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日本出版取次協会、中国・九州で4月1日発売分から

「違法状態」改善へ雑誌発売日変更、運送会社の要請で

2019年3月11日 (月)

話題拡大を続ける輸送需要と人手不足を背景に、トラックドライバーの長時間労働が社会問題化していくなか、出版取次業界でもこうした運送業界の窮状が引き金となって、出版取次業界内のルール変更を余儀なくされる事例が明らかになった。

日本出版取次協会(東京都千代田区)は11日までに、関東から九州へ向かう幹線輸送業務の委託先運送会社から「現行の輸送スケジュールの緩和」を求められていたこと、その理由が「運行管理・労務管理上、法令違反の状態」にあったことなどを公表した。

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ルール変更の対象となったのは、東京から中国・九州地方へ向かうトラックの幹線輸送による輸送スケジュールで、これまで2日かかっていた輸送日数を4月1日以降に発売される商品から1日延ばすことになった。この影響で、中国地方5県では雑誌・書籍ともに発売日が1日遅くなるほか、九州島内の7県では一部の週刊誌の発売日が変更となり、書籍の発売日も1日遅れる。

同協会によると、委託先運送会社から申し入れがあったのは昨年10月のこと。ドライバーの労働時間に関する基準(改善基準告示)に定められている連続運転時間、トータルの運転時間、休息時間、拘束時間などの規定を順守しようとすれば、東京から中国・九州地方まで「2日間で輸送するのは困難」だとして、輸送スケジュールの見直しを迫られたのだという。

長期的な「出版不況」にある同業界では、会員各社による共同配送や業務の平準化に向けた取り組みを推進するプロジェクトチームを立ち上げ、業界ルールの見直しも視野に入れた出版物流の”抜本的な改革”を検討しているが、運送会社を取り巻く事業環境が、荷主業界に当たる同協会の「結論」を待ちきれなかったといえそうだ。

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業界ルールの見直しを迫られた格好の同協会では、こうした足下の環境変化を4月に開く総会で取りまとめる輸送対策にも反映させるとともに、従来から取り組んできた改革プロジェクトを加速させる公算が大きくなった。

具体的には、「発売日移動による業量平準化」「共配化」「新聞業界との共配実験」「コンビニエンスストア向け配送時間指定の緩和」「同一エリア同一発売の柔軟運用」などで、安定的な輸送手段を確保し続けるためにも、これまで以上に「運送会社を守っていかなければならない」(日本出版取次協会)という姿勢が求められるだろう。

今回の動きは中国・九州で「発売日が1日遅くなる」だけにとどまらず、北海道や四国、東北など、ほかの地方へ波及する可能性が高まっていると捉えるべきだ。また、このような運送業界を起点とする業界ルールの見直しについても、出版取次業界だけの”遠い問題”と考えると事態を見誤ることになりかねない。