話題静岡県内の食品スーパー向け一括物流を担う浜名梱包輸送の「浜松TPLセンター」では、長らくスポットの派遣会社に依頼して日々の入出荷の波動を吸収してきた。しかし、期待していた人数が集まらない日、経験の浅いスタッフが重なると作業生産性にも影響があり、最後は社員も含めたスタッフ総出の人海戦術で出荷締め切り時間に間に合わせることもあった。転機になったのが、タイミーの「スマートグループ機能」の活用だ。自社稼働における条件設定に沿ってワーカーのグループを自動で作成するとともに、あえて新規(未経験者)を毎日1人だけ受け入れる。一見遠回りに見えるこの運用で、物流現場の戦力底上げを実現しつつある。
波動の大きい食品スーパー向け一括物流センター
浜名梱包輸送の「浜松TPLセンター」は、静岡県内を中心に店舗展開する地元の食品スーパー向け一括物流センターとして機能している。運営を委託しているのは大手食品卸で、浜名梱包輸送は10年ほど前から常温エリアで取り扱う食品や雑貨、ギフト商品といったアイテムの入荷、ラックへの格納、ピッキング、店別仕分けといった一連の庫内オペレーション業務を担当してきた。
食品スーパー向け一括物流センターには、共通する運営の難しさがある。曜日ごとに来店客数や購買動向が変わるため、センターの物量に波動が生じる。とりわけチラシ特売などの実施日には入出荷量が一気に膨れ上がる。さらに厄介なのは、この特売の設定が数週間前から決まっているとは限らず、急な変更が入ることも珍しくない点だ。物量の波に合わせて、どのタイミングで何人の作業員を配置するか。そのつど人員投入の計画を組み直す必要に迫られる。
浜松TPLセンターも例外ではなかった。同センターでは日々およそ40人体制でセンターを稼働しているが、このうち20人を常用、つまり長期雇用のスタッフで固定し、残る20人は物量見込みに応じてスポット派遣のスタッフで微調整するというシフトを組んでいた。
従来の運用の課題
スポット派遣に依頼していたが、浜松・浜名エリアはもともと人材確保が容易ではない土地柄でもあり、期待してた人数が集まらないことも。東京と名古屋を結ぶ東海道の大動脈上に位置し、物流拠点のみならず製造業の拠点も多いエリアで、時給水準も含めて人材獲得の競争が激しい。
仮に依頼通りに人数がそろったとしても、経験の浅いスタッフが多い場合には、既存スタッフや社員が総出で対応する人海戦術に頼らざるを得ない。「人数をそろえる」ことは、「戦力となる人数をそろえる」こととイコールではなかった。
商品を供給するルート配送便の出発時間は決まっている。そこに間に合わなければ店舗側で欠品が生じ、販売機会そのものを失いかねない。人手が足りない日でも、絶対に出発時間だけは変更できない。浜名梱包輸送浜松浜北営業所第二業務課の加藤潤一マネージャーは「出荷の締め時間は動かせないので、人が足りない日はとにかくその日のスタッフ全員でカバーするしかなかった。派遣会社を活用していたものの、毎朝、今日はちゃんと人数が集まるのだろうか、決められた時間までに荷ぞろえを済ませられるのかと気を揉んでいた」と振り返る。

▲浜名梱包輸送浜松浜北営業所第二業務課の加藤潤一マネージャー
スポット派遣を活用することで、繁忙な時間帯だけ人手を確保できる良さがある。必要な時間だけ人を頼めれば戦力を余らせることがなく、コスト面でも無駄が出ない。
だが、良いスタッフに出会ったとしても、次回も同じ人が働きにきてくれるとは限らない。教育や現場作業への慣れも、その日限りでリセットされてしまうこともある。せっかく「この人は戦力になる」と思った人に出会っても、次につなげる仕組みがなければ、毎回ゼロからの繰り返しになってしまう。
こうしたジレンマを抱えていたタイミングで舞い込んだのが、タイミーからの「スマートグループ機能を使ってみませんか」という提案だった。
経験値に応じてワーカー候補をグルーピング
タイミーが提供するスマートグループ機能は、お気に入りワーカーのグループを、あらかじめ設定した自社稼働における条件設定に沿って自動で作成する仕組みだ。事業者側があらかじめ条件を決めておけば、ワーカーを該当グループへ自動的に割り振ることができるため、条件に沿った母集団を形成できる点が特徴だ。
浜松TPLセンターでは、この機能を活用してワーカーを「即戦力グループ」(半年以内に5回以上勤務してくれた方)、「育成グループ」(半年以内に1~4回勤務してくれた方)、「新規グループ」(初めて勤務いただいた方)の3つのグループに分類。日々の募集はこの3グループへ向けて配信し、物量に応じてそれぞれのグループの人数を調整する運用にしている。こうしてあらかじめ経験値ごとに母集団を形成することで、当日集まるワーカーの顔ぶれやスキルの把握や、現場の生産性を安定させるのに役立てているのだ。

