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川崎汽船など、自動運航実現へ共同でシステム開発

2021年11月2日 (火)

操船情報表示イメージ(クリックで拡大、出所:川崎汽船)

ロジスティクス川崎汽船は2日、日本無線(東京都中野区)、YDKテクノロジーズ(東京都渋谷区)との共同による船舶の自動運航の実現に向けた取り組みとして、AI(人工知能)などの先進技術を活用した統合操船者支援システムの共同研究開発契約を結んだと発表した。

今回の共同研究開発は、当社の長年にわたる安全運航に関わる知識・経験と、日本無線とYDKの船舶用機器開発技術を融合することで、船舶の衝突・座礁などの重大海難事故を防止し、将来の自動運航船につながるシステム開発を目指す。国際海事機関(IMO)が規定する自動運航船の開発段階の基準を満たすことを想定しており、世界的な自動運航船開発の流れに従うと同時に、それをさらに推し進める。

従来の操船者が行う状況認識から最終的な操船に至るまでの各プロセスについて、川崎汽船など3社が有する知見や技術に加えて、グローク・テクノロジーズと富士通、フォーラムエイトが得意とする先進技術を活用しながら、さらなる安全運航の向上に資する包括的なシステム開発を目指す。

2023年4月からは内航・外航の様々な航路や船種による船上実証実験を予定しており、その後本格的な社会実装を目指す。川崎汽船など3社は、操船者への高度化支援と負担軽減の実現による船舶運航のさらなる安全性向上と将来の自動運航船の実現に向けた開発を続ける。

船舶物流の自動化は、物流効率化と船員労務管理のあり方に一石を投じるか

川崎汽船など3社が取り組む、AIなど先進技術を活用した操船者支援システムの共同研究開発。自動運航船が実用化されれば、海上物流の効率化は一気に加速することになり、船員の負担軽減にも大きく貢献する。今回は民間3者による研究開発だが、国際物流の競争力強化の観点から、政府も積極的な関与を示すべきではないだろうか。

▲離礁活動中のエバーギブン(出所:スエズ運河庁)

海上コンテナ船やタンカーをはじめとする船舶物流は、戦後着実に技術革新を遂げた。運航制御はほぼシステム化され、より少ない船員で運航できるようになっている。とはいえ、天候悪化などによる座礁事故だけでなく、海賊による襲撃などのリスクは依然として残っている。ことし3月のスエズ運河での座礁事故は記憶に新しいところだ。

自動運航システムが導入されれば、こうしたリスクを最小限に抑えることができるだろう。天候など自然現象への対応も、予測を含めて的確に対処できるシステムを構築できるかも知れない。

かつてのアナログ仕様の船舶の場合は、多くの船員が船上で勤務していた。しかし、近代化された船舶は、広い船内で船員同士が顔を合わせることも少なく、孤独感にさいなまれて精神を病むケースさえあると聞いたことがある。それなら、いっそのこと完全自動化に突き進んだ方が、輸送効率だけでなく船員の労務管理にもプラスに働く。こうした船舶の自動化が労務管理にもメリットを提供できるならば、歓迎すべき話ではないか。官民による国際物流のあり方論議に、船舶自動化による輸送効率向上と船員労務管理の最適化という論点があれば、より実効的な話になるように思う。(編集部・清水直樹)