話題各国で進む新型コロナウイルスワクチンの開発が最終段階に入り、世界では「いかにして円滑にワクチンを輸送・供給するか」と、物流に懸念を示す声が高まってきた。というのも、一部のワクチンは常時マイナス70度より低い状態を保たなければならず、輸送量も「世界で100億回分以上を短期間に届ける」という前代未聞のロジスティクスに、誰も対応できると断言できないからだ。
ポイントは「深低温状態をキープ」しながら「大量のワクチンを円滑に輸送・保管」すること。しかし残念ながら、現段階ではこのいずれもメドが立っていない。こうした中、静岡県沼津市の機械製造会社・エイディーディー(ADD)は、マイナス120度を保つ車載用の超低温フリーザーを開発したという。(編集部)
同社によると、新型コロナウイルスの流行以前から「マイナス120度に冷却し、その温度を保持する仕組み」は開発済みだった。ただ、それらは据え置き型で交流100ボルトの家庭用電源に対応したもので、個人医院では使用できるが、車載利用するとなれば、保管庫サイズの最適化や直流24ボルトに対応させるなどの改良が必要になる。
こうした「課題」はいずれも対処可能なもので、同社では自社の技術力を駆使し、わずか1か月程度で「車載用のワクチン保管庫」に仕立て上げるメドをつけた。
車載用保管庫の外寸は540(ミリ)×800×936、重量は90キロで、容積は47リットル。1台でおよそ1万回分のワクチンを収容できる。電源投入から専用の保冷剤がマイナス120度に到達するまでには3時間30分かかるが、いったんその温度に到達すれば、仮に電源が喪失してもマイナス80度以下を26時間以上キープするため、トラックに車載用保管庫を積載し、専用保冷剤のみを使用して軽トラックやバイクに積み替えることが可能になる。
車載運搬時の検体容器の破損や装置故障を抑制する振動防止オプションも用意する。価格は専用保冷剤とセットで1台250万円(税別)で、あとは量産の開始時期と生産能力が課題となる。
同社は「即納体制」を目指しているが、物流企業や卸などからの引き合いも増えてきたことから、「早ければ来年1月には納品できる体制が整いそうだ」との見通しを示している。まずは新型コロナウイルスワクチンの輸送向けにリソースを集中し、「マイナス100度以下」を強みとしてメディカル分野で幅広い輸送需要に対応していく考え。
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エイディーディー
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