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東京レールゲートに続くマルチテナント型物流施設も検討

JR貨物、横浜羽沢駅E&S方式にリニューアル開業

2019年11月30日 (土)

話題11月30日、相鉄・JR直通線開業で旅客新駅の「羽沢横浜国大駅」に注目が集まる中、同駅裏手に15万平方メートルの広大な敷地をもつJR貨物「横浜羽沢駅」のリニューアル開業式が行われた。

▲JR貨物の吉澤淳支社長

JR貨物関東支社の吉澤淳支社長は「トラックドライバー不足・環境問題への対策として鉄道へのモーダルシフトが進む中、総合物流基地である横浜羽沢駅の使命は重要性を増している。今回E&S方式(着発線荷役方式)に大幅改良したことで、荷役にかかる時間が短縮されただけでなく、深夜発着便の取り扱いにより、さらに利便性が向上した」とリニューアル開業の意味合いを語った。

同社は、今回の改良により荷役にかかる時間を30分から40分短縮。列車に積み込む貨物の受付締切時間の繰り下げと、列車から降ろした貨物の引渡時間の繰り上げを行った。また、同駅深夜0時10分発の札幌貨物ターミナル駅行きと、早朝4時4分発の北九州貨物ターミナル駅行きの取り扱いを開始し、これまで8本としていた列車本数を10本に増強。物流会社から要望の多い深夜帯の輸送に対応する。

E&S方式(着発線荷役方式)とは、コンテナを「本線」上の列車から積み降ろしするもので、従来は積み降ろしを行う「荷役線」と列車が走る「本線」が別々に存在し、両線を行き来する複雑な入換作業を要していた。この方式を採用した貨物駅は全国に29駅あり、横浜羽沢駅は30番目の採用駅となる。

▲従来の方式とE&S方式の比較(出所:JR貨物)

▲右のフェンスの向こう側を相鉄・JR直通線が走る

これまで改良を行わなかった理由と、このタイミングで改良を行った理由について吉澤支社長は、「JR貨物は全国で可能な限りE&S方式に改良する方向で進めていて、横浜羽沢駅も早期に着手したいという思いはあった。しかし、全国一斉に着手するほどの余力はないため、取扱量の多い貨物駅から順に取り掛かった。今回、相鉄・JR直通線と相鉄・東急直通線を整備する『都市鉄道利便増進事業』が持ち上がったことで、JR貨物としても17億円を投じて貨物駅の改良に踏み切った」と語った。

▲品川区に建設中の「レールゲートWEST」(出所:JR貨物)

同駅はR&S方式に改良したことで、15万平方メートルもの広大な土地に余力が生まれたわけだが、今後「東京レールゲート」のような構想はあるのか、という問いに対し吉澤支社長は、「社内で検討している。現在の平屋建て倉庫に入居している物流会社との相談や市街化調整区域の問題もあるが、今後5階・6階のマルチテナント型物流施設を建設する可能性はある」とした。来年3月に首都高速湾岸線と東名高速を結ぶ「横浜環状道路」が完成することで、同駅の物流拠点としての役割がますます高まるとみている。

▲サントリーロジスティクスの加納雅之課長

同駅を利用するサントリーロジスティクスの加納雅之課長は、「当社は東日本大震災を契機に利用を開始した。これまでに猛暑や冷夏などさまざまな状況を経験してきたが、サントリーグループ製品の安定供給は、横浜羽沢駅なくして語れない」と話しており、メーカー、コンビニ、宅配、特積み事業者など、同駅を利用する多くの企業にとって重要な拠点であることを示した。

横浜羽沢駅は、東海道貨物線の開通に伴って新設された貨物駅で、旧保土ヶ谷駅など横浜市内の貨物駅を集約した「総合物流基地」として1979年10月に開業した。現在では北海道・東北・関西・九州方面へのコンテナ列車の発着によって、神奈川県東部・横浜市を中心とする一大消費地の物流を支えており、セブンイレブン、サントリー、ヤマト運輸、佐川急便、日本通運、SBSロジコムなど、多くの企業が同駅の鉄道輸送を利用している。

▲横浜羽沢駅の入り口は多くのトラックが往来する

物流会社などが入居する事務所棟(左)と平屋建て倉庫の一部(右)

▲関係者の集合写真