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輸配送管理・計画システムの「知名度・関心・実績」総合ランキング

「ハコベルコネクト」「MOVO」が2強も個性派が追随

2022年7月22日 (金)

話題LOGISTICS TODAY編集部が物流企業や荷主企業を中心とする読者を対象に7月5日から8日にかけて実施した、物流現場における配車・配送業務の効率化にかかるニーズ調査(有効回答数620件、回答率20.7%)。前回は、輸配送の管理や計画業務を支援するシステムの活用などDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みにおける期待や課題について考察した。

今回は、関心の高さや導入実績を指標にLOGISTICS TODAYが独自にまとめた「輸配送管理・計画システムランキング」を紹介する。

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40種類のシステムをランキングで紹介

荷物を無駄なく効率的に運ぶためのデジタル化の取り組みとして注目されている輸配送管理・計画システム。顧客ニーズに合わせたスケジュール計画を策定し、商品を出荷してから届け先までの輸配送に係る情報を一元的に管理する機能が特徴だ。

物流現場における業務効率化の観点で問題認識が強い輸配送領域における、DX施策の代表格とも言える輸配送管理・計画システム。こうした事情も反映して、さまざまな業種の企業がシステム提供に参画している。

ここでは、市場に提供されている主要40種類の輸配送管理・計画システムについて「知っている」「興味・関心がある」「導入している(していたを含む)」の合計の回答率をランキングでまとめた。

貫禄の「ハコベルコネクト」、問題解決型のプラットフォームで支持集める

いわば「認知度」「関心度」「導入実績」の総合評価の順位付けと言える今回のランキング。上位2種類のサービスが、3位以下を大きく引き離す結果となった。

トップはラクスルの「ハコベルコネクト」(77.8%)、次いでHacobu(ハコブ)の「MOVO」(ムーボ、65.5%)。圧倒的な知名度と豊富な導入事例が高支持率につながったようだ。

「一般貨物の物流プラットフォーム」として知名度が高い輸配送管理システムであるハコベルコネクト。2020年6月の導入開始以来、幅広い業種の物流現場で採用され、着実に実績を蓄積してきた。強い営業力もさることながら、「属人化された輸配送ノウハウ」「アナログな配車管理」の改善を意識した問題解決型のシステムとして、ハコベルの活用しやすい仕様が強みになっている印象だ。

導入企業からは「アナログに慣れてきた担当者でもすぐに使えるわかりやすい操作性」「困ったときに相談できる体制整備」などを評価する声が目立つ。プラットフォームとして運用できることで、ひとつのシステムで管理できる利点もある。

Hacobu「MOVO」はシリーズで幅広いソリューションを展開

MOVOは「運ぶの課題をワンストップで解決し物流DXを支援するアプリケーション群」をスローガンとしたシステムとして、こちらも導入実績を着実に広げている。

トラック予約受付サービス「MOVO Berth(バース)」や動態管理サービス「MOVO Fleet(フリート)」、配車管理サービス「MOVO Dispatch(ディスパッチ)」、配送案件管理サービス「MOVO Vista(ヴィスタ)」、流通資材モニタリングサービス「MOVO Seek(シーク)」というように、物流現場における問題の内容に応じた解決を支援するシステムをシリーズ化しているのが特徴だ。

メーカーの物流部門だけでなく、小売業や3PLなど業界を問わず導入が進んでいることからも、使い勝手の良さと機能の有効性の高さを示していると言えそうだ。背景には、業界でも定評のあるHacobuのシステム開発力に加えて、パッケージとして販売するのではなくソフトウエアの機能をインターネットを通じたサービスとして提供する「SaaS型」を採用することで、より現場における問題の特性に適した形での解決につなげられる構成が強みだ。

