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外国人材は“選ぶ側”に、育成就労制度で採用変質

2026年4月23日 (木)

ロジスティクス現場DX(デジタルトランスフォーメーション)プラットフォームを提供するカミナシ(東京都千代田区)は22日、都内で報道関係者向け勉強会「育成就労制度・外国人就労の最新動向と企業の生存戦略」を開催した。「育成就労制度」が2027年4月より施行されることを踏まえたもの。

同会では、法改正による具体的な変化や影響について、「制度の本質」「採用市場」「受入企業のリアル」という3つの視点から専門家が登壇。労働力不足が深刻化するなか、企業がいかにして外国人材から「選ばれる」存在になるべきか、その具体的な道筋が示された。

第1部では、外国人雇用法務を得意とする弁護士法人Global HR Strategy 代表社員弁護士の杉田昌平氏が登壇。新制度の法的な本質と見据えるゴールについて解説した。

カミナシ育成就労制度

▲Global HR Strategy 代表社員弁護士の杉田昌平氏

杉田氏によると、およそ30年続いた技能実習制度から育成就労制度への移行は、制度の目的そのものの大きな転換を意味するという。これまで建前上「国際貢献と人材育成」を目的とし、労働力の需給調整手段としては認められていなかった制度が、新制度では「人材確保」と「人材育成」を正面から掲げることになる。

新制度設計の大きなポイントとして杉田氏は、「育成就労制度は、あくまで『特定技能1号』レベルの技能人材を育てるための制度である」と強調した。そのため、対象となる分野も特定技能1号に準拠する形に整理される。

また、大きな変更点となる「転籍」についても言及。これまでは計画された雇用主のもとで働き続けることが原則だったが、新制度では人権侵害等による「やむを得ない事情」だけでなく、一定の要件(同一機関での1-2年の就労、一定の日本語能力、転籍先からの移籍金支払いなど)を満たせば「本人の意向による転籍」が可能になる。杉田氏は「転籍がしやすくなる中で、いかに定着・成長してもらうかが企業の鍵となる」と警鐘を鳴らした。

第2部では、外国人材の採用や生活支援を行うグローバルトラストネットワークス(GTN、東京都豊島区)の青木千秋氏が、採用市場のリアルな変化について語った。

▲グローバルトラストネットワークス執行役員の青木千秋氏

青木氏は、今後の市場は「数から品質・即戦力・定着へ」と重心がシフトすると予測。「技術・人文知識・国際業務(技人国)」といった専門的な在留資格では、日本語能力N2が実質必須となり、国籍を問わない日本人と同条件でのスキル争奪戦へと統合されていく。一方で「特定技能」は専門職市場として醸成され、経験者が未経験者をマネジメントするような構造が生まれてきているという。

さらに、SNSの普及により労働環境や給与などの情報が外国人コミュニティー内で完全に透明化されている現状を指摘。「従来の送り出し機関に依存したブラックボックスな採用は限界を迎え、企業が直接、教育済みの人材を採用する『ダイレクト採用』が主流になるという。採用コストは労働力の『消費』ではなく、教育コストを先払いする『投資』へと変わる」と説明した。

企業が人材から「選ばれる」ためには、単なる就労支援にとどまらず、住居やライフラインの手続きといった入社後の「生活支援」までを一気通貫で行うことが不可欠であると締めくくった。

第3部では、カミナシのカミナシプロダクトマーケティングマネージャーである細見優太氏が、数多くの現場のDXを支援してきた経験から「雇用主・現場のリアルな課題と対策」について解説した。

▲カミナシプロダクトマーケティングマネージャーの細見優太氏

細見は、現場の大きな課題として「日本語レベルのばらつき」と「日本特有の暗黙知」を挙げた。特定技能外国人であっても、日本語でのコミュニケーションが十分に取れないケースは少なくない。また、日本の現場で主流の「背中を見て覚える(OJT)」文化や、マニュアルに書かれていない暗黙のルールは、海外出身者には通じず、トラブルの元になっているという。

また、現場管理者が多国籍な従業員に対して、それぞれが使用する母国のSNSツールを使い分け、翻訳ツールを介して別々に連絡をしているという非効率な実態も紹介された。

これらの課題に対し、細見は「デジタルツールを活用した『仕組み』と『仕掛け』が必要」と提言。カミナシが提供する従業員向けアプリでは、1つのチャットや動画マニュアルが従業員それぞれの母国語に自動翻訳される機能(やさしい日本語への変換も含む)を備えており、言語の壁を取り払うことができる。「外国人だからと特別扱いするのではなく、全従業員が同じルール・同じ場所で情報を共有できる仕組みを作ることが、定着と労働環境の改善につながる」と語った。

勉強会後の質疑応答では、メディアから「昨今の円安や他国(韓国や台湾など)との競争により、日本は外国人材の獲得で『取り負けている』のではないか」という質問があがった。

これに対し、GTNの青木氏は「給与という単一的な価値観で見れば変化はあるかもしれないが、日本は生活の安全性や食文化など別の魅力で選ばれるようになってきている。現場の感覚として『負けている』という認識はない」と回答した。

また、カミナシの細見氏も現場の視点から「外国人材は一定の収入を得た上で『安全に暮らせること』『楽しく働けること』を非常に重視している。新制度によりこれまで曖昧だったルールが綺麗に整備されることで、日本特有の社会環境やホスピタリティなどの国民性、働く人との良好な関係性がより活かされるようになり、日本はさらに『選ばれる国』になっていくと期待している」とポジティブな見解を示した。

27年4月の「育成就労制度」施行は、単なる法改正にとどまらず、外国人労働者を「一時的な労働力」から「共に暮らす隣人・戦力」へと変える大きな転換点となる。企業には、制度の正しい理解はもちろんのこと、採用への投資、生活を含めた包括的な支援、そして現場のデジタル化による働きやすい環境づくりが急務となっていることが、勉強会を通じて浮き彫りとなった。(土屋悟)

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