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日野自動車の緊急記者会見、質疑応答の概要

2022年3月4日 (金)

話題日野自動車が4日夕に東京都内で開催した、排出ガスと燃費のデータ不正にかかる記者会見の質疑応答の概要は次の通り。

−−不正はいつ頃認識したか。

生産販売しているモデルを認定したのは、直近の2月末。米国で課題があり、自ら総点検という形で国内の認証についても調査した。日米は法規も違うし、認証ステップも若干違うため、念のため調べた。特に、排ガスで不正があった劣化耐久試験というのは、大変長く時間がかかる。世の中で走行してもらうある程度の距離を、信頼性のある数値のなかに収める。劣化耐久試験の自社内で再試験したのが2021年4月。全機種について中型で7か月、大型で9か月ほどかかる。試験も合わせて確認した結果。燃費は排ガスの確認するなかで、初期的に課題がありそうと確認したのは21年11月。3か月強のなかで、不正内容について確認をとってきた。

▲記者会見でデータ不正について陳謝する小木曽聡社長(左)と下義生会長

−−どのようなプレッシャーだったのか。不正への認識は。

排出ガス性能のA05C(HC-SCR)については、認証の劣化耐久試験のなかで、排ガス性能が耐久とともに悪化してきた。このままでは規制値に入らないと、部品交換してしまった。やはり、性能を満たさないことを知りつつ交換したという意図があったと理解していて、重く受け止めている。燃費の2つも目標に届かない中で、燃料流量校正値を変えることで実力よりも良くした。背景として目標必達とかLTがなかったとか、ということ。

−−中型、大型エンジンそれぞれの排出ガスの規制値をどの程度超過しているのか。大型エンジンは燃費性能がどの程度満たしていないのか。現場のチェック体制が機能しなかった理由は。

中型エンジンが排ガス規制値を満たしていない可能性がある。中型エンジンだと、法規認証試験上では45万キロを満足すると所定の既定値を満たすのに対して、試験ではばらつきがあるので改めて再確認する。ばらつきによっては少し満たさない。逆に言うと、新車は出荷時に検査しているが、そのときは規制値を満たしていても、長く使っていると少し満たさないということ。なるべく早い段階で今月内にめどを立てるくらいで、市場への対応策を考える。

エンジンはさまざまなカテゴリーと、トラックとバスの両方で使われていて、セグメントによって随分ばらつきがある。正直言うと、優遇税制を受けている数値に影響がある。数パーセントレベルの違いがあり、型式ごとに異なるのでお客様にご説明したり、税制優遇に関連した部分については納税させていただく。

現場のチェック体制については、認証試験なので現場の管理がとても大切と認識しているが、この問題が発生した時期は、開発部門と認証データを取る部門が一つの部門のなかで仕事をするという枠組みだった。その部分は再発防止という意味では、もっと調査していくが、少し反省すべきところだった。

我々は調査を少し前から始めていたが、21年4月から、エンジンの性能開発をする部門と認証データを試験して取る部門の本部を分けて、認証データを取る部分は品質本部のなかに違うメンバーで構成している。新たに試験を確認している内容については全て21年4月から始めていて、新しい本部体制のなかでやっている。再発防止にはもっと信用を追求しなければいけない。外部有識者による特別調査委員会による調査結果も踏まえて、しっかり対策していきたい。

−−ディーラーの販売面へのケアは。

不正行為を行った事実が判明したので、お客様に向き合って正直にしっかり対応していくことが一番だ。お客様と直接向き合うのは販売会社の方々。ここは非常に大切と思っている。実際には、公表した内容もすべて販売店に説明し、販売店がお客様に説明する中で、これだけではわからない質問や、追加の要望もたくさんあると思う。会社の中は、この問題に対して全社の最優先課題として、お客様、販売店に向き合って、まずお詫びをして、事実を伝えて質問に答えて、要望に一つ一つ丁寧に正していく。大切なのは、これから認証にまつわることから安全品質に至ることまで、すべてよりお客様の声に向き合って販売会社と一緒にやっていくこと。特に施策はないが、一つ一つ社員全員でやっていきたい。

−−他に不正はなかったのか。

総点検してわかったことを今回なるべく早く、ということで事実を伝えている。これからも一点一点調査は継続していくので、新たに判明することがあれば、逐一対応していく。現在、わかっていることは今日説明した内容だ。

−−4つのエンジンの型式以外に不正はないのか。

4つの型式以外は、問題は確認されていない。

−−燃費・排出ガスの不正行為が始まったのは、いつからと現時点で認識しているのか。

いま販売されている車両(2016年の排出ガス規制)の全機種について調査したのが、今回の報告内容だ。さらに過去のものは引き続き総点検を続け、本当に組織を含めて再発防止という意味で、特別委員会の調査も合わせてしっかり検証していく。

−−16年時点が不正行為を最初に確認した時期という認識で正しいか。

まず現行販売しているエンジン(2016年排出ガス規制のもの)を中心に全面的に調査していて、排ガスの劣化耐久試験は中型で7か月、大型で9か月の全機種を確認している。いまここまでの確認が終わったというのが正直なところ。

−−米国内での販売車両について。

米国製のすべての車両のエンジンは、米・カミンズ車製に切り替えて生産販売を行っている。

−−経営責任については。

このタイミングで排ガス・燃費に関する不正を起こして、公表値を満足していないのは大変重大な問題と受け止めている。法令遵守ができていないので、こういう結果を起こしたことに対して会社として重く受け止めている。まずお客様、販売店、ステークホルダーにお詫びしながら対応していく。再発防止については、問題を見つけたばかり。本当に会社のどこに問題があったか、さらに会社としても調査を継続する。重く受け止めた責任について対応に総力を尽くしていく。

