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SREHD・清水DX推進室長インタビュー

物流DX成功のカギは「ハードとソフトの連携」

2021年7月28日 (水)

ロジスティクス物流業界でしばしば話題になる「物流DX(デジタルトランスフォーメーション)」。消費スタイルの多様化に新型コロナウイルス感染症の拡大が重なったことで、宅配サービスの需要がここ数年で急増した結果、物流現場は物量増と人手不足のダブルパンチで青色吐息の様相だ。海外と比べて物流現場の効率化が遅れているとの指摘もあるなかで、こうした課題の解決策として期待される物流DXは、国内の現場にスムーズに導入できるのか。AI(人工知能)技術の導入による物流現場の業務効率化を実現した実績のある、SREホールディングスの清水孝治・執行役員兼DX推進室長に聞いた。(編集部・清水直樹)

——そもそも国内における物流企業のDX導入の進め方は、先行する海外と異なるのでしょうか。

清水氏:海外では、物流事業者がスタートアップ企業とパートナーを組んでDXに向けた取り組みを進めていくのが一般的で、成功する近道といえる。米国のコンボイやフレックスポートがいい例だ。こうした物流テックのスタートアップ企業と一緒にDX化を進めることで、特定の領域に強みを持つ物流ビジネスが創出される土壌が生まれている。一方で、国内の物流業界は、大手物流企業が独自でDX導入を目指そうとする傾向が強い。アプローチの方法に大きな違いがある。

——国内物流企業のDX推進に必要な発想は。

清水氏:経営層が「物流DXのあるべき姿」の明確なプランを作ることが第一歩だ。DXには「攻め」と「守り」の両面がある。「攻め」のDXとは、自社の強みをしっかりと把握し差別化を図ることを目的とする。一方の「守り」は、汎用的な技術を活用したコスト削減などの取り組みだ。AI-OCRがその例だ。

——物流現場では、課題を理解していても、その解決法が分からず悩む担当者が少なくありません。

清水氏:海外でスタートアップとパートナーと組むのがDXの成功の秘訣であるのは、物流現場の課題を理解している人と、課題解決に向けた技術開発に長けている人が協働できるからだ。国内の物流企業も、社内でこうした技術力のある人材を登用するなどして、「業界に詳しくてその課題解決の技術も理解できる」メンバーを増やしていく必要がある。専門家レベルにまで行かなくても、表層的に全体像を網羅している人材がDXのプロジェクトに加わるだけでも、かなり精度が向上するのではないか。

——国内の物流DXの浸透を阻む要因はありますか。

清水氏:ソフトウェアとハードウェアの融合を進められるか。例えば、マテハンやフォークリフトなどのハードの世界は、その領域内で研究が進んでいる。ところが、ソフトの話になると門外漢になってしまう場合が少なくない。ソフトとハードの融合が進んでいるのが中国だ。ロボティクスを含めて、非常にハードとソフトの連携がうまくいっている印象を受けており、物流現場の効率化に貢献しているようだ。

——国内の物流企業がDXを推進する施策は?

清水氏:やはり異なる強みを持つ企業間の連携ではないか。国内でもスタートアップ企業でインターフェイスを公開する動きが出始めた。こうした取り組みは業界全体を活性化し、業務の最適化を進めるモチベーションも高める。ハードメーカーも、「ソフトメーカーと連携しないと顧客ニーズに対応できなくなる」との危機感を持つ必要がある。もちろん新たな投資が必要になるが、そこは経営者に腹をくくってもらわないといけない。