ロジスティクス共同輸配送を進めたい。だが、荷主ごとに納品条件が違う。帰り荷の相性もある。車両の空き時間、ドライバーのシフト、拠点の作業時間、日々変わる荷量まで考えると、机上では成り立つ計画も、実際の運用にはなかなか乗らない。
修理、設置、点検など顧客先を訪問するフィールドサービスも同じだ。訪問先を効率よく回るだけなら、ルート最適化で済むように見える。だが実際には、作業スタッフのスキル、顧客の希望時間、緊急度合い、移動距離が絡み合う。補修部品を届けるアフターパーツ物流では、既存の配送順や便構成を崩せず、労働時間規制も考慮しなければならない。
物流現場には、「複雑すぎて最適化を諦めてきた領域」が少なくない。汎用的な配車システムやパッケージ型のソリューションでは、一定の標準業務は効率化できる。だが、企業ごとの商習慣、荷姿、納品条件、現場の暗黙知まで反映しようとすると限界が出る。結局は、ベテランの経験と勘、人手による調整に頼らざるを得なかった。
オプティマインド(名古屋市中区)が本格始動させた「ALGORITHM LAB」(アルゴリズムラボ)は、そうした複雑な輸配送課題を、現場で使われ続ける仕組みに変える。輸配送最適化ソリューション「Loogia」(ルージア)で培ってきた技術と現場知見を土台に、汎用システムでは解き切れない制約や暗黙知を数理モデルに落とし込み、個社ごとの専用アルゴリズムとして設計・開発する。
狙うのは、単なる「システム導入」ではない。これまで現場が半ば諦めていた複雑な物流課題をひも解き、現場が納得して使い続けられる仕組みとして具現化することだ。
アルゴリズムとは、現場条件を計画に変えるレシピ
AI(人工知能)の進化により、「複雑な課題もAIに任せれば自動で解ける」という期待は高まっている。だが物流計画では、結果だけでなく、なぜその運行順や車両割り当てになるのかを説明できなければならない。根拠の見えない計画は現場に定着しない。
社長の松下健氏は、「物流領域ではブラックボックス型の学習AIよりも、条件と判断根拠を整理できるホワイトボックス型の最適化が重要になる」と説明する。そのうえで、アルゴリズムを「レシピ」に例える。材料や道具があっても、どの順番で、どう組み合わせたら、どんな料理になるかはレシピ次第だ。物流でいえば、荷物、出荷時間、積載条件などの入力情報に、労働時間、納品条件、積み降ろし順などの制約を加え、目的に対して実行可能な計画を導くことにあたる。

▲松下健氏
パッケージでは届かない現場の制約
同社はこれまで、Loogiaを通じて、配車計画や配送ルートの最適化を支援してきた。基本となるのは、車両が何台あり、配送先が何カ所あり、どの順番で回ればよいかを導く配車計画である。
一方で、顧客企業との対話を重ねるなかで、既存の枠組みだけでは解けない課題も見えてきた。石油などのローリー配送、完成車輸送、工場間輸送、などは、単に配送順を決めれば終わるものではない。生産計画、出荷タイミング、船のカットオフ、積載方法など、多数の条件が絡む。
松下氏は、「1つのシンプルな配車アルゴリズムだけでは解けない。それでも解決したい輸送課題は数多くある」と話す。
「これまでのパッケージ型システムは、現場のオペレーションをシステムに合わせてもらう考え方だった。これだけAIや最適化技術が発達してきた今は、むしろユーザーごとのオペレーションにアルゴリズムを合わせにいくことが重要になる」
物流は企業ごとに違う。その独自性は非効率の原因であると同時に、サービス品質を支えてきた競争力でもある。アルゴリズムラボは、その違いを否定せず、個社の業務に合わせて解くことを目指す。
「属人化」を突破し、納品・修理の日程調整業務を自動化
ある機械設備メーカーでは、膨大な制約が絡み合う納品・訪問修理業務において、ベテランの手作業による日程調整が限界を迎えていた。オプティマインドは、顧客の希望する日時と作業スタッフのスキルに応じた担当割りから訪問順序の策定までを、一気通貫で自動計算する個社専用アルゴリズムを開発。これを基幹システムとAPI連携させた。
