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タクシー配送全国900社に急増、9月末まで措置延長

2020年5月8日 (金)

話題国土交通省は8日、特例措置として5月13日まで認めているタクシーの有償貨物運送について、その期限を9月30日まで延長することを明らかにした。外出自粛に伴う料理宅配などの”巣ごもり消費”需要の高まりを背景に、これまでに全国で特例措置の許可を受けたタクシー事業者の数は5月1日時点で900社に達したが、その勢いはさらに拡大している。同省は、利用者から好意的な意見が多いことに加え、タクシー事業者からも期限延長の要望があるため、9月末まで大幅に期限を延長することにしたという。

(イメージ画像)

この特例措置は、新型コロナウイルスの影響下で従業員の雇用維持に取り組んでいるタクシー事業者に対して許可しているもので、国交省は同日、各運輸局に延長を通達。許可期間の延長を希望する場合、特例措置の更新を申し出る手続きが必要になる。運輸支局の窓口で対応するほか、郵送やFAXでも受け付ける。

4月21日に特例措置を発表した当初、「貨物」の対象となるのは、営業自粛要請を受けた飲食店からの飲料や食料など「公共の福祉を確保するため、やむを得ないもの」としていたが、旅客運送需要の減少と食料品宅配需要の高まりが後押しする形でタクシー事業者からの申請が相次ぎ、サービスの利用も拡大した。

(出所:エムケイ)

タクシー大手のエムケイ(京都市南区)は、京都・札幌市内で飲食店が負担する配送料金を110円とするキャンペーンを展開、国土交通省が特例措置の期限を延長する場合には5月31日までキャンペーンを継続する方針を打ち出している。同社のスタンスについて、国交省は「そもそも雇用維持を目的に開始された特例措置だけに、この料金水準で雇用を守れるのかという議論はあろうが、料金設定は事業者の裁量範囲だ」としており、直ちに規制強化に踏み込む気配はない。

取材に応じた近畿運輸局によると、7日時点で管内96社に許可を出しており、8社が申請処理中。きょうも新たな申請が続いている。また、北海道運輸局では管内の347事業者のうち、3分の1に迫る100社が許可を受けているという。

(イメージ画像)

特例措置を9月30日まで延長する方針が示されたことで、申請事業者と利用者の増加が予想されるため、今後はより細かな運用方法の提示が求められる。当初国交省は、飲食店などの荷主とタクシー事業者の直接契約を想定していたことから、マッチングサービスなどを介した配送は認めない考えだったが、名古屋のタクシー事業者は5月1日から、マッチング方式によって配達注文を受けて食料品を配達するサービスに乗り出した。個人事業主が多いタクシー事業者にとっては、複数の飲食店と契約するのはハードルが高く、より簡単に多くの荷主から依頼を受ける方法としてマッチング方式の利用が広がる可能性もあるが、国交省は「あくまで(荷主である)飲食店と(貨物運送事業者とみなされる)タクシー事業者が相対する直接契約が望ましい」と釘を差す。

一方、衛生面の課題も浮上している。国交省は食料品などの積み込み場所にトランクを指定しているが、現時点で衛生管理は飲食店とタクシー事業者に任せられているのが実情だ。国交省は宅配専用の箱を用意することを推奨しているものの、配送距離や時間を制限する項目はない。このほか、5月13日までの限定措置として一部の地方自治体がタクシー事業者に出している補助金についても「公正な価格競争」の観点から見直しが進む可能性がありそうだ。

特例措置の長期化が見込まれる中、これまでの運用によって浮上した課題の整理も必要になってくるものとみられる。

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