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「危険物倉庫緊急サミット」迫真レポート/第6回

2022年5月30日 (月)

話題LOGISTICS TODAY(東京都新宿区)が5月19日開催したオンラインセミナー「危険物倉庫緊急サミット」の迫真レポート。第6回は、パネルディスカッション後半戦、視聴者の鋭い質問に登壇者が独自の持論で切り返していきます。


「危険物倉庫」のネーミングは不安を招く?

<LOGISTICS TODAY赤澤裕介編集長>
パネルディスカッションの中で、皆様からたくさんの質問をいただきました。まだ受け付けていますので、ぜひこの機会に質問や教えてほしいことを聞いていただければと思います。専門的で細かい質問から軽めのものまで、危険物倉庫のネーミングを変えたほうがいいという質問も来ています。松本様、危険物倉庫のネーミングはいかがですか。

<三和建設の松本孝文・大阪本店次長兼設計グループグループリーダー兼リソウコブランドマネジャー>
建物を建てる時は、規模によっては周辺の方々にご説明する機会があります。そうした時に、危険物倉庫を建てると話すことがあります。危険物倉庫自体は、消防法にのっとり、危険なものを安全に保管するための倉庫なので、とても安全な建物ですが、ネーミングだけに、周辺の方々が不安になることもあります。

<赤澤氏>
倉庫の開発や建設をされる際に、周辺地域への住民との調整はつきものだと思いますが、危険物倉庫というネーミングだと、最初から危険なものを建てるなといったフィルターも強まってしまうご心配の質問かもしれませんね。あとは、危険物倉庫について、新規参入のとき、そもそも危険物の取り扱いをする企業が必要なことを理解されていない状態ではないかという可能性があります。入り口でいろんな要件がありますが、ここで改めて簡単に整理できればと思います。新規参入にあたり注意をしないといけないポイントについて、松本様お願いします。

<松本氏>
この質問は運営側かもしれませんが、建築というところであれば、消防の許認可を得ないといけないところがあります。危険物倉庫の設置許可申請は、建物を建てる前におろしておかないと、あとから予定していた消火設備に消防の認可が下りないなど、建物のハードに関わる許認可の話になってきます。一般的には事業荷主様がやられますが、新規参入の方々は、知識として持たれていません。そういったところを、我々のような設計会社がフォロー・サポート、どちらかというとリードしながら消防との協議を進めていきます。

倉庫不足による「業務委託」、まずはその根拠を明確に

<赤澤氏>
各社への質問もたくさん来ています。日立物流様・日立物流ファインネクスト様へ、荷主企業さんからの質問です。「荷主企業なのですが、これまで自社の危険物倉庫で出荷製品を保管してきました。倉庫不足に対して、業務委託という選択肢を取った場合のメリットとデメリットを教えて下さい」とのことです。

<日立物流ファインネクストの篠塚武人・営業企画本部営業開発部長>
まず、外部委託する根拠はなにかを明確にしたほうがいいと思います。単純に自社運営していたものを外部に出せばコストメリットが出るという話ではありません。例えば、自社でしている工場敷地に、製造ラインを増強する場合は、外に出したほうがメリットになります。あとはサービスメニューや、荷主様のお得意様のニーズが変わった時に自らやるべきか、そうでないか、といった時に自家投資するか、それともこのあと将来性を見越したら一時的に業務委託したほうがいいのではないかといったことがメリットになると思います。始めたり、縮小したり、そういった意味でのメリットは出るのではないでしょうか。

<日立物流の鍋島敦・営業開発本部サプライチェーン・ソリューション1部部長>
今の内容も然りですが、今物流業界は人員不足ですよね。特にお客様によっては、高齢化でそのエリアに若い人が来ないことがあります。先程のネーミングの話にもありましたが、なかなか作業員を採用しようにも若い人が来ないと、どうしても作業が属人化になってしまいます。例えばいいところを伸ばしつつも、こういうところを改善しましょうという第三者目線でお客様・荷主様の課題を一回外に上げながら改善していくメリットはあると思います。

