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大林組やトヨタ、物流などインフラの地下集約構想

2021年8月17日 (火)

「ダイバーストリート」イメージ(出所:大林組)

国内近い将来、地下空間でロボットが荷物の集配に動き回る姿が現実になるかもしれない――。大林組は、トヨタ自動車未来創生センター(愛知県豊田市)、豊田中央研究所(愛知県長久手市)と共同で、地下空間を活用した物流インフラ敷設などの次世代道路構想「ダイバーストリート」をまとめた。

物流専用の移動スペースの新設だけでなく、無電柱化や共同溝、雨水貯留などの機能を地下空間に集約することで、効率的なインフラ配置が可能になる。効率的な貨物輸送の究極の形である「物流地下鉄」の実現につながるか、それとも夢物語で終わるのか。官民を含めた議論への発展を期待したい。

「ダイバーストリート」の施工法(出所:大林組)

「ダイバーストリート」は、地下空間に社会インフラを集めるとともに、地上の道路面では自動運転の路車間通信や走行中給電などの機能も整備することで、次世代モビリティとの融合にもつなげる壮大な構想だ。荷物をロボットが運ぶことで、道路上を走るトラックを減らせるほか、定時性を含めた輸送品質も確保される。

その実現に必要な技術として、地下空間を短工期かつローコストで構築できる新工法も開発。地下空間を確保するために垂直方向に打設する鋼矢板を、完工後も引き抜かずにそのまま構造体として利用する。工場で製作したプレキャスト床版のみを現地に運んで設置することで、コストの圧縮や工期の短縮、掘削エリア縮小が可能だ。

「物流地下鉄」実現に向けた第一歩となるか

「ダイバーストリート」は、トラック輸送を地下空間の自動搬送で代替する画期的な構想だ。物流インフラを担う運輸業界が抱える、ドライバーの安全確保や高齢化対策、災害時の代替ルート構築などの課題を、一気に解決する取り組みだからだ。ラストワンマイルなど、限られたエリアの輸送には十分実現可能な施策と考える。まさに「物流地下鉄」の誕生だ。

ラストワンマイル物流をめぐっては、中山間地域を中心に、ドローンを活用した実証実験がIT企業を中心に進められており、一定の有効な成果が出てきている。「ダイバーストリート」についても、例えば大都市近郊で新規に開発されるニュータウンで実証実験を行うなど、実例を積み上げて課題検証を繰り返していく必要があるだろう。

こうしたインフラ集約型プロジェクトは、関係する事業者が連携して完成させるところにメリットがあると思う。「ダイバーストリート」の場合は、物流のほかに電力や通信、不動産開発の関連企業の参画が不可欠で、もちろん行政の関与も欠かせない。こうした集約インフラの構築は、いわば街づくりそのものだからだ。

現状の物流インフラは、いずれ限界を迎えることになるだろう。現場で噴出しているさまざまな課題は、こうした限界が近いことを示している。一世代前の年代構成や物流ニーズに対応したシステムであり、制度疲労を起こしているからだ。物流DX(デジタルトランスフォーメーション)化による物流最適化ももちろん必要な取り組みだが、物流の「発想」を変えないと、究極の「最適化」にはならない。今回の大林組など3社が掲げた構想は、こうした発想の重要性を示したと言える。(編集部・清水直樹)