イベント配車システムを巡る賛否の声が、物流業界に渦巻いている。「数千万かけて導入したのに、結局最後は配車マンが手入力している」「システムが弾き出したルートが現場の道路事情を無視していて、ドライバーからクレームの嵐」などなど、そんな不平不満の声さえ、いまや珍しくない。そこで本誌は14日、特別討論会「配車システム『使えない』説は本当か。〜SaaSかスクラッチかAIの限界か、荷主の作法か。現場の絶望を実例150分で因数分解〜」を開催。事前申込みは400人を超え、具体的な不満・要望が107件寄せられた。
今回、ライナロジクス代表取締役の朴成浩氏、オプティマインド取締役CDOの斉東志一氏、パスコ システム事業部営業統括部長の井手修平氏、アイシン 物流事業推進室室長の服部憲兒氏、Hacobu プラットフォーム事業本部事業推進部部長の木地谷健介氏の5人が登壇した。

▲ 左から朴成浩氏、斉東志一氏、井手修平氏、服部憲兒氏、木地谷健介氏
議論の出発点は事業継続性(BCP)の問題だ。「今まで変えるという動機がなかなか見えなかった。しかし、今は何もしないと物流費が上がる。手を打たないと苦しくなる状況になっている」と斉東氏は指摘した。変革の動機が生まれやすい環境が整いつつある一方、現場の配車担当者は「私が組んでいるのは100点。60、70点じゃダメでしょう」と反発するという。6-7割の自動化を目指す経営側と、100点を譲らない現場側。この構図こそが「使えない」という声の根源だと、井手氏は喝破した。
暗黙知の問題も議論の核心に据わった。服部氏は変数を「距離・時間などのわかりやすい変数」「荷主ルールなどの制約の変数」「ドライバーの相性など暗黙の変数」の3つに整理した上で、「暗黙の変数が9割くらいあるんじゃないかと思っている。だからこそ難しい」と心情を吐露した。
さらに、実績データを積み重ねて暗黙知をあぶり出す手法を、東氏は提示。「時間指定10時〜12時だと思っていたが、よく見ると9時半くらいに着いている。そういう見えていなかった条件を、実行しながら炙り出していく。それをシステムに返す。このアプローチが現実的」と語った。だが現実は、「データがないです、じゃあどこにあるのかといえば紙にありますね。Excelにもなってないです、みたいな話も結構あるんですよね」と木地谷氏が実情を明かした。
荷主と運送会社の「最適化の衝突」も深刻な問題として浮上した。服部氏は「荷主目線だけで計画を立て、物流会社さんを非常に苦しめた。こうしたことが実態として起きてしまっていた」と、荷主側の反省を率直に語った。この衝突を乗り越える鍵として、朴氏は「システムが共通言語になってくれる」と持論を加えた。「お互いに同じシステム上でシミュレーションで検証していると、この条件が考慮されていませんよね。じゃあ、この条件はもっと緩めていいので、こうなりませんか、といった共通言語ができる」と、朴氏は前向きに捉えた。

▲最後に登壇者全員で記念写真
最後に、各社が「何から着手するか」をホワイトボードに書き、発表する場面もあった。朴氏は「トライアル、まずやってみよう」と大きな字でボードを埋め、「一度使ってみれば、どんなデータが足りないのかなど、いろいろ見えてくる」と語った。斉東氏は「何を変える、何を守る」と記し、「変える動機があるからこそ、自分にとって絶対に守るべきものは何かを切り分けることが一番大事」との考えを伝えた。服部氏は「意思決定権者、責任は誰?」と問いかけ、「誰が最後までやりきるのかを明確にしてもらえると、目的に沿った考え方ができる」と述べた。木地谷氏は「データ」と書き、「普段の業務で使っている配送依頼書やExcelが何なのか、というところから始める。共通言語を作るイメージだ」と説明した。
最も印象的だったのは、井手氏の締めの言葉だ。「我が社の配車は特殊で難しいと、どの会社さんも必ずおっしゃいます。ただ、配車マンが組めているという事実がある以上、できるはずです。一緒にチャレンジしましょう」
配車システムが「使えない」のではない。期待値と現実のギャップ、関係者の目的のズレ、暗黙知をデータに写し取る難しさ。そうした要因が絡まり、効果を引き出しきれていない例が目立つと、150分の議論は結んだ。まず一歩を踏み出すこと。それが、この難題に風穴を開ける入り口になりそうだ。
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