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多用途提供で物流施設の概念変える『HYPERSPACE/LOGISTICS』、目指すは「地域共生」

最小区画350坪の大型施設、アライプロバンス葛西

2022年8月30日 (火)

話題東京都の東端に位置する江戸川区東葛西。旧江戸川の西岸沿いで80年近くにわたって操業を続けてきた金属加工工場の跡地が、新発想の物流施設に生まれ変わる。その事業主は、金属加工工場を1世紀以上にわたって営んできたアライプロバンス(東京都墨田区)だ。

総合不動産業に業態を転換するとともに、新井鉄工所から商号も変更。その第1弾となる事業として、千葉県浦安市の自社工場跡地にマルチテナント型物流施設「アライプロバンス浦安」を2021年10月に稼働。2番目の開発プロジェクトとなるのが、江戸川区東葛西の「アライプロバンス葛西」だ。

▲「国際物流総合展2021」で盛況なアライプロバンスのブース。「葛西」についても紹介した

東京ビッグサイトで9月13日から4日間開催される物流関連の見本市「国際物流総合展2022」で、初めて公式にアライプロバンス葛西の具体的な計画を明らかにするアライプロバンス。そこで訴求するのは、東京都の城東地区を中心に金属加工業を展開してきた老舗企業ならではの、物流事業者としての「地域貢献」への思いだ。

東京の東端に誕生する大型物流施設、ことし12月に着工

アライプロバンス葛西は、南北に広がる3万5039.63平方メートルの敷地の南側にマルチテナント型の「A棟」、北側に「B棟」を計画。A棟の建築面積は1万8994.98平方メートルでことし12月に着工、2024年6月に完工する予定だ。B棟については、特定のテナントの要望に応じて建設し棟全体を賃貸する「BTS型」として整備する方針で、A棟の完成後に具体的な計画を進める。

▲アライプロバンス葛西の完成イメージ

A棟は鉄骨造の地上5階建てで、延床面積は8万7122.30平方メートル。計4層で構成し上層の4階と5階をメゾネットタイプで提供する仕様だ。4階までアクセスが可能なダブルランプウェイを整備し、10トンベースで128台のトラックを収容できる。さらに構内に10台分のトラック待機スペースと113台分の駐車場まで整備すると聞けば、東京23区の市街地にある物流施設として破格の規模であることが分かるだろう。

物流にこだらない物流施設の狙いは「価値空間の提供」、コンセプトは『HYPERSPACE/LOGISTICS』(ハイパースペース・ロジスティクス)

こうした規模の話は、アライプロバンスがこの葛西の新拠点で実現したいテーマのごく一部でしかない。「訴求ポイントは、物流を核としたあらゆる用途に適応した『価値空間』の提供です」。アライプロバンスの新井太郎・代表取締役専務は、アライプロバンス葛西の位置付けとして「多様な業務空間」の提供拠点とする方針を強調する。

▲アライプロバンスの新井太郎・代表取締役専務

アライプロバンスは、具体的にどんなイメージを思い描いているのか。具体的なデザインはこれから詰めることになるが、コンセプトは既存の「物流施設」の概念を打破することだ。新井専務は具体的な活用事例として工務店や電気設備企業など資材の保管を必要とする事業の事務所のほか、スタジオや研究室など一般のオフィスビルでは対応しにくい用途への浸透を図りたい考えだ。

「都心にオフィスを構えながら郊外に物流拠点を置いている事業所は、東京近郊では特に多いでしょう。こうした事業者に1か所の拠点で事業を展開できるメリットを訴求することで、新たな空間活用の可能性を提供する。これがアライプロバンスの実現したい『新しい発想の物流施設』なのです」(新井専務)

