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物流ロボは確実に課題解決効果が出る/AMR特集II

2021年7月21日 (水)

話題人手不足と”2024年問題”を抱える物流業界で、ロボットへの関心が急速に高まっている。6月24日にオンライン開催された「物流AMRフォーラム2021」では、当初の定員300人を大きく上回る700人超が参加を申し込み、2時間半に及ぶ4社の講演に耳を傾けた。

ロジザード代表の金澤氏は、「物流倉庫の自動化を実現するWMSの役割とロボット連携の狙い」をテーマに、WMSとAMRをはじめとするロボットの連携の重要性を解説した。ロジザードはWMSとの連携システムを提供しており、2020年6月にAGV、21年3月にAMRとの連携を実現している。

コロナ禍でも止まらない物流コストプッシュの流れ

▲ロジザードの金澤茂則社長

金澤氏は、新型コロナウイルスの流行により景気は悪化したが、コロナがあってもなくても物流コストの上昇が止まらないことを認識しておく必要がある、と主張。

同氏によると倉庫管理業者のコストプッシュ最大要因は、配送料の値上げ。2017年から2割以上の値上げがされており、上がった配送単価にどう対応していくかが最重要事項であったと指摘した上で、配送料の値上げに加え、倉庫賃料や人件費も高騰しており、この傾向は今後も続いていくことが予想される、との見方を示した。

また、今後はECの隆盛でさらに物流に人が必要になり、人手不足は拡大するとのこと。30年には644万人の人手不足になることが予想される。そして、日本の人手不足は単純な労働人口の増加だけでは埋まらず、生産性の向上をしないとカバーできないと述べている。

生産性向上策は「機械による自動化」が鉄板だが、投資の決断に苦悩する

さらに「倉庫は作業の塊であり、人の作業を置き換える機械化と倉庫は極めて親和性が高い。物流ロボットの導入をはじめとした自動化が生産性向上においては重要である。しかし、多くの企業では物流ロボットの導入効果は確実であるにもかかわらず、投資の決断に苦悩してしまう」と述べた上で、その背景として「物流業界は固定的な設備投資に対しては保守的であるためである」と解説。

自動化を始めるにはロボットをランニングコスト化する

このほか「これまでの設備投資に対する考え方は、固定費と変動費の比較であった。ロボットの導入は減価償却コストあり、導入時に大きな金額を投資する必要があったため導入判断に重みがあったのである。しかし、今後はRaaSモデルの普及でロボットの導入がランニングコスト化、同じくランニングコストである人件費と同一の土俵で評価できるようになっていき導入のハードルが下がることが予想される」と、コストに関する今後の見通しにも言及した。

ロボティクスを進めるためのWMSの役割

最後には、ロボティクスを進めるために「これまでの作業を共通の方式でまとめる」「人が担った作業を機械に置き換える」「機械をフル稼働させる」の3点が重要だと強調。WMSを活用することで、「これまでの作業を共通の方式でまとめる」ことに貢献し、ロボティクスの普及を進めていく考えを示した。

(以下、講演内容全文)

これは使える——。私は、2016年にAGVを最初に見た時、衝撃を感じました。今までいろいろな機械を導入するプロジェクトに携わってきましたが、今までの機械とは全く概念の違うテクノロジーだったからです。

それからずっと、自身の個人的な課題として、物流に生かす方法論を追いかけてきました。「これが実際に日本側で花開くのか」と楽しみにしてきましたが、現実には中国で急速に活用され始めたのが2017年から2018年の間ぐらいだったと思います。たくさんの現場でAGVが活躍しているのを見て、「確実に効果が出るんだな」と分かりました。

2018年には、お客様と一緒に日本で初となるAGVの現場を作ることに携わった結果から申し上げますと、AGV導入による効果は確実に出ます、間違いないです。革新的なところに通じているものだと理解をしております。今日は、WMS(倉庫管理システム)の見地から、このロボットの活用についてご案内をさせていただきます。

コロナ禍でも変わらない「コストプッシュの流れ」

第2部のテーマである「物流倉庫の自動化を実現するWMSの役割とロボット連携の狙い」ですが、まずはこのロボットを活用して物流の効率化を進めていくべき背景から、お話ししていきます。

