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三重県ト協、ドライバー教育用eラーニング導入

2021年9月15日 (水)

ロジスティクス三重県トラック協会は、今月からキャブステーション(東京都品川区)が開発したトラックドライバー教育のクラウド型eラーニング「グッドラーニング!」を導入し、ドライバーの初任運転者講習を開始した。キャブステーションが15日に発表した。

同協会が導入したシステムは、キャブステーションが2019年に開発したドライバー教育特化型のツールで、同社はトラック事業者の年間教育に対応したサービスとして公開。三重県ト協の導入に際し、大幅な機能改善を行うとともに初任運転者講習用に教材を拡充した。

トラック運送事業者は、国土交通省の告示で「初任運転者に対する特別な指導」を行うよう定められており、新たに雇い入れたドライバーに対して15時間の座学研修を実施することが義務付けられている。

実際のドライブレコーダー映像を使った危険予測講座(出所:キャブステーション)

しかし、国交省の指針に準拠した指導を15時間行うためには相応の教材の事前準備、講師となる社員の業務調整、指導ノウハウがない中での長時間の研修実施といった負担が大きく、専門講師の手配、外部研修に参加する場合でも日程調整やコスト面が課題となることから、国交省による監査でも初任運転者への指導が行われずに違反に問われるケースが最も多かった。

グッドラーニング!は時間と場所を問わず、PC・スマートフォン・タブレット端末で受講することが可能。講座は動画でわかりやすく解説されているほか、CGやドラレコ映像を使った教材が充実しており、理解度チェックテストで講座内容の理解度を確認することもできる。

不正解だった設問の解説を閲覧することでさらに理解を深め、繰り返し受講して「合格するまでテストを受ける」という運用にも対応する。

ドライバー教育の「原点」はどこに

三重県トラック協会がドライバー教育のクラウド型eラーニングを導入し、初任運転者講習を始めた。ドライバーの事故がなかなか減らないばかりか、飲酒運転による事故まで発生している現状にあっては、初任教育の果たす役割は重要だ。しかしながら、どうも違和感を抱かざるを得ないのは、そもそもなぜトラック協会がドライバー教育を実施しなければならないのか、という点だ。

ドライバーは本来、所属する運送会社や物流会社で教育を受けるはずだ。ましてや新人ドライバーならなおさらだ。そこで上司や先輩からプロドライバーの心得とともに、運転技術を学びながらキャリアを積み重ねていく。業界団体が教育を施すのは、どうもおかしな話と感じてしまう。

つまり、もはや事業会社ではこうした基本的なドライバー教育を行うノウハウや人材が払底してきているのだろう。そもそも、丁寧な指導とうよりも「先輩から盗め」と”教え”を受ける業界だ。人手が潤沢で人間関係が密な時代はそれでよかったのかも知れない。しかし、業務効率化が叫ばれる現今、どうしても教育はあまり実効的でない形式的な内容に陥りがちだ。

むしろ、ここはトラック協会のような俯瞰的な立場の組織が、基本的な教育を施すスタイルが合っているのかも知れない。これも、新しい時代の教育の「原点」なのだろうか。(編集部・清水直樹)