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国交省、離島活性化に「スマートアイランド」実証へ

2021年8月25日 (水)

話題国土交通省が、離島における社会課題の解決に向けてICTなどの技術を導入する「スマートアイランド」の実証調査を開始した。全国9か所の離島を対象に、物流をはじめ交通や医療など社会生活に不可欠なサービスにおける課題を抽出するとともに、ICTなどの技術を活用した解決方法を探る。離島における生活維持や経済振興につなげる取り組みとして、今後の動向が注目だ。

実証調査の対象は、飛島(山形県酒田市)▽八丈島(東京都八丈町)▽佐渡島(新潟県佐渡市)▽佐久島(愛知県西尾市)▽似島(広島市南区)▽中ノ島(島根県海士町)▽男木島(高松市)▽中通島(長崎県新上五島町)▽福江島など(長崎県五島市)、の9島。国交省は、地元自治体やICT関連企業などと連携して調査を進める。

出所:国土交通省

飛島では、限定的な交通・物流手段の解決に向けたサプライチェーンの最適化プロジェクトを実施。人口200人の島内には公共交通機関がなく、島民の移動困難者の買い物支援や災害時の対応が喫緊の課題となっている。プロジェクトでは、電気自動車や多機能ロボットとICT技術による呼び出しシステムを連携させることで、島民の食料品や生活用品の注文対応から配送までのプロセスを試験運用する。災害時における被災状況や避難情報の共有についても検証する。

佐久島の「電気自動車と自動運転パワスクーターを活用した島内移動システム」の構築実証調査は、高齢化が進む島内にパワースクーターを導入して自動運転や安全機能などを検証。安全で自律的な移動が可能な仕組みづくりにつなげる。中通島では、無人ヘリコプターによる本土との物資輸送により、島内外の物流機能を確保する持続可能な島内社会の実現を図る。

9島での実証調査は、島内や本土への物流機能の確保による生活維持や、高齢化などで困難になりつつある島内移動の支援、観光振興や医療業務の最適化などが目的だ。スマートアイランドは、本土と比べてインフラが脆弱な場合が多い離島における持続可能な社会の構築に向けた取り組み。国交省は、今回の実証調査で得られた成果や知見を全国に展開することで、スマートアイランドの推進と離島の活性化に繋げていく。

物流事業者こそ離島の活性化に貢献すべき

国交省が取り組む「スマートアイランド」は、離島における持続的な社会づくりを実現する施策だ。地形的な制約や各種社会インフラの弱さなど、離島が抱える固有の課題について、ICTを活用しながらそれぞれの島に応じた課題解決を図っていく活動だ。社会インフラの一翼を担う物流業会も、スマートアイランドの実現に大きく貢献できる要素があると考える。

例えば飛島の事例では、島民の生活物資の購入以外にも、観光客の食事や地元産品の購入など産業振興にも物流事業者が関与できる場面は少なくない。佐久島の電気自動車や自動運転パワースクーターを活用した島内移動システムは、島民の移動だけでなく荷物の搬送にも活躍できるだろう。中通島の無人ヘリコプターを使った物流は、島内の中継輸送も含めて、さまざまな輸送リレー方式を描けそうだ。

離島における物流は、本土から離れていることもあって、平常時でもリードタイムが延びるほか、災害時には途絶してしまうリスクもはらむ。ただでさえ高齢化が本土を上回るスピードで進み、公共交通機関もほとんど整備されていない離島の現状を考えると、現地の人材の活用にも限界がある。こういう場所にこそ、無人走行車両やロボット、ドローンなどの技術を導入する意義は大きいはずだ。自律運航船舶の研究もしかりだ。物流業界は、こうしたICT企業との連携で、離島物流における知見を深めてほしい。(編集部・清水直樹)