ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

瀬戸内海の大崎上島でスマート交通・物流の実証実験

2020年11月5日 (木)

調査・データ富士通は5日、ドライバーの高齢化や人材不足、利用者の減少が深刻化し公共交通機関の維持が危惧されている瀬戸内海の大崎上島で、地元自治体と共同で島内に新たな交通・物流手段の確立を目指す実証実験を行う、と発表した。

富士通総研、大崎上島町、さんようバス、広島商船高専の4団体で大崎上島町スマートアイランド推進協議会を立ち上げ、国土交通省が進める「スマートアイランド推進実証調査」の採択を受け、大崎上島町の白水港と垂水港の区間で12月17日からオンデマンド交通技術と小型自動運転車両を活用して実証実験をはじめる。

実証実験では、富士通のオンデマンド配車サービスやコールセンター、パーセプティンジャパン社が開発した自動運転技術と低速電動車両を活用した「自動運転プラットフォーム」を採用。利用者がウェブサイトや電話を通じて乗車時間を予約し、白水港と垂水港の区間を自動運転車両で移動する、島内の新たな交通手段としての有効性を検証する。また、宅配品提供者が利用者の注文を受けて、自動運転車両を手配し配送する新たな物流手段も確かめる。

推進協議会が実証実験全体の調整と検証、実装に向けたビジネスモデルの検討を担当し、富士通はオンデマンド交通サービスの提供、運用支援、予約を受けるコールセンターサービスを提供。パーセプティンは自動運転車両や自動運転プラットフォーム、自動運転プログラムの提供、セーフティードライバーの派遣などを担う。

▲実証実験の概要

自動運転や自立モビリティの無人化を支える新技術

LiDAR(光により離れた物体の距離や方向を測定する技術)や高精細3Dマップを使用しない、ビジュアルSLAM(カメラで撮影された映像から地図や場所といった3次元情報とカメラの位置姿勢を同時に推定する技術)は、離島部や山間の過疎地に点在する集落への物資配送や人の送迎ルート構築に大きく寄与するだけでなく、導入コストの低さも魅力だ。

すでに最近のカーナビゲーションでは、曲がり角などの「ステアリング操作地点」の手前で「現実の街路」が画面に現れ、まさに目前に展がる景色と同一の映像上で進行指示がなされるが、それに類似したイメージがわかりいいだろう。このようなデジタルファインダー経由での画像利用は今後ますます増えるに違いない。

従来の調査や改訂にコストと時間のかかる既存システムではなく、単純な「撮って出し画像」(グーグルマップのストリートビューも同類)を取り込むことで成り立つ仕組みが、場所によっては自律モビリティに親和性高く、有効となることが実証されるだろう。各地での実験実証結果を集約し、最大公約数的な汎用にこぎつける意義は大きい。(企画編集委員・永田利紀)