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セイノー情報S、成果あるDX導く経営判断力問う

2026年7月24日 (金)

イベントセイノー情報サービス(岐阜県大垣市)は24日、「物流ITソリューションセミナー50」を開催した。物流システムによる可視化・標準化から、AI(人工知能)やロボットを活用した自動化へと進んできた物流の変化を振り返り、制度改正や人手不足が進むなかで企業が優先すべき取り組みを議論した。

同セミナーは、物流ITの最新動向や実践的な活用策を発信する取り組みで、今回が節目の50回目。「物流の現在地から考える次の一手―環境・制度・テクノロジーの変化にどう立ち向かうか」をテーマに、物流メディア、荷主企業でのSCM(サプライチェーンマネジメント)実務、物流ITのそれぞれの視点から、今後の物流経営を考察し、本誌LOGISTICS TODAYから赤澤裕介編集長が登壇した。

セイノー情報サービス 矢野光章社長

冒頭、セイノー情報サービスの矢野光章社長があいさつし、時代とともに多様なテーマで議論した50回までの歴史を振り返り、物流が現場の個別課題ではなく、企業経営や事業成長に直結する領域へ変化しているとの認識を示した。同社がコンサルティング、IT、物流業務の受託を組み合わせ、物流全体の改革を支援する方向性についても紹介した。

赤澤編集長は「物流ITが変えた現場、残された経営課題」と題して講演した。運送事業の参入規制緩和から物流危機の顕在化に至る30年間を総括し、WMS(倉庫管理システム)やTMS(輸配送管理システム)、バーコードなど各種ITソリューションによる見える化の普及から、3PLの台頭、在庫や作業、輸配送の効率化とEC市場の拡大という流れを俯瞰。サプライチェーン全体の最適化と物流領域のAI活用へと至る現在までの変化を振り返った。

一方、ITや自動化技術が進歩しても、ドライバー不足や輸送力低下などの構造問題は解消されていないと指摘。販売条件、発注単位、在庫、生産計画など、物流部門の外側で決まる条件まで見直す必要があるとした。さらに、地政学リスクによるグローバルサプライチェーンの不安定化や、物流施設・制御システムを狙うサイバー攻撃、海外勢によるフィジカルAI技術の台頭にも言及。物流を取り巻くリスクが複雑化するなか、CLO(物流統括管理者)には、物流データを経営判断に結びつけ、在庫や投資、取引条件を部門横断で見直す役割が求められるとの認識を示した。

赤澤編集長

流通経済研究所特任研究員の荒木協和氏は「『形だけのCLO』では終われない―経営と現場をつなぎ変革するロジスティクス戦略」をテーマに登壇した。

物流コストが収益に与える影響や、荷待ち、需要の波動、多品種小ロット、検品・荷役などの課題を取り上げ、改善には物流部門だけでなく、営業、製造、調達、情報システム部門や取引先を巻き込む必要があると説明した。

CLOには、制度上の指標を管理するだけでなく、現場の実態や物流コストを数字で捉え、責任の所在を明らかにしながら、商慣行や社内の意思決定を変える役割が求められるとした。物流改革による成果を、コスト削減だけでなく、利益や企業価値への貢献として可視化する重要性も強調した。

セイノー情報サービスLLP事業部長の東松恵子氏は「物流DXの現在地と、成果を出すための転換点」をテーマに、AIエージェントを活用した意思決定支援の方向性を紹介した。

物流DX(デジタルトランスフォーメーション)は、データを集め、可視化し、分析するだけでは成果につながらないと指摘。データから何を読み取り、何を優先し、どのような指示と行動につなげるのかという「判断」まで含めて仕組みを設計する必要があるとした。

物流現場では、WMSやTMS、在庫、作業進捗、メールなどの情報が増える一方、それらを処理して判断できる人材が不足している。特定のセンター長や担当者の経験に依存するのではなく、判断基準を言語化し、組織の知識として残すことが重要になると説明した。

同社が開発を進める「ロジスティクス・エージェント」は、必要な情報の収集や異常検知、分析、改善案の提示を通じて、人の判断を支援するもの。講演では、出荷計画の作成や遅延リスクの抽出などをAIエージェントが支援する検証例を紹介した。

▲(左から)セイノー情報サービス 東松氏、流通経済研究所 荒木氏

AI導入に向けては、データを整理すること、判断のルールを明確にすること、過去の判断履歴を蓄積することが必要になるとした。AI導入の本質はシステムを追加することではなく、ベテランが持つ判断を企業の資産へ変えることにあるとまとめた。

講演後は、赤澤編集長をモデレーターに、荒木氏と東松氏によるパネルディスカッションを実施。「物流変革の時代を勝ち抜くために、企業は何を優先すべきか」をテーマに、物流ITが変えたことと変えられなかったこと、物流DXで成果を出す企業の条件、CLOに必要な能力、AIエージェントの役割を議論した。

物流ITによって大量のデータを蓄積し、在庫や入出荷の状況を把握できるようになった一方、データが部門ごとに分断され、分析や可視化だけで終わる課題が指摘された。システムを導入しても、担当者が高度に使いこなさなければ成果が出ないなど、新たな属人化が生じる場合もあるとした。

物流DXで成果を出すには、ツールの導入自体を目的にせず、何を改善するのかを経営層から現場まで共有することが必要になる。個人の過剰な努力に頼らず、全体最適の視点から適切な目標や運用基準を設定することも重要との認識で一致した。

今後のCLOや物流管理者には、現場を管理するだけでなく、既存の慣習を問い直し、人、データ、部門をつなぎながら変革を進める能力が求められる。AIについては、すべての意思決定を任せるのではなく、人が目的や判断基準を設計し、AIが情報収集や分析、選択肢の整理を担う役割分担が重要になるとした。

物流ITは、現場の作業を効率化し、状況を見えるようにする段階から、経営と現場の判断を支える基盤へと役割を広げつつある。節目の50回となったセミナーは、データやAIを導入すること自体ではなく、それを組織の意思決定と具体的な行動に結びつけられるかが、物流DXの成否を分けることを示した。

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