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タクシーの貨物参入続々、全国で450社・2万6000台

2020年11月24日 (火)

フード10月から恒久的な制度としてスタートしたタクシーによる食料・飲料の有償貨物運送事業に、全国のタクシー会社459社が参入を決めたことが、LogisticsToday編集部の取材でわかった。

国土交通省によると、沖縄を除くすべての運輸局で許可申請が行われ、最も多かった関東では150件(1万913台)がタクシーによる貨物自動車運送事業許可を申請。ほかの地域も九州64件(2932件)、中部58件(3219台)、近畿32件(3003台)などなっており、多くのタクシー事業者が参入する意思を示した。

(イメージ画像)

すでに関東運輸局管内では、神奈川県内のタクシー会社2社が食料・飲料に限定した一般貨物自動車運送事業許可を11月5日付で取得し、一番乗り。この2社のほか、全国では11月13日までに新規4社、事業計画変更2社の6社が新たに参入を果たした。国交省は「全国の運輸局が迅速に申請を処理している」としており、近く500社近いタクシー会社が正式に貨物運送事業に参入することになる。

タクシーによる貨物配送は、新型コロナウイルスの影響で売り上げが減少したタクシー会社と飲食店を救済する目的で、4月21日から出前配送などに限り特例的に認められていたが、国交省が10月から貨物の対象を拡大して特例措置を恒久化。貨物運送事業許可を取得すれば、飲食店の料理だけでなく「原材料を含む食料・飲料全般」(国交省)の運送が可能となった。

また、特例措置の開始直後には認められていなかった座席スペースへの積載が可能となり、「乗車定員数×20キログラムまで」という貨物の重量制限も明確化されたほか、「トラック事業者により運送することがより適当であると考えられる場合は、許可を行わない」という文言も削除された。このほか、タクシー事業の運行管理者が貨物運送の基礎講習を受ければ、貨物事業の運行管理者として認められる制度も設けられている。

この規制緩和ともいえる通達を受け、これまで特例措置の枠組みの中で認可を取得していた多くのタクシー会社が貨物運送事業への参入を決めた。管轄する運輸局別に見ると、関東の150社・1万913台が突出して多いが、中部・近畿・九州でも3000台近い申請があり、貨物運送に新たな活路を求める動きが全国に広がっていることが分かる。

■タクシー会社による貨物運送事業許可申請件数(LogisticsToday編集部調べ)
 許可申請(うち事業計画変更による申請)車両数
全国459(29)26353
北海道運輸局42(3)1676
東北運輸局52(1)1857
関東運輸局150(8)10913
北陸信越運輸局21(2)1040
中部運輸局58(3)3219
近畿運輸局32(4)3003
中国運輸局29(5)1510
四国運輸局11(0)203
九州運手局64(3)2932
沖縄総合事務局0(0)0

10月の制度移行後に、関東のタクシー会社として初めて貨物運送事業許可を受けた東宝タクシー(横浜市鶴見区)は、取材に対し「貨物運送の運行管理者が足りないため、全車両の申請とはいかなかったが、今後は運行管理者を増やし、全車両が貨物を運べるようにする」と回答。同社は横浜市鶴見区で60年以上の業歴を持ち、地元の飲食店9店舗から料理を宅配するサービスを提供している。

東宝タクシーと同じ日に許可を取得した臨港タクシー(神奈川県横須賀市)は、来年4月以降に何らかの貨物運送サービスを開始することを明かした。

特例措置の期間中に110円の配送料金で注目を集めた大手タクシー会社のエムケイ(京都市南区)は、「20人が貨物の運行管理者資格を取得し、グループ4社で500台近くの許可を待っている。将来的に、日用品なども運べるようになればいいのだが」と、さらなる規制緩和を望む。

これまでは、忘れ物届けや買い物代行などの「救援事業」として、タクシーによる一部の貨物運送が許可されていたが、今後は「救援」でなくとも食料・飲料の貨物を運べるようになる。国交省ではタクシー会社による貨物輸送について「旅客事業に影響しない範囲」としているものの、ネットスーパーとタクシー会社の提携といった、創意工夫による事業展開も広がりそうだ。

国交省、タクシー貨物運送「食品原材料」も認める方針