地域ニーズを踏まえた驚きの「最小区画350坪」

こうした新発想の物流施設。とはいえ、倉庫としての活用を意識した取り組みにも、もちろん注力している。その最たるものが、物流業界でも最小レベルの小分け区画の提供だ。

コンセプトである”HYPERSPACE/LOGISTICS”が「ロジスティクスビジネスにおける新しい空間の貸し方」を意味していることからも、アライプロバンスによる小分け区画(ミニマム分割)への強い思い入れが伝わってくる。

▲アライプロバンス葛西の全体平面図

ワンフロアで1万3000平方メートル規模の広さを誇る大型施設であるアライプロバンス葛西のA棟。ところが、1階(1層)とメゾネットタイプの4階・5階(4層)を除く2階(2層)と3階(3層)は、最小区画が1157.81平方メートルと、わずか「350坪」の極小区画を提供できる仕様としているのだ。一般的な郊外型物流施設の最小区画が2000坪から3000坪であることを考えれば、相当小さな区画での賃貸が可能であることが分かる。

▲「数百坪の規格を求めるニーズ」に応える超小型区画へのこだわりを語る新井専務

アライプロバンスがこうした「超小型区画」にこだわる狙いはどこにあるのか。「アライプロバンス浦安のプロジェクトで、引き合いのあった企業から小さい区画について多くの要望が寄せられたのです。浦安では2000坪程度を最小区画としていましたが、数百坪の規格を求めるニーズが非常に高いことが分かったのです」(新井専務)

第1号の物流倉庫案件だった浦安で得た教訓。続くプロジェクトである葛西A棟では、こうしたニーズを反映した柔軟な区画の提供を実現する。アライプロバンスが総合不動産業者として持続的な成長を遂げるために必要な要素とは何か。その答えの一つが、顧客さらには顧客になりうる事業者のニーズを抽出するとともに、それを現場に反映させることだった。

アライプロバンスがランドスケープ・デザインで目指す「地域への恩返し」

アライプロバンスが既存の物流施設プロジェクトとの明確な差別化を図る取り組みは、こうした機能面だけにとどまらない。それは、地域との共生だ。

▲アライプロバンス浦安に続きランドスケープデザイナーを務める菅原大輔氏

「ランドスケープ・デザイン」。自然と文化を組み合わせて景観を描く取り組みを指すこの言葉は、アライプロバンスが一貫して念頭に置く、物流施設プロジェクトにおけるキーフレーズだ。アライプロバンスは、葛西A棟におけるランドスケープデザイナーに、アライプロバンス浦安に続いてSUGAWARADAISUKE建築事務所の菅原大輔氏を選定。「旧江戸川に面した地形を生かしながら、アートオブジェを配した庭園や緑道を計画するなど、地域との共生を実現できる『物語る風景』を目指す」(新井専務)という。

▲「アライプロバンス浦安」入り口。葛西でもアートオブジェを配した庭園や緑道を計画する

葛西A棟におけるこうした地域共生の取り組みとして特筆すべきなのが、敷地の西側に隣接する商業施設と東側を流れる旧江戸川河川敷を結ぶ緑道の整備計画だ。商業施設と葛西A棟への動線が生まれることにより、葛西A棟の従業員の就労環境の確保はもちろん、商業施設や河川敷、近隣の公園も含めた一帯のさらなる活性化に貢献する狙いだ。敷地内に東西の緑道を設けることで、防災・避難経路としての効果も見込む。

これがアライプロバンスの描く地域貢献策なのであり、「この地で80年近くにわたって金属加工業を展開してきたアライプロバンスとしての『恩返し』の思いも込めている」(新井専務)のだ。

いよいよ動き出す、アライプロバンスによる東京23区での大型物流施設開発プロジェクト。その色彩は、これまでの物流倉庫における既成概念との差別化を図るとともに、「物流にこだらない物流施設」という新しい発想を訴求することで、物流業界に今までにない潮流をもたらそうとしている。その試金石となるのが、今度の国際物流総合展になりそうだ。

アライプロバンス葛西プロジェクト詳細