▲タイミー 東名阪物流事業部 東海物流G 東海物流1チーム カスタマーサクセスの熊野文太氏
タイミーの東名阪物流事業部 東海物流G 東海物流1チーム カスタマーサクセスの熊野文太氏は「以前はこうした仕組みがなかったため、日によって申し込みの傾向がさまざまでしたが、求める経験値の配分に合わせた運用に近づけられるようになったのは、大きな変化だったと感じている」と説明する。
将来の現場運営を見据えたワーカー募集
浜松TPLセンターの同機能の活用術で特筆すべきは、育成の枠とは別に、毎日必ず1名の新規ワーカーを組み込むというルールを設けていることだ。新規ワーカーの投入は一見すると非効率にも思えるかもしれない。経験者だけで固めれば、その日の作業生産性は間違いなく高くなる。実際、加藤マネージャーも「経験者だけで固めたほうが、目先の生産性は高い」と話す。
それでもあえて新規ワーカーを毎日1人入れているのは、今のリピートワーカーがいつまでもリピーターであり続けるとは限らないからだ。加藤マネージャーは「いま現場に来てくれている主力メンバーも、5年後、10年後にはこの仕事を離れているかもしれない。今のうちから少しずつ新規の方に働きに来てもらわなければ、戦力が育たずにいずれ自分たちの首を絞めることになる」と力説する。

▲右から浜名梱包輸送の加藤潤一氏、タイミーの熊野文太氏、森田康多氏
1日に受け入れる新規ワーカーを1人に絞っていることにも意味がある。一度に複数の未経験者が入ると、作業内容を教える側の負担が増えてしまうことが想定される。1人ずつであれば、既存スタッフやリピーターのサポートによって丁寧に教えることができ、現場の負担を抑えながら、新規ワーカー自身の初回体験の満足度も高めやすい。この「小さく確実に育てる」という発想が、リピート率の底上げにもつながっている。
生産性向上で作業完了の前倒しも実現
この運用を続けた結果、現在ワーカーのプールは全体で約280人まで拡大し、うち主力層が約50人、残る約230人が育成層として控える体制になっている。生産性の面では、以前は出荷完了が16時前後までかかることもあったが、今は予定より30分前倒しで作業が終わる日もあるという。募集をかけるとほぼ即日で枠が埋まることも多く、稼働率は9割後半に達している。
タイミーの東名阪物流事業部 東海物流G 東海物流1チームリーダー カスタマーサクセスの森田康多氏は「主力が50人、育成層がその4倍以上という規模まで広がっているが、まだまだ余地はあると見ている。働ける場所を求めているワーカーさんは他にもたくさんいらっしゃるので、私たちとしてもこうした場をもっと増やしていきたい」と力を込める。

▲タイミー 東名阪物流事業部 東海物流G 東海物流1チームリーダー カスタマーサクセスの森田康多氏
一方で人気化ゆえの副作用も出ている。加藤マネージャーによれば、常連ワーカーから「申し込みしたかったのに、すぐに枠が埋まってしまい、働くことができなかった」という声が寄せられることがあるという。担当者としては複雑な思いもあるが、加藤マネージャーは「それだけ来たいと思ってもらえている証拠でもある」と話す。
教育コストの削減効果も大きい。かつてはスポット派遣の新人一人につき5~10分の作業内容の説明が必要だったが、経験者を中心とした運用に切り替わったことで、この手間はほぼ不要になった。残業時間についても、延長勤務を希望するワーカーに任せるかたちで調整できるようになり、定時で上がれる社員も増えた。
加藤マネージャー自身の作業負荷も軽くなった。以前はどういった人がが来るか分からない中で人員計画を立てる必要があったが、今はシステム上で1週間先のオーダーを出せば、あとは日々の埋まり具合を確認するだけで済むようになった。加藤マネージャーは「募集をかける作業自体の時間は、体感で半分程度に減った」と明かす。

継続的に自社の戦力を育てる仕組み
今後は、母集団となるプールをさらに大きくしていくことが目標だ。新規ワーカーを絶やさず迎え入れ、経験を積んだ人から順に主力グループへと移行していく好循環を維持していきたいとしている。
浜松TPLセンターの取り組みが示すのは、スキマバイトを単なる欠員の穴埋めとして活用するのではなく、あえて新規を混ぜ続けることで、継続的に自社の戦力を育てる仕組みへと転換できるという事実だ。「経験者だけを集めたい」という現場の本音と、「将来の人手を絶やさない」という経営的な視点。この一見相反する2つの要請を、「新規は必ず1人」というシンプルなルールだけで両立させている浜松TPLセンターの取り組みは、同じ悩みを抱える他の物流現場にとって参考になるヒントがある。



