今回の問題は、ものづくりメーカーとしてあってはならない不正行為と認識している。経営としての責任は大変重い。調査もまだ継続している。また、企業風土という点も踏まえて、今回の問題を二度と起こさないためには社内の徹底的な改革がまだ足りていない。特別調査委員会の外部有識者の力も借りながら、再びお客様や社会から信頼してもらえる企業になるために、目の前のことをしっかりやっていきたい。

−−16年に他メーカーで燃費不正問題が社会問題化し、社内調査を実施した経緯は確認しているか。

16年に(国土交通省から)調査依頼をもらって、当時社内で問題がないか調査を行っている。その結果は、不正を含めて問題ないと回答を会社として出している事実がある。その際、今回の排ガスの認証タイミングと少しずれてはいるが、その時に今回のことが発覚できなかったのは、会社として大きな問題と認識している。今後、特別調査委員会のなかでしっかりとした評価していかなければならない。

−−北米の課題の認識について詳しい説明を。また、他社との燃費競争や社内的なプレッシャーが影響したのか。

北米の最初の課題とは、現在調査が開始されているところで、詳細を申し上げられない。米国の場合、認証の設備も大変細かく規定されている。その規定に沿ったなかで認証を行っていたのか、というのが最初の課題認識。その部分から社内調査、わかってきたことについて適宜、米当局へ報告して現在まで調査が続いている。それ以上は差し控えさせてもらうが、報告できるタイミングがきたら、しっかり説明したい。

技術面について起きた問題はいま、しっかり整理できているが、原因はもう少し時間をかけて今後調査したい。いまわかっていることだけでいうと、HC−SCRの中型トラックなどについては、日程面が非常に厳しいなかで、適正に対応がやりきれていなかった部分も残念ながら見受けられる。お客様の使っている車への対応をしっかり検討している。日程よりも品質優先とか、もう少し見ていかないといけない。燃費については競争の中、税制優遇のターゲットの数字との関係はあると考えている。この部分もよく調査して、会社や組織としての管理のあり方をしっかりやっていきたい。

−−不正にかかわった社員の規模感は。

現時点では調査中。もう少し丁寧に調査して、真の再発防止につながるよう反省した上で、対策とっていきたい。

−−検査のあり方は。

試験によってさまざまで、回数が違う。例えば、劣化耐久は、初期の状態から耐久を何回も重ねて、エンジンベンチを回していく。認証を取れた試験機のなかで、所定回数のデータをとって相関性を取りながら新車を確認する。もしくは、最終的に立ち会いがあれば、国土交通省に立ち会ってもらうなど、さまざまな組み合わせがある。21年4月からは、品質本部の認証部隊のなかでやっている。今後の反省として、台数をいくつ取るのか社内でルールを作りたい。排気ガスの新車については、工場の出荷管理として数を取ったデータを常にみながら、ばらつきを含めて管理している。

−−再発防止策以降の対応について。

大型の燃費については、お客様が使っている車両は燃費が諸元値と違う。正しい数値を計測して、その数値に対する税制補てんがなくなるのであれば、弊社が追加納付する形になる。出荷再開に向けては、まず正しい燃費の値に変えて進めていく可能性が高いが、まだ決まっていない。両立できる開発はしっかり対応していくが、性能と燃費、排ガスと燃費とかは開発そのもののリードタイムが必要になる。しっかりとした日程を持って、法令遵守する形で対応を進めていきたい。メニューはまだ決まっていない。お客様と話をしながら、方向性を決めていきたい。

お客様視点では、いま使っていただいるプロフィアと同じ性能のものを、その実力値に合った形で再申請することになると思う。実力以上の申請をしていた値に戻すには、さまざまな開発を今後やっていかなくてはならない。当面の対応と、中期的な燃費性能の向上と分けて対応していきたい。

−−開発と認証の組織形態のあり方。トヨタと違いが何かあるのか、組織的なものか。財務面への影響は。

各社さまざまな(組織)形態があるので、一般論として説明はできない。トヨタとの比較であれば、大きくいうとエンジンのパワートレーンのカンパニーという枠のなかで、部の単位で認証は独立している。開発する部分は、部単位でわかれている。21年3月までは認証と開発が一緒だったので、少しいろいろなアドバイスをもらいながら、再発防止を取るという意味では、品質を司る品質本部を独立させた。財務面は現時点で明確になっていない。これは明確になり次第、一つ一つ開示していく。今回のA05Cへの対応費用、出荷停止費用、税制関係で日野自動車が支払う部分など、明確になり次第引き当てていく形になる。

−−組織形態を変更したのは、不正を認識していたからか。もう少し早く発表できなかったのか。

北米での問題が明確になってきたので、21年4月に組織を変えているのが正直なところ。合わせて、国内の劣化耐久試験もスタートしている。北米の問題と向き合いながら、あるべき組織としてやったのが21年4月だった。結果として、日本の問題が明確になったのは最近。

−−特別調査委について。

本日公表後、速やかに人選して立ち上げたい。信用をしっかり追求して再発防止策を立てるので、日程ありきではない。立ち上げながら外部有識者にも相談して徹底して調べる。そのなかでスピード感は持って、ということになる。

−−出荷停止期間は。

現在想定できていない。これだけの不適正な事案。再発防止を行った上で、再度認可を取り直す。国土交通省と相談しながら進める。

−−親会社のトヨタ自動車にはいつ報告したか。

トヨタ自動車への報告は、日頃から経営課題については適宜報告している。本件については米国での工場が止まったタイミングでは報告している。また、今回の不正でいうとコースターに影響が出ている。21年11月時点で、影響ありそうだと報告した。

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