「危険物倉庫併設型」も顧客ニーズ次第で対応は可能に

<赤澤氏>
プロロジス様にも質問が来ています。「現在、マルチテナント型の物流施設を借りています。今後、危険品を取り扱う必要が出てきました。現時点では、危険品倉庫を併設しているタイプのエリアが限られているのではないかと思うのですが、今後、全国に広げていく意向はありますか」

<プロロジスエグゼクティブ・ディレクターの佐藤英征営業部長>
「このエリアだから」という理由で危険物倉庫の建設の是非は決めておりません。お客様のニーズが見えた段階で、マルチテナント型に併設する形や、ある程度一定の規模であればBTS型でお客様の普通倉庫と危険物倉庫を併設する形の開発はできると考えております。

<赤澤氏>
三和建設様にも質問が来ています。「ご推奨の消防設備はありますか。二酸化炭素の消化設備は何がおすすめですか」。かなり具体的な質問が来ています。

<松本氏>
二酸化炭素は許可が取りにくいと聞きます。消防の方々も、自分たちが活動することを想定しますから。二酸化炭素が好まれるのは、荷物が傷まない、濡れないなどの理由です。あとの処理が楽なので、という話もよく出てきます。ただし、二酸化炭素は、その後の活動に危険が出るなどであまり認められない。荷物に合わせてお客様とお話をさせていただきながら、という場合が多いです。

顧客ニーズで付帯作業を取り込むことによって需要を獲得する

<赤澤氏>
二酸化炭素は好ましくないかもしれないということでした。次に、皆さんへの質問が来ています。「危険物倉庫を現在所有しています。規模は10坪と小さく、なかなか顧客の獲得に苦労しています。なにかアドバイスはありますか」。事業をしており、需要が高いのでしていきたいということなのですが、現在お持ちの施設が10坪。これについて、佐藤様いかがですか。

<プロロジスエグゼクティブ・ディレクターの佐藤英征営業部長>
非常に難しい問題ではあります。場所や用途地域がどこにあるかによりますが、今許可を取られている何類とかそういったものの設備を付加することで、違う類のものを置けたりする可能性はあります。そういったところを一度調べていただき、それができるのであれば荷物は広がり、お客様も安定して取れるようになると思います。一度考えてみてはいかがでしょうか。

<赤澤氏>
こうした、スペースは足りないけど需要が見込まれて広げたい場合、前半で鍋島様がお話されたように、シェアリングエコノミーといった発想が生きてくるのではないかと気がしますが、いかがでしょうか。

<鍋島氏>
一昔前は、今でもそうですが、小規模の一画に危険品倉庫があるという形でした。それが地域のいろんなコミュニケーションの中で、例えば取引しているお客様に付加価値や付帯作業を取り込める形にして、それをお客様側でされている作業も多いと思います。地域のコミュニケーションがあったとすると、そこを回る輸送業者様がいてエリアで活用するようなプラットフォームにするとか、そういった形はありうると思いますし、いろんなお客様のニーズで付帯作業を取り込めないかというのも一案ではないかと思います。

「消費者に商品を届けるために」広がっていく危険物倉庫

<赤澤氏>:示唆にとんだお答えなので参考になさってください。あとは、具体的なニーズに対してです。「化粧品、日用品物流についての、危険品倉庫ニーズや荷主側、あるいは荷主の業界での動きについて、最近の動向を教えていただけないでしょうか」。これも日立物流様、いかがでしょうか。

<篠塚氏>
冒頭に言いましたように、危険物を取り扱う倉庫が増えている中で、化粧品や医薬品、部外品、食品など、各社が実態としてこれからどうやってコンプライアンスに沿って危険物の運用をしっかりとした形にしていこうかと、模索をしている最中ではないかと認識です。

結論から言うと、コンプライアンスの順守は譲れないのでそこをしっかりしていく。その中で、消費者に商品をお届けしていく課題になってきますから、各メーカーさんだけでなくサプライチェーン全体に広がっていくのではないかと思います。業界を特定してこうだとはいえませんが、意識は高まっています。

<赤澤氏>
まだまだ各社、ご指名の質問が届いております。おそらく時間内にすべての質問をご紹介しきれないのではないかと思います。これをどうするのか、考えておりますので後ほど説明します。


第7回も、引き続き視聴者の多面的な質問に、豊富な経験を持つ登壇者が的確に答えていくシーンが続きます。

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