話題LOGISTICS TODAY編集部が4月13日から5月17日にかけて、物流企業や荷主企業を中心とする読者から3970人をランダムに選定して実施した「東京湾岸地区の物流施設ニーズに関する実態調査」(有効回答数1205件、回答率30.4%)の結果、32.9%が東京湾などのベイエリアに物流施設を設ける可能性があると回答、その半数以上が3000坪以上の大規模スペースを求めていることがわかった。
本記事では、港湾エリアに拠点を設ける上で何をメリット、デメリットと考えているかについて掘り下げる。(編集部特別取材班)
■ 労働者確保が最大のテーマ-港湾エリアの物流施設
回答者のほぼ3分の1(32.9%)が、「今後、港湾地区に物流拠点の開設を検討する可能性がある」と回答、その3分の1は具体的な時期について「3年以内」と答えており、東京湾岸エリアの物流施設ニーズが相当高いことを示唆する結果となった。
開設を検討する理由として多かったのは「輸出入拠点である港湾に近いから」(61%)、「ドレージ距離が短いから」(36.2%)といったベイエリアならではの回答のほか、「都心に近いから」(46.2%)、「近接する大都市圏へ移動しやすいから」(38.1%)といったロケーションに関するもので、驚きはない。
賃貸物流施設の賃料は市場、高速道路IC、港湾や空港などの物流インフラとの距離や労働力の確保しやすさで上下するものであり、都心に近く賃料水準が周辺に比べて高めのエリアは、通過型の物流センター(TC)として活用されるケースが多く、保管型の物流センター(DC)が比較的低めの賃料で利用できる施設に多いのとは対照的だ。
一方、港湾エリアのデメリットに目を転じた場合、53.8%もの回答者が選んだのは「賃料水準が内陸部に比べて高い」という選択肢だった。これに次いで多かったのは「港湾労働組合の影響力が比較的大きいと感じるから」(46.7%)、「港湾労働者派遣制度の活用にハードルの高さを感じるから」(42.9%)という、港湾エリアならではの労働者事情を示すもの。「従業員の通勤が不便」(39.5%)、「労働者を確保しにくい」(37.1%)も多く、これらの回答状況から、労働者確保が港湾エリアの最大の課題となっているのは間違いない。
■ 「港湾」特有の制度が心理的ハードルに
港湾エリアの物流を考える上で避けては通れない労働者確保の問題について、港湾労働者派遣制度や港湾労働組合の影響力を「デメリット」に選ぶ回答者が半数近くにのぼったのは、物流企業や荷主企業にとって港湾地区に倉庫を構える上で大きな心理的ハードルとなっていることを表している。
港湾労働者派遣制度は東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、関門のいわゆる6大港にのみ適用される仕組みで、港湾運送事業者が相互に常用労働者を派遣し合うことで、荷量が不安定な港湾物流の雇用リスクを緩和する施策として運用されている。
この仕組みを担保するため、港湾運送業務では労働者派遣法の適用が除外され、一般の労働者派遣が禁止されている。ユーザー企業にとっては「自由に労働者を雇用しにくい」といったイメージにつながり、これがデメリットとして認識される一因となっているものとみられる。
今回の調査では、東京港のコンテナターミナルで依然としてコンテナ輸送車両による渋滞が解消されず、円滑な物流を目指して港湾エリアに拠点を設けたい企業にとって無視できない課題となっていることを示唆するメッセージも寄せられた。港湾特有の制度や慣習が物流上のボトルネックとして存在し続けている状況は、現在も変わっていないといえよう。
続いて、物流企業や荷主企業のニーズを掘り下げていく。
2021年6月8日公開予定、「物流施設特集-東京ベイエリア編(下)」に続く。