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梱包省力化、注目すべきは柔軟なサイズ変更能力

2021年6月14日 (月)

話題トラックドライバーの不足は物流業界だけの課題ではなく、いまや社会課題として世間でも広く認知されるようになった。だが、物流業界で不足しているのは、トラックドライバーだけではない。流通加工や包装・梱包を担う倉庫作業員の不足も大きな課題なのだ。

倉庫作業員の場合、頭数だけの問題ではなく、熟練者の不足や属人化も課題である。

「EVO Cut’it!」(エボカットイット)は、梱包包装作業の人材不足を解消し、倉庫の自動化を実現する、倉庫内作業のトータルソリューション「e3neoシステム」の要となる封緘機である。EVO Cut’it!と「e3neoシステム」を提供する日本製紙ユニテックとトーモクの共同チーム、メカトロ推進室メンバーに話を聞いた。(坂田良平)

段ボールの高さを自動で可変する封緘機「EVO Cut’it!」とは

封緘(ふうかん)とは、商品を詰めた袋や箱の封を閉じることであり、封緘機とは、封緘作業を行う機械を指す。EVO Cut’it!は、商品を詰めた段ボールの蓋を閉じる工程を自動化できる機械であり、最大の特徴は、商品の高さを検知し、適切な高さに自動調整した上で、蓋をかぶせて封緘できることにある。

▲板状センサーで商品の高さを正確に検知

しかし、箱に詰められた商品の高さを検知し、箱の高さを変更できる封緘機はほかにも存在する。EVO Cut’it!がほかと違う点は、サーボモーター駆動でより正確に高さを検出できることと、設置後に底面サイズを変更できることにある。

封緘機において、箱内にある商品の高さを検出する方法としては、レーザーなど光学的な方法を用いるケースもあるが、EVO Cut’it!では、板状のセンサー部分を降下させ、箱詰めされた商品に優しく触れることで、より正確に高さを測定する。無段階に高さを調整できる特徴を生かし、箱と商品の上端の隙間を限りなくゼロに近づけることが可能なのだ。

▲上下の隙間を限りなくゼロに

「こうすれば、段ボール内で商品を守るための梱包材は、横方向だけで済みます。上下方向は、段ボールそのものが固定するわけですから。梱包材の削減になりますので、より環境に優しい梱包を実現できます」(日本製紙ユニテックエンジニアリング事業本部の加藤進二常務取締役)

商品を梱包する箱の高さを必要最小限に抑えられれば、トラック1台あたりの積載箱数を最大化できる。つまり、最小限のトラック台数で輸送体系を描くことが可能になり、輸送費用とCO2排出量の削減につながるというわけだ。

機械設置後に箱のサイズを変更可能

大原則として、これまでの封緘機は一度決めた箱の底面サイズを変更することはできなかった。そのため、もし違うサイズの箱に対する封緘機が必要になった場合には、新たに別の封緘機を購入するか、メーカーが封緘機をいったん引き取り、ユニットを交換する必要があった。

だが、EVO Cut’it!は設置された状態のまま部品を交換することで、箱の底面サイズを変更することが可能なのだ。(※部品交換と再セッティングには、数日必要。また変更可能な箱底面のサイズは、「EVO Cut’it!」各モデル(S/M/L)によって制限あり)

▲日本製紙ユニテックの國光正之氏

日本製紙ユニテックエンジニアリング事業本部e3neo推進チームの國光正之氏によれば、封緘機を導入した後で、箱のサイズを変更したいという希望は、意外とあるそうだ。

「すべての商品がまったく同じサイズというメーカーは、ほとんどいないでしょう。したがって、封緘機を導入する際には、『もっとも封緘機を利用したい』、つまりもっとも利用されることが多い箱のサイズをセッティングすることになるのですが、市場の変化、販売戦略の見直しなどにより、導入当初の想定と変わってしまうことも間々あります」

EVO Cut’it!が箱底面サイズを変更可能とはいえ、もちろん変更はなるべくないほうが良い。そこでメカトロ推進室では、導入前にクライアントの状況をつぶさにヒアリングし、最適な箱底面サイズを実装したライン提案を行う。

▲トーモクの今村真人氏

「100種の異なるサイズを持つ製品に対し、100種の発送箱を用意するのは、もちろん合理的ではありません。そこで私どもは、クライアントの多種多様な製品に対し、最大公約数としていくつの発送箱サイズを設けることが最適なのか、きちんとシミュレーションを行った上で、最適なご提案をいたします」(トーモク開発営業部e3neo販売チームの今村真人次長)

EVO Cut’it!の場合、箱の底面サイズだけを設定すれば良い。繰り返しになるが、高さは可変だからだ。クライアントの製品ラインナップや出荷時の箱サイズを考察し、最適な箱底面サイズを導く。そして、箱底面サイズに合わせて、封緘作業のライン数(すなわち、EVO Cut’it!の導入数)を提案するのだ。

ただし、「すべての箱サイズに対して導入するのは勧めない」と國光氏は語る。シミュレーションを行い、手作業による封緘作業も考慮した上で、もっとも費用対効果が高くなる導入について提案するのだ。

