調査・データ欧州31か国の鉄道規制機関が参加するIRG-Railの市場モニタリングレポート(2026年3月版)によると、貨物輸送量は前年比2%減の4310億トンキロと16年以来の低水準に落ち込んだ。列車走行距離も同3%減と縮小している。鉄道貨物は23年の急減(トンキロベースで7%減)に続く減少であり、回復は鈍いまま推移している。
主な原因は国際輸送の失速だ。国際貨物は5%減と大きく落ち込み、全体に占める比率も47%まで低下した。一方、国内輸送は1%増とわずかに持ち直したが、減少分を補うには至らなかった。22年比では国際輸送が17%減と急減しており、欧州域内サプライチェーンの弱含みが鉄道貨物に影を落としている。
輸送効率を示すロードファクターも伸び悩む。24年は1列車あたり557トンキロと1%改善したものの、20年比では2%低下した。半数の国でこの指標が悪化しており、積載効率の低下が構造的に進んでいる可能性がある。
一方で、鉄道事業者の収益は輸送量の減少と逆行して増加した。24年の貨物収入は列車キロあたりで5%増、トンキロあたりでも3%増となり、ここ数年の上昇傾向を維持している。20年以降で20%超の物価上昇により、事業者が運賃引き上げによってコスト増を転嫁しているためだ。特に輸送量の大きいドイツやオーストリア、ポーランドなどで単価上昇が顕著だった。
コスト面では依然として不安定さが残る。電力コストは24年に15%減と初めて低下したものの、ディーゼル価格は11%上昇し、燃料コストは再び上昇した。エネルギー価格の変動が収益構造に与える影響は引き続き大きい。
また、線路使用料(TAC)も上昇圧力となっている。貨物向けTACは24年に6%上昇し、列車キロあたり単価は上昇傾向にある。輸送量が減少するなかで、線路使用料の単価上昇が収益性の圧迫要因となっている。
市場構造では競争の進展が続く。24年の貨物市場における国内既存事業者のシェアは42%まで低下し、前年比で3ポイント縮小した。一方、新規参入事業者などのシェアは41%まで拡大し、長期的には競争環境が強まっている。ただし、一部の国では依然として独占的な市場構造が残っており、地域差は大きい。
サービス品質の面では課題が顕在化している。貨物列車の定時性は国ごとの差が大きく、10%台からほぼ100%までばらつきがある。15分0秒基準を採用する国の単純平均は58%前後で推移しているが、24年は悪化した国が改善した国を上回った。主因としては、ネットワーク混雑や工事による迂回、車両トラブル、人手不足に加え、ダイヤ乱れ時に旅客列車が優先される運用が挙げられる。
さらにインフラ側の制約も無視できない。欧州全体の鉄道ネットワーク利用のうち貨物は17%にとどまり、旅客優先の構造が続く。平均利用密度も貨物は1日あたり9.1列車キロと、19年以降で最低水準に落ち込んだ。輸送枠そのものが制約となり、需要回復のボトルネックとなる可能性がある。
欧州の鉄道貨物は、輸送量減少と単価上昇が同時に進む「縮小均衡」の局面にある。国際輸送の弱さ、インフラ制約、コスト増といった複合要因が重なり、短期的な回復シナリオは描きにくい。価格転嫁で収益を維持する構造が続く一方で、輸送競争力そのものの再構築が問われる。
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