「2強」に続く個性派システム、独自路線を前面に出したサービスも

「2強」が印象的な今回のランキング。とはいえ、3位以降も物流業界で定評のあるサービスがランクインしている。

3位のモノフル「配車プラス」(33.8%)は、情報のデジタル化により日々の配車業務の効率化や担当者間・拠点間での情報共有を支援するシステム。さらに、配車プラスを利用する他の企業や求荷求車事業者とのシームレスな求荷求車サービスを受けられるところが、モノフルならではの特徴と言えるだろう。

モノフルが展開する配車業務のなかで、「配車計画」と「配車手配」の機能を基盤に、順次機能を拡張。トランコムと連携した突発的な求車ニーズに対応する「スピード求車」など、強みである求荷求車サービスを活用した利便性の高い輸配送システムが支持を集めている。

4位にランクインしたのは、ライナロジクス「LYNA」(ライナ、33.1%)。「LYNA自動配車」は、AI(人工知能)アルゴリズムの活用により、日々の配車計画を自動で作成するシステム。独自のAI技術を駆使して最適な車両台数や配送ルートを瞬時に算出できるのが特徴で、経験の浅い担当者でも最適な配車計画を迅速に作成できる仕様が支持を集めている。

数多くのロジスティクス現場で鍛錬されたAI技術を基軸とする「組み合わせの最適化」の発想で、輸配送業務の効率化を支援。独自の手法で解決につなげるシステムとして、今後さらなる注目を集めそうだ。

5位の日立物流ソフトウェア「ONEs LOGI」(ワンズロジ)は、顧客ニーズの把握から導入、稼働後のサポートまで一貫して対応できる体制が強みである、物流業界向けソリューションシリーズ。輸配送管理システムを中心に配送計画や動態管理を主軸とする機能が特徴だ。一貫したサポートを売りとするだけあって、丁寧で汎用性も確保したシステム開発は特筆もの。現場の信頼感を勝ち得ている。

群雄割拠の状態にある輸配送システム、ランキングは物流現場の問題認識を反映する

6位以降も、個性的で実用性の高いシステムが続く。Azoop(アズープ)「トラッカーズマネージャー」(11位、22.3%)や、スマートドライブ「SmartDrive Fleet」(スマートドライブフリート、14位、20.6%)など、システム関連のスタートアップによるサービスが市場を席巻する一方で、「ZENRIN(ゼンリン)ロジスティクスサービス」(17位、19.1%)を展開するゼンリンなど主軸事業を応用して参入を果たしているプレーヤーも名を連ねる。パナソニックや東芝など電機メーカーグループがシステム関連ビジネスの一環としてサービスを提供しているケースもあり、まさに群雄割拠の状態になっている。

(イメージ)

そもそも輸配送管理・計画システムは、物流現場を支える荷物を「運ぶ」業務の効率化を支援する取り組みだ。サプライチェーンを構成する各要素のなかでも、荷物の輸配送は社会インフラとしての「血液」に例えられる機能だ。ドライバーや各種管理者をはじめとする多くの従事者が介在することからも、物流業界における問題点を色濃く反映する領域であると言えるだろう。

それゆえに、物流DXの真価が最も評価されやすい分野でもある。業界を問わず様々なバックボーンを持つ企業が参入。輸配送業務の効率化という共通の目標にたどり着くために、ありとあらゆるアプローチでシステム開発を競う姿は、まさに物流DXが黎明期から本格的な競争期に踏み出したと実感する。

今回のランキングは、2強体制が明確になった一方で、それを追うサービスが次々と控える層の厚さを感じさせる結果となった。現場の問題認識は今後、社会における物流ニーズのさらなる高度化や環境負荷低減を意識した輸送モードの変革、さらには「新しい生活様式」の時代を反映した輸配送体系の変貌など、既成概念を覆すダイナミックな動きに伴って劇的に変化していくだろう。

こうしたドラスティックな変化に柔軟に対応できるシステムが、これから生き残りさらに進化を遂げていくのだ。その意味で、輸配送管理・計画システムの勢力図は、その時代における物流現場の問題認識を把握する高精度な参考資料になる。

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