「当社へは『後から箱のサイズが変わったので、今まで使用していた封緘機が使えなくなってしまった』といった問い合わせもいただいています。EVO Cut’it!ならば、後からサイズが変えられるので、お客様に喜んでいただいています」(日本製紙ユニテックの國光正之氏)

▲「EVO Cut’it!」にはS/M/Lの3サイズがあり、箱サイズの許容範囲が異なる

オランダ育ちの「EVO Cut’it!」

▲日本製紙富士工場内にある展示場

EVO Cut’it!は、オランダRanpak Automation社(Ranpak社)が提供する、自動化ソリューションを構成する自動封緘機である。誤解のないように補足すると、日本製紙ユニテックとトーモクが立ち上げたメカトロ推進室は、今回フォーカスするEVO Cut’it!だけでなく、e3neoシステム全体における日本国内への販売と保守運用を手がける。

Ranpak社は、世界最大の紙製緩衝材メーカーである。もともとe3neoシステムは、neoパックソリューション社が開発したのだが、Ranpak社に会社ごと買収されたのだ。

日本製紙ユニテックは、日本製紙を親会社に持ち、日本製紙が保有する生産設備に関するノウハウを継承し、運用保守などを担う総合エンジニアリング企業。一方のトーモクは、段ボール製造販売において国内3位のシェアを持つ段ボールメーカーである。

▲日本製紙ユニテックの瀬戸口賢一氏

日本製紙ユニテック取締役の瀬戸口賢一氏は、「私が所属するエンジニアリング部門は、機械、電気、制御が横串的に統合された部門でした。2020年10月にメカトロ推進室が発足し、私が室長を仰せつかったのです」と、当時のことを振り返る。

日本製紙ユニテックとトーモクがタッグを組み、Ranpak社のe3neoシステムを取り扱うことは、18年にニュースリリースで発表されていた。技術面を担う日本製紙ユニテックと、e3neoシステムで利用される資材の開発・設計・供給と営業を担当するトーモクは準備を重ね、満を持して両社協働チームのメカトロ推進室を立ち上げたのだ。

▲メカトロ推進室は、日本製紙ユニテックとトーモクがタッグを組み、「e3neoシステム」のために生み出されたチームだ

Ranpak本社の技術スタッフから「ボス」と慕われるトレーナーの存在

▲日本製紙ユニテックの成田一平氏

このように説明すると、メカトロ推進室のことを海外ソリューションの単なる販売代理店だと勘違いする人もいるかもしれない。断言しよう。これは大間違いである。

メカトロ推進室チームに所属するRanpak社トレーナーの成田一平氏は、オランダのRanpak社に何度も渡航し、e3neoシステムに関する技術を学んだ。もともと、成田氏は日本製紙ユニテックにおいて、製紙の仕上げ工程に携わり、30年以上にわたり製造機械設備を担ってきたプロ中のプロである。Ranpak社の技術スタッフは、成田氏の持つ機械制御に関する高い技術、造詣に敬意を払い、現在では成田氏のことを「ボス」と呼んでいるそうだ。

もしかすると、読者の方の中には、海外メーカー製のEVO Cut’it!に関し、不安を感じる方もいるかもしれない。確かに、海外メーカー製の製造設備機械を導入すると、問題が発生した時に本国メンテナンススタッフの到着を待たなければならないことも少なくなく、手間と時間がかかるという話を耳にすることもある。

だが、ことEVO Cut’it!を始めとするe3neoシステムに関しては、その心配は無用だ。成田氏はRanpak本社の技術スタッフから、その技術力を評価され、尊敬される存在である。Ranpak社から社長表彰まで受けている成田氏の存在もあり、国内における技術サポート体制は万全と言っていい。

日本独自の進化を遂げる、『e3neoシステム』+αのトータルソリューション

実は、今回ご紹介しているe3neoシステムは、Ranpak社が提供する元の姿から日本独自の進化を遂げ、倉庫内処理に関するトータルソリューションへと進化を遂げている。

「EVO Cut’it!を求めるお客様は、封緘工程だけに課題を抱えているわけではありません。『ラベラーも欲しい』『パレタイジングロボットも必要だ』というふうに、倉庫内作業の自動化に対するニーズは、ほかにも抱えていらっしゃるのです」(日本製紙ユニテックの加藤進二氏)

日本製紙ユニテックとトーモクは、物流に関わる課題に関し、多くの知見を積み重ねてきた。これまでの経験を活かせば、e3neoシステムをさらに進化させることができるのだ。

▲「e3neoシステム」は、日本製紙ユニテックとトーモクのノウハウを継承し、梱包/包装/出荷に関するトータルソリューションへと独自進化を遂げた

「EVO Cut’it!に加え、私どもが提供可能な製函機、ウエイトチェッカー、伝票挿入、ラベラー、バーコードリーダー、パレタイジングロボットなどを加えたトータルソリューションを図式化したものです。加えて、日本製紙ユニテックには、日本製紙の工場設備運用を、長年にわたって支えてきた、機械制御のノウハウがあります。このノウハウを活用すれば、受注~調達~入庫~出庫のプロセス全体に対し、上位にある物流システムと機械制御システムを統合制御する、倉庫内業務のトータルソリューションが完成します」(トーモクの今村真人氏)

