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トッパン・フォームズ、ICタグ印字保護技術開発

2021年8月24日 (火)

荷主凸版印刷グループの帳票類メーカー、トッパン・フォームズは24日、ICタグ表面にオーバーフィルムを施すことで表面印字を保護する「オーバーフィルム一体型ICタグ」を発売すると発表した。トッパン・フォームズによると、オーバーフィルムが一体となったICタグは業界初。物流現場の荷物仕分け作業などで活躍するICタグは、業務効率化を進めるうえで欠かせない機能だ。物流DX(デジタルトランスフォーメーション)化の進展を根底から支える技術として、注目を集めそうだ。

ロール状の「オーバーフィルム一体型 IC タグ」(出所:トッパン・フォームズ)

トッパン・フォームズがこのたび開発したICタグは、印字・エンコード済のICタグと表面を保護するためにオーバーフィルムを施した。二次元コードやシリアルナンバーなどの表面印字がフィルムで覆われた状態のままで、荷物などへ貼付できるのが特徴で、印字内容の保護と作業負荷の軽減が可能となる。

物流現場では、ICタグはIoT技術を活用した物品管理の有効な手段として幅広く活用される。ICタグは複数の物品の管理情報を遠方からでも一括読み取りできるほか、目視確認や位置情報などとのひも付けを目的に、表面に二次元コードやシリアルナンバーを印字することができる。

物流現場では、コンベア上を流れる荷物に添付されたICタグをセンサーなどで読み取ることにより、適切な仕分けが可能となる。しかし、搬送や荷入れなどの作業中にICタグの表面が汚れたりこすれたりして判読できなくなる事例も発生し、さらなる業務効率化に向けた課題となっていた。現場では、印字を保護するための透明フィルムを人手で貼付するなどの対策を講じているものの、人手不足もあり現場における重ね貼りの作業は大きな負担となっていた。

管理対象への貼付イメージ(出所:トッパン・フォームズ)

トッパン・フォームズが開発したICタグは、表面上にオーバーフィルムをラミネートして印字を擦過や洗浄、紫外線から保護。小型の物流容器にも貼付可能な28×83ミリメートルと小型サイズながら、8メートルの長距離通信にも対応できる。標準仕様のほか利用用途に応じたカスタマイズも可能だ。シリアルナンバーの印字が連番に整列したロール状で納品ができるので、現場での管理にも適している。さらに、ICタグの製造から印字発行、オーバーフィルム一体加工まで一括で受託可能な製造体制を構築し、物流などの現場ニーズを意識した仕様とした。

トッパンフォームズは、物流や医療分野を中心にオーバーフィルム一体型ICタグの設計開発や読み取りアプリケーションの開発・販売を進めることにより、ICタグと読取機器で2026年までに売上高5億円を目指す。

「縁の下」の技術こそが物流DXを開花させる

物流現場の業務効率化策として声高に叫ばれるようになった、物流DX化の取り組み。現場の作業効率を高めるため、大規模なロボットやシステムをいきなり導入する前に、既存の仕組みに改善できるところはないだろうか。トッパン・フォームズが開発したオーバーフィルム一体型ICタグ技術は、IBMタグという既存技術を工夫することで、現場業務の改善につなげられる好例だと考える。

物流センターの仕分けラインには、大量の荷物が間髪を入れずに流れてくる。ICタグが添付された荷物をセンサーで読み取りコースごとに仕分けていくのだが、判読不能で滞留している場面を目にすることも少なくない。ハンドタイプの管理機器でも、ICタグが判読できず苦心する作業員の姿も珍しくない。そこでは、先進的なシステムよりも判読できる状態を保てるICタグが求められているように思う。

今回の開発技術は、ICタグをフィルムで覆うことで判読できる状態を維持できるというものだ。決して斬新なシステム開発ではないかもしれないが、現場の業務効率は確実に高まるだろう。こうした「縁の下の力持ち」の技術こそが、物流DX化による現場革新を推し進める原動力になるのではないか。(編集部・清水直樹)