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東レ、世界4極で炭素繊維増産、450億円投資

2012年3月9日 (金)

アパレル東レは9日、日本・米国・フランス・韓国の世界4極で炭素繊維の生産能力を増強すると発表した。4拠点に総額450億円を投じ、年産能力6000トンの生産設備を導入、2014年から15年にかけて段階的に生産を開始する。

 

東レは現在、グループで年産1万7900トンの炭素繊維生産能力を保有し、2013年1月までに年産2万1100トンに拡大することが決まっていた。今回の大規模増設により、グループ全体の生産能力は15年3月に年産2万7100トンまで拡大し、世界各地の顧客に同社の炭素繊維を安定供給する体制が拡充される。

 

日本では総投資額の半分を投じ、15年3月稼働を目指して愛媛工場に年産能力1000トンの、航空機・高級自動車用途向けを中心とする高機能細物炭素繊維生産設備を原糸(プリカーサ)からの一貫で建設する。

 

愛媛工場では現在、9月稼働の予定で年産能力1000トンの高機能細物炭素繊維生産設備の増設工事を進めているが、市場では細物糸をはじめとする高機能炭素繊維の需給がひっ迫しており、今回の増設はこうした旺盛な需要に対応するもの。

 

国内生産拠点をグローバルマザー工場と位置づけ、新技術・新製品開発とともに先端素材・高付加価値品の生産拠点として維持・強化していく方針。炭素繊維の需要は約9割が日本国外にあり、円高の定着によって日本からの輸出は厳しい事業環境が続いているが、政府の国内立地環境改善政策を活用し、こうした基本方針を堅持していく。

 

海外3拠点では、ボーイング787の生産本格化により、既存生産系列での航空機用途生産比率が高まる中、産業・スポーツ用途市場への安定供給体制を拡充するため、同用途市場でデファクト・スタンダードとなっている汎用高強度普通弾性率糸の生産設備を増強する。

 

フランス子会社では、世界第5位のオイルメジャー「トタル社」から同社ラック工場の土地約16万平方メートルを新たに購入し、日本、米国に続く3番目の拠点として、原糸(プリカーサ)生産設備を建設する。フランス子会社は現在、日本から原糸を輸入しているが、設備稼働後は自社生産品に切り替え、韓国子会社に原糸を供給する計画。

 

また、米国子会社では14年9月稼働予定で、年産能力2500トンの焼成設備を増設する。米国でのシェールガス実用化に伴って需要が拡大している天然ガス圧力容器向けなど、環境・エネルギー関連産業用途の市場拡大に確実に対応するとともに、市場拡大が期待されるブラジルなどの南米市場への供給体制を拡充する。

 

韓国でも、亀尾第3工場(慶尚北道亀尾市)に14年3月稼働予定で、CFAと同仕の年産能力2500トンの焼成設備を建設する。韓国子会社では現在、13年1月稼働予定で、年産能力2200トンの汎用高強度普通弾性率糸生産設備を建設中だが、「グリーン技術産業」の育成を掲げる韓国や中国での産業・スポーツ用途市場の拡大に対応する体制を強化する。

 

2011年のPAN系炭素繊維の世界需要は3万7000トンに拡大したと推定され、今後も年率15%以上の高成長が見込まれていることから、同社グループでは「今後も、炭素繊維市場の本格拡大に向け、航空・宇宙、産業、スポーツの各用途で用途開発を加速するとともに、生産体制を強化・拡充する」としている。