昨年来の新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済の混乱は、非常に大きな影響を与えています。景気が悪いと、実質的なコストは低廉化されていくものなのですが、現実にはコロナ禍でも止まらないコストプッシュの流れがあります。

倉庫管理の観点から見ると、一番目立つところでは、配送料の値上げだと思っております。現在の配送料は2017年と比べて2割以上上昇しており、この最近は配送単価への対応が優先課題であり、庫内作業の改善は、もう少し先の課題だと考えた方も多かったでしょう。

ただし、配送料の今後の推移に関する話は、この後のテーマと関連してきます。倉庫におけるコスト面で考えますと、賃料は重要な要素となります。まずは、CBREの資料をご覧ください。

(出所:CBRE「不動産マーケットアウトルック2021」)

エリア別の賃料指数は緩やかながらも上昇を続けていますが、ここでは東京ベイエリアや外環道エリアをはじめとする「首都圏」を見ていきましょう。倉庫の賃料は、地方より中央の方がコストアップしていく傾向が明確になってきています。当然ながら、土地は限られていますから、倉庫のスペックが高度化していけば、当然ながら賃料が上がっていきます。若干インフレの傾向が出てきているところもあるかもしれませんが、実は首都圏がこうした影響を最も被りやすい体質になりつつあるのです。コロナ禍でなどでECの普及が急速に進み、その結果、倉庫の立地が非常に重要な要素になってきたという側面からも、こうした流れが発生してきたと考えられます。

今日の一番のポイントはここです。上昇するコスト、ここでは人件費について見ていきます。

ここに、リクルートジョブズリサーチセンターが毎月発表しております「アルバイト・パート募集時の平均時給調査」があります。実線は物流作業に従事するアルバイト・パートの時給の推移、破線が配送デリバリー関係に従事されているアルバイト・パート募集の単価です。2021年5月では、平均で1093円の時給で募集しないと人員が集まらない環境となっていることが分かります。

この5年間で見ると、1.1倍から1.2倍でじわじわと上昇しています。つまり、コロナ禍のあるなしに関わらず、コストプッシュが続いているということです。政府による最低賃金引き上げ策も背景に、人件費は当然ながらインフレ傾向が続くと容易に想像できます。

アフターコロナは急激な「人手不足」時代に

それでは、コロナ禍でもファンダメンタルが変わらないのはなぜでしょうか。

一番のベースになっているのは、明らかに人口減少つまり就労人口の減少という事実であり、コロナ禍とは全く無関係の動きです。その意味で、コロナワクチンによる有用な改善効果が現れれば、「アフターコロナ」時代を見据えた物流現場における構造の見直しに真剣に着手する時期が到来すると思うのです。

今後、ECの隆盛などに伴い、物流業界で「人」が必要になってきます。BtoBと比べて、BtoC物流では人ベース換算でおよそ1.2倍の工数がかかることが分かっています。つまり、このままeコマースが隆盛していけば、単純な人の増加策だけでは埋められない「不足」がこれから生じてくるということです。

(出所:パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計 2030」)

これはパーソル総合研究所と中央大学による労働市場の未来推計です。2030年の人手不足は全体で644万人になると言われております。2020年度に生まれた子供の数、結婚した数はコロナ禍の影響でさらに減少しているわけですから、さらに先の将来、人手不足はもっと急激なスピードで押し寄せます。そこで、働く女性やシニア、外国人を増やそうということになるわけです。

しかしながら、最終的に298万人が不足してしまうというのが、この推計の結論であり、これを埋め合わせるには、1人当たりの生産量を増やす必要があります。生産性を上げていかないと、結果的に日本は貧しくなってしまうわけです。ちなみに、この先10年間で81万人増えるはずの働く外国人は、現時点でほとんど増えていません。コロナ禍で渡航ができないからです。

とはいえ、厳しいコロナ禍で人を雇えない風潮が広がっていたわけですが、緊急事態宣言が解除されてワクチンの接種も進み、さらにオリンピックも終わってノーマルな状態に戻れば、私はまたかつての状況に戻ると想定しています。つまり、再び労働市場はタイトになると思っています。

