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SBSフレック倉庫火災、首都圏食品流通の影響懸念

2022年7月1日 (金)

▲阿見第二物流センターの外観(ことし5月30日撮影)

国内6月30日に発生したSBSフレック「阿見第二物流センター」(茨城県阿見町)の火災。首都圏を中心とする食品の輸配送拠点がその機能を長期間にわたって喪失することになれば流通の混乱は避けられず、小売店への食品供給やEC(電子商取引)による宅配サービスにも影響が広がりかねない。

SBSフレックは、全国で3温度帯の食品物流サービスを展開し、特に冷凍・冷蔵輸送に強みを持つ。ECサービスの普及や新型コロナウイルス感染拡大に伴う宅配ニーズの高まりによる、冷凍・冷蔵食品の輸送需要の急速な拡大を受けて、こうした低温輸送の拠点となる冷凍・冷蔵機能を持つ倉庫の展開を加速する戦略を構築しており、「阿見物流センター」「阿見第二物流センター」もこうした動きの一環として整備した。

阿見第二物流センターは、こうした食品の低温輸送機能を担う先進的な施設として、思い切った自動化を推進。顧客の入出荷オーダーに365日体制で対応するほか、食品輸送に不可欠な「先入れ」「先出し」の徹底と物流拠点の24時間稼働により、製品在庫の圧縮や廃棄ロス削減にも貢献する。

さらに高度な物流ノウハウと最新鋭のマテリアルハンドリング機器を駆使することにより、高品質な低温物流サービスを提供。首都圏でも最大級の規模を誇り、「新しい生活様式」の時代を迎えて常温だけでなく低温の食品輸送の需要拡大を見据えた事業基盤構築の柱が、阿見第二物流センターだった。

(イメージ)

阿見第二物流センターは、ことし6月1日に稼働したばかりで、本格的な夏を経験していない。いわば本領発揮の機会がないまま火災を引き起こしてしまった。倉庫運営のあり方を含めて、徹底した再発防止策の構築が求められる。

異例の早い梅雨明けと同時に、例年よりも高温となる見通しの今夏。低温食品輸送のニーズが本格化する矢先の今回の火災は、まさに低温食品サプライチェーンの強靭化に向けた機運を高める機会となりそうだ。

食品各社は関東一円で代替倉庫を模索する動きを加速するとみられるが、低温度帯に対応できるまとまった規模の施設を確保するのは容易ではない。茨城県周辺だけでなく、首都圏全域や東北地方など広範なエリアを想定した代替機能の確保が求められそうだ。今回の火災は、暑い夏に挑む国民にさらなる不安材料をもたらしかねない事態に発展する可能性も出てきた。今後の動向に注視していく必要がある。(編集部・清水直樹)