ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

ハコベル、荷主向けにCO2排出量算定サービス

2021年9月9日 (木)

環境・CSRラクスルは9日、配車管理システム「ハコベルコネクト」を利用する荷主向けに「二酸化炭素算定支援サービス」の提供を開始した。二酸化炭素(CO2)排出量削減に向けた、同社の取り組みの第一弾で、物流業界における脱炭素化が喫緊の課題となっている中、荷主企業の温暖効果ガス(GHG)排出量を可視化し、ESGの取り組みを支援する。

企業が脱炭素化を進めるためには、自社の施設などからのGHG排出(スコープ1)、消費したエネルギーなどからのGHG排出(スコープ2)に加えて、自社以外のサプライヤーや顧客などからの間接的なGHG排出(スコープ3)の把握と削減が必要となる。同サービスではこのうち、対象範囲が広くデータ収集も難しいとされるスコープ3を、国土交通省の基準をもとに自動計算し、ダッシュボードで可視化して提示する。

視認性の高いダッシュボード画面

同社のセミナーに参加した企業へのアンケート調査によると、8割以上の企業がCO2削減に関して意識しているものの、多くの企業がスコープ3の把握の難しさなどから「現状の二酸化炭素排出量を特定できていない」「脱酸素化の必要性は感じているが、何から手をつけて良いか分からない」といった、初期段階の悩みを抱えているという。

ラクスルは、ユーザー企業で、プラスチックや紙の代替素材「LIMEX」(ライメックス)を製造し、2030年までの「カーボンネガティブ」(CO2の排出量よりも吸収量が多い状態)の実現を目標に掲げるTBM(東京都千代田区)の取り組みを紹介。二酸化炭素算定支援サービスにより、輸送時のGHG排出量を含むスコープ3を案件数・距離・積載重量などの項目別に可視化することで、サプライチェーン全体のGHGの排出抑制につなげる。

「脱炭素化」は物流サービス差別化の新たな武器に

ラクスルがハコベルコネクト利用者に「二酸化炭素算定支援サービス」の提供を始めたのは、脱炭素化が物流サービス競争に勝ち抜く「武器」であると認識しているからだ。物流サービスを展開する企業は、荷物の配送リードタイムの短さや丁寧な荷扱い、予約の便利さなどを差別化の基準としてきた。そこに「脱炭素」のキーワードが加わることで、物流サービス競争は新たなステージに入ったと言える。

物流業界で脱炭素の機運が高まったのは、菅義偉首相が2020年10月に行った「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」との宣言だ。トラック運送事業者にとっては、ビジネスモデルそのものの転換をも迫られる事態と受け止められ、結果として脱炭素化に向けた取り組みが急速に進むことになった。

とはいえ、限られた経費管理のなかで、保有車両を全て電気トラックに買い替えるわけにもいかないのが実情だ。そこで、配送ルートや配車管理の効率化など、トラックの走行距離を短くすることで二酸化炭素の排出を減らす現実的な取り組みが主流となっている。再配達の削減に向けた動きも、こうした動きの延長線上にある。

こうした活動は、手段として取り組むだけでは実現は難しい。ラクスルは、物流DX(デジタルトランスフォーメーション)化を推進する企業として、「見える化」することでさらに脱炭素化への意欲をかき立てられると考えた。ここに、物流DX化の方向性のヒントがあると考える。

消費トレンドの多様化や新型コロナウイルス感染拡大による宅配ニーズの高まりで、業務効率化が叫ばれる物流現場。多忙な現場で、いかに環境意識を創造できるか。ラクスルの今回の取り組みは、こうした現場の意識を熟知した物流DXの「旗手」だからこそできる絶妙な発案だった。(編集部・清水直樹)