を受けてもなお利用の疑いが強い場合には「勧告」が出され、勧告に従わなければ荷主の社名が「公表」される。罰金の額面以上に、社名公表は取引先や市場からの信用を直接損なう。この指導の担い手はトラック・物流Gメンであり、白トラ荷主規制はGメンの運用に直結する。
4月1日から変わるのは、白トラを走らせた側だけでなく、委託した側にも刑事罰と行政指導のリスクが及ぶことだ。
法施行を前にして、警察はすでに動いている。
2025年3月、警視庁は鋼材販売会社「泰誠産業」(東京都台東区)の社長を貨物自動車運送事業法違反の容疑で逮捕した。白トラ行為を巡り、荷主の共謀を認定して逮捕したのは全国初だった。社長は20年1月から、運送業の許可を持たない70代の男に鋼材の配送を依頼し続けていた。男は白ナンバーの4トン車で11都県の取引先に鋼材を運び、5年間に受け取った運賃の総額は5800万円に上る。荷主側は取り調べに対し「少量の荷物でも運んでくれて、急な依頼にも対応してくれた」という趣旨の話をしている。
この話が映し出すのは、違法と知りながらも利便性を優先した構造だ。正規の運送事業者には残業規制があり、急な依頼に応じられないことがある。少量の荷物だけのために車両を手配するのは割に合わない。その隙間に、規制の網の外にいる白トラが入り込む。泰誠産業の事例は、こうした構造がひとつの荷主のもとで5年間にわたって常態化していたことを示している。
同年4月には警視庁小松川署が白トラ事業者と委託元の運送会社を摘発し、7月には岐阜県警が白トラ行為を行った親子と、白トラと知りながら運送業務を委託した運送会社の社長を逮捕・再逮捕した。報道によると、白トラの摘発件数は24年に73件と前年の4倍に達し、25年上半期も42件と前年を上回るペースで推移している。法施行を待たずに荷主が逮捕されている事実は、白トラ利用がすでに刑事事件化していることを示している。
白トラはなぜ荷主の目をすり抜けるのか
荷主が「知らなかった」で済ませられない以上、問われるのは確認の仕組みだ。しかし、白トラを見抜くのが容易でないこともまた事実である。
第一の障壁は、多重下請けと利用運送の構造にある。荷主は契約相手だけを見て安心しがちだが、水屋(利用運送事業者)や元請けを介するうちに、末端の実運送事業者は見えなくなる。荷主が発注した荷物が3次、4次と流れる間に、白トラが紛れ込む。泰誠産業の事例では荷主が直接白トラに依頼していたが、多重下請けの最下層に白トラが入り込むケースでは、荷主はもとより元請けすら把握できていないことがある。
白ナンバーは自家用車両と同じナンバー色であり、荷受け場にトラックが来ても、ナンバープレートの色だけでは有償運送の許可の有無を判別できない。許可証や許可番号を確認しない限り、見抜けない。
そして24年問題がこの構造に圧力をかけている。ドライバーの残業規制(年960時間の上限)が施行されて以降、正規の運送事業者が受けきれない案件が増えている。「今すぐ運べる車」が優先され、許可の確認が後回しになる。「急な依頼にも対応してくれた」という荷主側の話は、この圧力の現れにほかならない。
こうした不可視性に対し、25年4月に施行された実運送体制管理簿は、元請けに実運送事業者の商号、貨物の区間、請負階層の記録を義務づけ、荷主にも閲覧請求の道を開いた。ただし対象は1.5トン以上の貨物に限られ、小口案件にはこの可視化の網が及ばない。
さらに4月1日以降は、緑ナンバー事業者の管理下で白ナンバーの自家用車を有償運送に使う例外運用も広がる。荷主にとって重要なのは車両のナンバー色ではなく、その運行の背後に許可事業者の管理があるかどうかだ。
4月1日以降の対応は、新規契約の整備より先に、いま走っている委託ルートの点検から始まる。
第1に、委託先の一般貨物自動車運送事業許可証の写しを取得し、許可番号を記録する。新規契約時だけでなく、既存の取引先についても改めて求める。許可証の提示を求めることに法的根拠は必要ない。取引条件の一部として設定すればよい。まず入り口で止める。
第2に、利用運送事業者や元請けを介する場合、契約書に「再委託先が許可事業者であることの確認を元請けの義務とする」旨の条項を入れる。荷主が自ら末端まで追えなくても、元請けに確認義務を課すことが防衛線になる。
第3に、実運送体制管理簿の閲覧を元請けに請求する。管理簿に記載された末端の実運送事業者名を把握し、自社で許可状態を照合する。可視化の中心的なツールだ。
第4に、各地方運輸局が公開している事業者一覧や、国交省の行政処分情報検索で、委託先の許可状態と処分歴を確認する。補助的な裏取りだが、既知の違反事業者を排除する効果がある。
4つの確認は技術的に難解ではない。難しいのは、繁忙時でも例外なくそれを回し続けることだ。泰誠産業の事例が示したのは、確認の仕組みが5年間にわたって不在だったという事実である。確認できることと、確認を実際にしていることの間には距離がある。
4月1日以降、荷主に問われるのは「知らなかった」と言えるかどうかではない。委託先の末端まで確認し、自社の運送委託が合法だったと説明できる体制を持っていたかどうかだ。白トラ規制は、違法業者の摘発強化であると同時に、荷主の確認責任を可視化する制度でもある。4月1日以降に広がるのは、運べる荷主と運べない荷主の差ではない。合法な委託を説明できる荷主と、できない荷主の差だ。
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