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traevo、車両動態管理システムの仕様統一化推進へ

2022年4月13日 (水)

サービス・商品traevo(トラエボ、東京都港区)は13日、物流事業者52社の総意で開発された動態管理プラットフォーム「traevo」の無料トライアルの受付を開始したと発表した。ことし9月1日にサービスを開始し、車両一台につき月額1000円以下で提供する。

動態管理プラットフォームは、GPS(全地球測位システム)で把握したトラック車両の位置情報から、車両動態(車両の位置や状態)情報を車載機器メーカーを問わず一元的に管理・集約して可視化することにより、荷主や運送事業者、着荷主など関係者間で情報を共有する仕組み。物流業界はもちろんのこと、小売りや流通業界などの着荷主を含めた市場全体においてサプライチェーンの全体最適化が期待できるとともに、将来的には物流のインターネットと呼ばれるフィジカルインターネットへの貢献にも資するシステムとして注目されている。

(イメージ)

物流業界は、働き方改革関連法によってドライバーの労働時間に上限が設定されることで生じる「物流の2024年問題」への対応をはじめとする働き方改革をはじめ、積載率の低下や二酸化炭素の排出削減など多様な課題を抱えている。新型コロナウイルス禍でこうした課題が顕在化・先鋭化されたこともあり、物流DX(デジタルトランスフォーメーション)化や標準化の推進によるサプライチェーン全体の最適化が急務になっている。

こうした課題の解決に向けた物流DX化や標準化における問題点として浮上しているのが、その対応手段となる機器やシステムの仕様が統一されていないことだ。提供する企業間で仕様が異なり統一規格が存在しないことから、サプライチェーン全体を包括した課題解決への取り組みは難しいのが実情だ。

運輸業界の社会変革を推進する運輸デジタルビジネス協議会(TDBC、東京都港区)は、複数メーカーのトラック車両データを共通の仕組みで連携・協調させることにより、課題解決に活用する物流MaaSの一環として動態管理プラットフォームを開発。トラエボは、TDBCが鈴与カーゴネット(静岡市清水区)やトランコムなど52社と共同で実施した車両動態管理に関する実証実験の実用化に向けて、ことし1月に設立された。

traevoの活用により、運送事業者は連絡・報告業務の自動化・省力化、タイムリーな状況把握や運行指示を実現できるほか、運行の安全確保と荷待ちなど労働時間の削減につながる。荷主にとっては、配送スケジュール作成など各種管理工数を大幅に減らせるとともに、着荷主までの車両位置情報をリアルタイムで把握できる。特に、着荷主からの荷物到着時間の照会を減らせる利点がある。さらに、生産・出荷・納品の緻密な管理による物流事業者の品質把握が可能になる。

着荷主のメリットは、各種管理工数の大幅削減や着荷主までの車両位置情報の適時把握が可能になること。荷主に対する荷物の到着タイミングの問い合わせが不要になるほか、到着遅れの際にもスムーズに状況を確認できる。到着遅れの際も車の状況も把握しやすくなる。

▲動態管理プラットフォームのイメージ(出所:traevo)

トラエボは今後、実証実験の参加事業者を含む出資者12社を中心に、プラットフォームをインフラとして普及させるとともに3年で20万台の車両と連携し、運送事業で利用されるトラックのカバー率14%の達成を目指す。災害時の状況把握や支援物資輸送への活用、ドライブレコーダー映像と連携した警察への防犯協力、共同輸送における荷主ごとの二酸化炭素排出量の詳細な算出などに取り組んでいく。

規格統一は物流DX化の進展に欠かせないステップだ

ドライバーによる輸送や倉庫での荷物の仕分けなど物流現場における業務効率化を推進する取り組みとして、DX化が叫ばれて久しい。物流事業者を中心に、現場業務を支援する先進的な機器やシステムを積極的に導入する機運が高まり、それに呼応してITシステム開発企業や電機メーカーが相次いで新たな製品やサービスを開発した。

その結果、実に多彩な機器・システムが業界を賑わすことになったのだが、一方で課題も露呈した。規格の不統一による「部分最適」「局所最適」の状況があちらこちらで発生し、相互連携が難しくなってしまったのだ。最近は、物流DX化のあり方として、「全体最適」のフレーズがしばしば聞かれるようになった背景には、そういう事情があるのだ。

トラエボが推進する「規格」の共通化には、こうした課題を解決する取り組みとして強い期待がある。企業やシステム規格の垣根を超えたオープンな環境で価値あるサービスを創出すること、さらに共通規格に基づくシステム開発の競争・協調環境が生まれ、物流DX化のさらなる進展も見込めるだろう。規格の統一により、市場ではその付加価値でサービスの価値が決まることになるからだ。

とはいえ、規格の統一化は機器・システムの開発企業に一定のルールを求めることになり、それに従えないと市場から追放されることになる。統一規格の策定にあたって、大胆かつ慎重な仕様決定プロセスが求められるのは言うまでもない。(編集部・清水直樹)