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ヤマト、仏大手と組みGHGの国際基準作りに挑戦

2022年7月20日 (水)

(イメージ)

環境・CSRヤマトホールディングス(HD)は20日、フランスの宅配大手DPDグループとの間で、物流分野での温室効果ガス(GHG)排出量の世界共通算定基準の検討を行うことで基本合意したと発表した。国や企業ごとにまちまちな算定基準に替わる共通の物差しが必要だとしている。合意に基づく具体的な取り組み内容は公表しておらず、実効性は現時点では未知数だが、日仏の大企業同士が手を組むインパクトは大きく、気候変動を巡るさまざまな政策や議論に一石を投じそうだ。

発表によると、両社は7月12日に環境分野での協力に向けた基本合意書を締結した。「GHG排出量の世界共通の算定基準の検討」と「環境分野におけるノウハウの共有」が大きな柱だ。

両社は「GHG排出量の算定と報告については、物流各社がさまざまな基準を採用して算定しており、共通基準を策定する必要性が求められる」と問題提起し、日本企業が政府の「scope3」に基づいて算出を求められているサプライチェーンでのGHG排出量についても、「物流企業によって基準が異なることが課題」と指摘した。両社の協力でその解決を図り、共通基準での報告や、サプライチェーン全体の排出量の可視化につなげるとしている。

DPDはパリに本社を置く欧州の宅配最大手。世界50か国で12万人の配達員と7万か所の集配拠点を持つ宅配とEC(電子商取引)の巨大企業グループだ。2040年のGHG排出量ネットゼロを目標に掲げている。ヤマトとは、2017年に輸送に関する業務提携を行い、21年には国際的な食品・食材の小口保冷輸送の仕組みを発足させるなどの協業を進めてきた。

ただ、どんな大手企業と言えども民間企業2社の協業で、日仏両国のみならず複数国にまたがる世界共通基準を作るのは容易ではない。物流各社のほか荷主の各業界や政府などの賛同・協力も不可欠だ。その点について、ヤマトは「物流各社や荷主であるメーカー、小売にも協力を呼びかける」としているが、現時点では具体性に乏しい。

ヤマトは「両社で連携し、環境分野における取り組みを推進する」としており、今後の協議に沿って具体的な取り組みやスケジュールを開示すると見られる。環境省や国土交通省などとの協議や意見交換も予想され、展開次第では今回の合意が世界共通基準誕生への起点となる可能性もある。