従来は顧客のオーダーから日時確定まで「数時間から2日」を要していたが、導入後は、空き状況に応じて「数分」で確定することが可能になった。また、スキルや資格などの条件を考慮して担当者を自動で割り当てることで、現場の省力化とサービス品質の安定化を両立。チームあたりの訪問件数は1日3件から4件へ向上し、従来50チームを要した業務量を47チームで対応するリソース圧縮も実現した。将来的にはさらなる体制スリム化も見込まれている。
単なる効率化にとどまらず、属人化により揺らぎがちだったサービス品質が高度に安定し、顧客の要望に素早く、的確に応える体制が整った。複雑な最適化問題を現場の実務レベルで解き切ることで、企業の経営資源を最大化し、顧客満足度を支える新たなサービス基盤を実現している。
複雑なパズルを解く-現場に寄り添う「専用アルゴリズム」の設計
アルゴリズムラボの支援領域は、配車や配送ルートの最適化にとどまらない。
例えば共同輸配送では、複数荷主の拠点や荷量を統合し、帰り荷の相性、車両の空き、拠点条件、ドライバーの勤務条件まで含めてネットワークを設計する。共同配送は必要だと分かっていても、マッチングまでは進み、日々の運用に落ちないケースが多い。
「アルゴリズムラボは、日々の運行に落とし込むための最後の詰めを担う」
完成車輸送では、生産計画、出港時間、納期、積載制約を同時に扱い、積載効率と車両回転率を高める。工場間輸送では、生産計画と輸送計画を連動させ、荷物の所在や出荷タイミングを踏まえて、どの拠点から、いつ、どれだけ動かすべきかを導き出す。幹線輸送では、430休憩や労働時間規制を守りながら、積載効率や運行効率を高める運行計画につなげる。
対象はさらに広がる。コンテナ詰込では、重量、重心、上積み可否、取り出し順などを考慮する。EV(電気自動車)の運用では、充電タイミングや航続距離も計画条件に加わる。いずれも共通するのは、制約条件が多すぎて、標準的なシステムでは現場の実態を扱い切れないという点だが、アルゴリズムラボでは、そうした複雑な条件や運用ルールを一つひとつ整理し、個社ごとの業務に合わせたアルゴリズムを設計・開発する。
課題定義から運用定着まで一気通貫で支援
アルゴリズムラボは、課題定義から現場への定着までを一気通貫で支援する。第1に、経営と現場の両面から、本当に解くべき問いを再定義する。第2に、現場に入り込み、熟練者の勘や独自ルールを抽出し、数理モデルへ変換する。第3に、業務特性に合わせた専用アルゴリズムを設計・開発する。第4に、アプリケーションやAPIを開発し、基幹システム、倉庫管理、輸配送管理など既存システムとも連携させる。第5に、導入後も運用データを踏まえ、継続的に精度を高める。
重要なのは、PoC(概念実証)で終わらせないことだ。物流現場では、考慮すべき条件が常に変わる。試験段階でよい結果が出ても、現場の運用導線に組み込まれなければ、やがて使われなくなる。アルゴリズムは作って終わりではなく、現場で動き続ける仕組みにして初めて価値を持つ。
松下氏は、同社の強みを「現場百遍」と表現する。現場の要望に応えるとは、依頼された機能を実装するだけではない。現場がなぜその条件を重視しているのか、どの例外が本当に必要なのか、どこまでなら運用を変えられるのかを顧客と共に見極めることだ。経営と現場の両面から解くべき課題を定義し、数理最適化の技術と現場理解が重なることで、初めて現場に定着する仕組みを構築できる。
オプティマインドは、同事業を自社単独のサービスとしてだけでなく、コンサルティング会社やSIerとの連携にも開く。コンサルティング会社が描く物流改革の構想に、現場で動かせる最適化ロジックを組み込む。SIerが構築するソリューションには、APIやモジュールとして提供する。業界固有の制約が強い領域では、関連するパートナー企業との共同開発も想定する。
労働時間規制、CO2削減、BCP対応など、物流に求められる条件は増え続けている。選択肢と制約が増えるほど、人が手作業で最適解を探すことは難しくなる。だからこそ、単にシステムを導入するのではなく、現場で本当に使われ、運用の中で進化し続ける仕組みをどう作るかが問われる。
その先にあるのは、複雑な制約を「できない理由」ではなく、計画に織り込むべき条件として扱う物流の姿である。


































