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ニチレイロジ、災害予測時の輸送態勢を明記

現場の安全確保こそが「止めない物流」の定石だ

2021年7月2日 (金)

環境・CSRニチレイロジグループ本社(東京都中央区)はこのたび、台風など災害発生予測時の輸送態勢方針を策定した。2020年2月の国土交通省による異常気象下の輸送目安に係る通達に基づき、臨時休業や営業時間の変更、業務再開基準を明記。従業員の安全確保と貨物保全の観点から、「社会インフラである物流を止めない」使命を果たすための最適な行動について、荷主をはじめとする関係者に強く示した形だ。

(イメージ画像)

近年、大型の台風や大雨などによる激甚な風水害が全国各地で発生し、命に関わる大規模災害が物流業界の事業遂行にも大きな影響を与えるようになってきている。市民生活や企業活動に不可欠な社会インフラとして、物流業者は荷物の集配送を停滞させないよう努めているが、「エッセンシャルワーカー」として従事するドライバーや仕分けスタッフなどの通勤時や勤務中の安全確保は、人命尊重の立場から避けて通れない課題だ。いわば、「人命なくして物流なし」との発想だ。

国交省は20年2月28日付で、「台風等による異常気象時下における輸送の目安」を定め、物流業者などに通達を出した。トラック運送業者が安全確保の困難な状況下にもかかわらず、荷主の意向で輸送業務を強行して発生したトラック横転事故が象徴するように、物流現場ではドライバーの安全確保よりも荷物輸送業務の継続を優先する風土が残っているところもある。結果として、トラック運送事業者が行政処分を受けたり、当初の運行計画が崩れることにより、物流全体の効率性が損なわれ、持続的な物流機能にも影響が生じる事態に直結することになる。

国交省の通達は、「降雨」「暴風」「降雪」「視界不良」「警報発表時」の5パターンでぞれぞれ、具体的な数値を基準とする対応の目安を明記した。行政が民間の運送事業者へ細則を含めた通達を示すのは、異例の措置であり、運送現場を担う従業員の安全確保と、荷主への理解を強く求めたものだ。物流は現場のスタッフが支える社会インフラであることを考えると、当然の判断と言えるだろう。

ニチレイロジグループ本社が今回定めた方針も、こうした考え方を反映したものだ。

「臨時休業や営業時間の変更を行う基準」として、鉄道の運休計画や政府・気象庁・自治体からの警報・避難情報の発表、台風の進路と規模により物流業務の遂行が困難と判断した場合などを明記。さらに「業務再開手順」については、従業員の安全確認と業務実施人員の確保、物流施設や機器の機能と安全、交通インフラの機能を確認した段階で決定するとした。

国交省の通達を受けた同様の動きは、今後も運送事業者の間で広がる可能性がある。「物流現場スタッフを守ることがインフラ継続につながる」との発想が広がることを期待する。