EVO Cut’it!の良さは、単体として活用するだけでなく、ライン中に組み込むことでさらに輝く。

一つは、封緘速度が早いこと。毎分最大15箱という封緘速度は、競合他社の封緘機と比べ最速である。

もう一つはコンパクトであること。EVO Cut’it!の機械幅は、Sサイズモデルで3143ミリ、Lサイズモデルで3553ミリであり、競合機よりも2メートル近くコンパクトである。これは、競合機が「箱を移動させてから折り込む」、すなわち3ステップ必要なのに対し、EVO Cut’it!では「箱を移動させながら折り込む」、すなわち2ステップで作業を行うためである。

限られた倉庫内スペースに設置する封緘機だからこそ、このコンパクトさはありがたい。競合機に比べ、さまざまな優位性を持つが、日本ではこのようにさらなる独自性と優位性を身に付け、進化しているのだ。

封緘機導入の目安となる作業ボリューム

「人件費が高い欧州では、一日2000個というのが、製函機導入のペイラインとなっています。日本国内の場合、一日の封緘個数が3000個を超えると、封緘作業の自動化を検討し始めるケースが多いです」(トーモクの今村真人氏)

今村氏によれば、おおむね一日3000-5000個の封緘ニーズがあれば、コストメリットが得られるという。

ただし、最近ではもっと少ない封緘数でもEVO Cut’it!を求めるケースがあるそうだ。例えば、午前中に出荷準備をすべて終わらせたいケースだ。最近では、路線便各社が集荷時間を厳密に運用し、かつ早める傾向がある。そのため、午前中にすべての出荷準備を終え、午後イチで集荷してもらう必要がある物流センターにおいて、封緘速度の早いEVO Cut’it!が求められるケースもあったそうだ。

封緘機導入に関しては、ネット上に情報も少なく、ユーザーが独自に採算分岐点を算出することも難しい。前述のとおり、出荷箱のバリエーションを考慮し、シミュレーションを行うことは、メカトロ推進室のようなプロに任せないと手痛い勘違いを招く可能性もある。

封緘機導入に課題を感じている読者には、日本製紙ユニテックとトーモクがタッグを組んだメカトロ推進室に遠慮なく相談してほしい。

人材不足に悩む倉庫にこそ、EVO Cut’it!を検討して欲しい

倉庫、物流センター内での包装や流通加工を担う、倉庫作業員の人材不足問題はふたつの要素を持つ。

頭数として、倉庫作業員が足りないという課題。高い技量を持った倉庫作業員が不足、もしくは高齢化するなどして、包装や流通加工の品質維持や継続が困難になるという課題。

後者は特に深刻だ。これは物流業に限った話ではなく、製造業でも同様の課題なのだが。日本の産業、特に中小企業においては、高い技量を備えた職人やパートなどが現場を支えてきた。

例えば、あるメーカーにおいて、商品を箱詰めする際に、梱包材を詰める工程があるとしよう。ベテランの倉庫作業員やパートは、出荷箱と商品、そして隙間の様子を確認、ひと目で必要量の梱包材を把握し、梱包材を封入できる。さりげない動作でありながらも、流れるような作業の様子はベテランならではだ。

だが、経験の浅い倉庫作業員やパートなどではこうはいかない。一度手にした梱包材を封入してはみたものの、多い少ないといった手戻りは、どうしても避けられない。

ベテランとそうでない者の作業スピードは、そのまま歩留まりに直結する。生産性がまるで違うのだ。

ベテランの作業スピードや品質といった属人化は、後継者問題だけではなく売上の拡大にも支障をきたす。限られたベテラン人材は、もしかしたら1.5倍から2倍くらいの作業ボリューム増加には対応できるかもしれない。だが、3倍、5倍の作業ボリューム増加、すなわち売上の拡大を担うのは到底無理だ。

だからと言って、人を増やし、育成することは難しい。少子高齢化が進行する日本において、人材不足はもはや国家そのものの課題である。

「EVO Cut’it!」、そして「e3neoシステム」がもたらす倉庫内作業の自動化は、人材不足に悩む倉庫会社、もしくは物流センターを運営する荷主企業にとって、救いとなるのだ。

製品の詳細・問い合わせ
「e3neo」特設ホームページ
https://www.tomoku.co.jp/npunitec_e3neo/

日本製紙ユニテック e3neoチーム(エンジニアリング事業本部)
所在地:静岡県富士市今井4-1-1
電話:0545-31-0601
メール:plant-honbu@npunitec.co.jp

トーモク 有楽町オフィス
所在地:東京都千代田区丸の内3-4-2 新日石ビル
電話:03-3215-0335
メール:kaihatsu-solution@tomoku.co.jp
担当:今村真人氏

▲(左から)日本製紙ユニテックの加藤進二氏、成田一平氏、トーモクの今村真人氏