2030年の仕事別の人手不足予測ですが、販売従事者で40万人、生産工程従事者で60万人、サービス職業従事者で71万人、運搬・清掃・包装等従事者で90万人が不足するとしています。90万人のうち、ドライバーと倉庫作業者で60万人を占め、それが業界全体で不足する人数になると思っています。

(出所:パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計 2030」)

とりわけ、全国の労働市場の39%を占めるとされる、首都圏での不足が顕著に現れると考えております。首都圏の物流会社は、あっという間に人手不足の事態に陥ると容易に想定されるわけです。これが、物流だけの事情であればどうにかなりそうなものですが、ここに挙げた4業種すべてで不足するわけですから、業種間で激しい奪い合いが起きるのは間違いありません。

もちろん、就労者も仕事の内容を見ているということです。それから、今回のコロナ禍で実感されていると思いますが、働き方の多様化と価値観の変化が起きています。こうした動きは、コロナ禍を契機にさらに強い流れで進んでいくことを考えると、新しい物流環境を構築する必要性が生まれてくるわけです。

物流現場には「人の仕事」を置き換える「機械化」がふさわしい

それでは、物流業界で生産性を向上する対策について考えていきましょう。

倉庫の中はまさに作業の塊であり、物流現場は「人の仕事」を置き換える「機械化」と極めて親和性が高いと思っています。同じ仕事を何回も繰り返させるなら機械にかなうものはなく、機械を導入すると大きな効果が出るわけです。つまり、ロボティクスは「物流DX(デジタルトランスフォーメーション)」とイコールであると考えて差し支えないでしょう。

女性やシルバーの方がたくさん働く現場を想像してみてください。フィジカルなアシストを与えることができるのは機械なのです。いろんな形を受け入れて多様な働き方を推進するためにも、やはりロボットの導入はどうしても必要になってくるものであり、最も効果が出るものだと考えているわけです。当然ながら、DXが物流環境で実現するかどうかは、人の募集にも影響を与えると想定しております。

ここで、物流ロボットを導入する際の阻害要因について考えてみましょう。私も、皆さんとロボットについてディスカッションしたり、導入を検討するお客様と話をする経験から感じることですが、効果は確実に出るにもかかわらず、いざ投資の決断の段階になると、いろいろと苦悩してしまうというケースが少なくありません。

なぜそういうことが起きるのか。それは、3PLを含めた物流業はサービス業の側面が非常に強く、設備投資に対する「リスク」感覚が拭えないからです。固定的な投資に対する考え方は、やはりコンサバティブにならざるを得ないと思います。とりわけロボットの場合は、「経験がない投資の絶対額」になっているということです。ロボットという新しい道具を入れることで、既存の倉庫は活かせないという状態になってしまうのでは、と考えてしまうのです。

ロボットを入れたことによる現場運用の変化を想像できないため、ロボットの評価ができないというわけです。また、既存の倉庫を活かせないとなれば、前提に移転・拡張計画がない場合はを大掛かりな段取りや計画が必要となり、新規でも妥当な条件の倉庫が評価できず探せないという事態に陥ってしまうのです。結果として、妥当な料金や回収モデルを作成できず、ファイナンスを正当化できないというジレンマに陥るというわけです。

こうした経路をたどることで、時流としての対策に遅れをきたす、または将来の収益の低下懸念を抱えてしまうということになります。まさにここが私たちの出番であり、皆様を支援できる領域と考えているわけです。

ロボット単位コストは「量」と「時間」に反比例

それでは、ロボットの導入にあたり、機械の特徴について思い出してみましょう。原則的には、機械は業務の量と時間に反比例して単位コストが下がります。こちらの図で説明しますと、量が増えてその時間があればあるほど、ロボットに対する単位コストは下がってきます。ところが、人の場合は時間と量が増えればそれだけ増えてしまうのです。

労務コストや採用コストなどにより、全体のコストが上がってしまうからです。つまり、最初に考えるべきは量と時間を変数として、どれぐらいやるのかさえ考えてしまえば、計算の基礎はおおよそ出来てしまうわけです。これが、ロボット1台あたりの単位コストを100円にするか150円にするか300円にするかが決まるのであり、こうした概念で、ご自身の倉庫を見つめていただければと思っています。簡単に言いますと、今までの8時間操業を24時間操業に変えれば、単位コストは3分の1に下がるということです。

