ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

ロジネットJ、旧青山本店買収がもたらした混乱

2015年3月9日 (月)

ロジスティクスロジネットジャパン(LNJ)が7日公表した、同社グループの不適切な会計処理に関する第三者委員会の調査報告書で、旧青山本店(現ロジネットジャパン西日本)の買収後、「極度の混乱状態」が生じていたことが初めて明らかになった。

LNJがLNJ西日本を子会社化したのは12年1月31日。同社が西日本で食品物流を展開していたLNJ西日本を買収したのは、全国に物流ネットワークを拡大するためだったが、報告書によると、経営統合後まもなくLNJ西日本の元代表取締役らによる横領などの不正が相次いで発覚したという。

これを受けてLNJ西日本は12年12月3日付で元代表取締役を解任したが、その前後に倉庫部門や配送部門を統括する管理職らLNJ西日本の幹部を含む「約10人」が一斉に退職。この時期が年末の繁忙期と重なり、LNJ西日本は「極度の混乱状態に陥り、配送業務に重大な支障をきたしかねない」状況となった。

親会社のLNJでは「混乱を早期に収束させなければ、荷主から多額の損害賠償請求を受けるおそれがある」と判断、グループ全体の信用失墜による経営基盤への影響も生じかねないとして、同月中に「グループを挙げて可能な限りの施策を講じる」との経営判断を下し、グループ各社の役職員10人以上を出張・出向させた。

LNJ西日本の収益の柱は、「倉庫A」で2社の主要荷主の荷物をほかの荷主の荷物と併せて配送することで配送コストを抑える「共配制度」の運用にあったが、元代表取締役の解任から3か月後の13年3月、元代表取締役と緊密な人的関係にあった主要荷主の1社がLNJ西日本との取引から離脱。ほぼ同時期にもう1社の主要荷主も「16年2月をもって離脱する」見通しとなり、共配制度の根幹が崩壊しかねない事態に発展した。

LNJ西日本の株式を取得する際、取得額と時価純資産価額には10億4100万円の差額(後に10億4900万円に修正)があり、「のれん」(超過収益力)として評価されていたが、主要荷主の離脱に伴う共配制度の根幹が揺らいだことで、LNJ経営陣はのれんの減損の兆候を認識。LNJ西日本で「早急に新たな配送体制を整えなければ、西日本エリアの経営基盤を失いかねない」として、グループを挙げてLNJ西日本の経営を立て直す方針を打ち出し、倉庫3拠点の統合や新規倉庫の賃借などを判断した。

ところが、新規賃借倉庫で獲得するはずだった荷主に入庫の意思がなく、倉庫賃料の負担に見合う売上確保が困難な見通しとなった。監査法人はLNJの企画課・財務課担当者に「今後も改善のメドが立たない場合はのれんの減損処理の検討が必要」との見方を示唆。

ここに至って、LNJは「LNJ西日本の営業力では新規荷主の獲得は困難」との見方を強くし、新規賃借倉庫などの運営主体をLNJ傘下の中核事業会社である札幌通運に切り替えてLNJ西日本に転貸する方針を決議。さらに、LNJ西日本の事業をバックアップするため、大阪市北区の大阪駅前第2ビルにLNJの西日本営業部を立ち上げるとともに、13年11月12日に「青山本店再生プラン」を策定。しかし、13年度下期、14年度上期と業績は改善しなかったため、LNJは14年11月12日に新たな事業再生プランを策定しなおすこととなった。

LNJ西日本の再建などに伴うこうした取り組みの中で、倉庫賃料や従業員の派遣などに関連する費用負担に適切さを欠いている部分があり、監査法人からの指摘を受けて第三者委員会の設置に至ったが、LNJ西日本を巡る混乱をLNJが公表したのは初めて。

LNJは今後、「できるだけ早く」再発防止策をまとめる考えだが、横領などで解任されたLNJ西日本の元代表取締役に対する訴追の検討、買収の妥当性、情報開示の適切さなどについても、「必要に応じて修正を検討する可能性がある」(LNJ)としている。