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「日本に原子力船と洋上原発を」英企業が構想発表

2022年6月21日 (火)

環境・CSR造船技術など海洋テクノロジー開発を手がける英コア・パワー・エネルギー(Core Power Energy、本社・ロンドン)は21日、CO2排出削減を目的に、原子力船の開発・製造を日本の造船・海運業界と協力して進める構想を発表した。その前段として2030年を目標に「浮体式洋上原子力発電所」の建造を目指すとしている。今後、日本企業や関係当局との交渉を進める構えだが、課題は多く、原子力発電に対する国民感情からも実現可能性は未知数と言えそうだ。

▲オンラインで記者会見するミカル・ボー会長兼CEO

構想は、同社のミカル・ボー会長兼CEO(最高経営責任者)がイギリスから日本の報道関係者に向けてオンラインで記者会見して明らかにした。それによると、同社はこれまでの研究で、安全性の高い小規模の原発技術を開発したという。放射能漏れのリスクの低い「非加圧型」で、原子炉などの設備は船舶に搭載可能な大きさだという。

日本の造船・海運各社は現在、海上輸送に伴うCO2排出削減のため、LNG(液化天然ガス)などへの燃料転換を進めている。これに対し、ボー会長は「最新の原子力技術こそが、唯一のゼロエミッションのエネルギー・ソリューションだ」と述べ、原子力を船舶の動力にすべきだと主張した。

その前段階として提案したのが「浮体式洋上原子力発電所」。全長90メートル、高さ53メートルの船で、上から見ると円形をしている。船底部分に原子炉を収める構造だ。200万世帯への供給量に匹敵する最大1.2ギガワットの発電能力を持ち、年間480万トンのCO2排出削減が期待できるという。


▲英コア・パワー・エネルギーが発表した浮体式洋上原子力発電所のイメージ図

同社は今後、日本で造船・海運の大手企業に協業を提案するほか、国土交通省や業界団体にも理解と協力を呼びかけるとしている。すでに一部企業と話し合いを始めており、「手応えは良い」(ボー会長)という。

ただ、相当程度の資金調達が必要で、ウランなど燃料の確保や原子力規制委員会など関係当局からの許認可などクリアすべき課題は山積している。何より東京電力福島第一原子力発電所事故後、国民の多くが持つ原発に対する不信感が大きなハードルだ。ボー会長は、自社の技術は放射能の急激な放出やメルトダウンの危険性がないとした上で、「エネルギー安全保障の面からも原子力は必要だ。日本人の理解を得られるよう、慎重に進めたい」と述べた。