もう一つの観点で見ると、ロボット導入に足る一般的な条件解釈という考え方がありまして、これまでの評価と考え方は、「固定費用」と「変動費用」の比較対決という構図になります。なぜかと言えば、ロボットは導入時にまずキャッシュアウトして、その後に減価償却を続けていくという構造の買い物だからです。物量と作業量と稼働時間を、人でやるかロボットでやるかで比較をすることになります。

単位あたりの減価償却コストとランニングコストを比べて、減価償却の方が小さければ、当然ロボットにトライアルする価値が出てくることになります。とはいえ、最初にファイナンスが必要になるというジレンマから、ロボット導入の決断は非常に重みがあるところなのです。

ここまで、減価償却コストとランニングコストの比較で見てきましたが、実はロボットもランニングコストで考えることができるということをお伝えしたいと思います。いわゆるラースモデルの考え方で、単位あたりのランニングコストはコストファクターが同質化していくことで、現実的に見えてくると思っています。

ここで「カプセルウィザードミッション」と書かせていただきました。

ロジザードが物流現場の進化に向かって果たしていくべき役割について、まとめています。キーワードは「まとめる」「置き換える」「フル稼働」の3つです。まずは、これまでの作業を共通の方式でまとめるということです。そして、人が担ってきた作業を機械で置き換えていきます。さらに、機械をフル稼働させることで、将来も安心の物流環境が実現すると考えています。

ここでは自動化された現場運用モデルを示しています。3PLを事例に、複数の荷主によるロボット活用で投資効果が吸収される自動化対策を提唱しております。ロボテックスと駆動コンベア、梱包機の組み合わせで、十分な効率化ができます。中国の現場をたくさん見てきましたが、ほとんどがこのパターンです。このパターンでフル稼働させることができれば、必ず新しい物流現場に生まれ変わると思います。この人的工程にあたる部分をRFID化すると、さらに効果が上がると考えており、研究開発を進めているところです。

WMSの役目は「機械へのオーダー出し」と「ボトルネック解消」

では、WMSの役割について見ていきましょう。重要なのは、物流にはいろいろなオーダーがかかることです。「こういう風に入荷して出荷してください」とオーダーでかかるわけです。さまざまな指示を組み立てて機械へオーダーを出し、結果を受け取りデータを更新するのが、WMSの最初の役割なんです。入荷検品から仕分けまでの各工程で、どの機械にどんな仕事を指示するのかを決めていくわけです。

ここが重要なポイントで、WMSでは外せないところです。

二つ目の役割として、機械の特徴を把握して人が担う前工程と後工程を機能で実現することです。ロボットを入れただけではその工程だけが自動化されても、その前と後ろで人が関わっている仕事の運用がプランニングされていないと、前後の工程がつながらなくなってしまいます。最終的にボトルネックが発生してしまうことになりかねない、こうしたものをあらかじめ標準的に解消しようというのが我々の取り組みだと理解いただければと思います。

逆にこの機能が皆無とすると、それは「自動倉庫」ということになって無人化が実現するわけですけど、私はロボットの運用と無人化は一線を画すものと考えています。

ロジザードのミッションは、「WMSが量をまとめてさらに増加させること」と認識しています。すべての荷主の物流を、標準化された共通ロボットで運用できて生産性を向上させていくことが大きなミッションであるわけですが、私どもは物流現場をロボットでDX化して労働生産性の向上を果たして、取扱量が増加していくといったところも貢献していきたいと考えております。

本当に皆さんのお役に立てるようなサービス、簡単に言いますと連携をする開発費すら不要ということになりますので、非常にスピードも速いですし、前工程後工程の機能も含めて提供しますので、ロボットを導入するだけで運用できるようになります。その意味で、ロボット導入を判断するハードルを下げられると期待をしています。

最後に、私たちは皆さんのチャレンジを支援するため、ラピュタロボティクスとプラスオートメーションを含めたパートナーとの物流現場DX化の実現に取り組んでいきます。

ロジザード・金澤氏の講演資料ダウンロードはこちら