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開幕直前インタビュー/北條英・事務局長

業界の「現在地と将来」イメージ描く国際物流総合展

2022年9月7日 (水)

話題東京都江東区の東京ビッグサイトで9月13日から4日間開催される「第15回国際物流総合展2022」(Logis-Tech Tokyo 2022)。東京ビッグサイトを会場とするレギュラー展としては4年ぶりの開催となる。国内最大の規模を誇る物流関連の見本市は、この4年間で生じた物流業界を取り巻く環境の変化を色濃く反映した内容となりそうだ。さらには、物流ビジネスの発展を促す見本市の「あるべき姿」を提示する機会としても注目される。今回の国際物流総合展はどんな物流・ロジスティクスの将来像を描き出すのか。北條英・事務局長(日本ロジスティクスシステム協会理事・JILS総合研究所長)に聞いた。(編集部・清水直樹)

▲第15回国際物流総合展で事務局長を務める日本ロジスティクスシステム協会理事・JILS総合研究所長の北條英氏

業界の課題をリアルに把握できる場に

今回の国際物流総合展は過去最大の出展者数を見込むなど、これまでにない盛況を期待されている。とはいえ、その内実は従来とは大きく異なる。新型コロナウイルス感染拡大を契機とした企業活動のスタイルもさることながら、見本市の果たすべき役割も変貌している。むしろ問われているのは、こうした変化に適応した形で、物流業界の現在地と将来のベクトルを明確に示せるか否かだ。

──今回の国際物流総合展は、過去最大の規模となる見通しだ。

北條 史上最多の526社が計2597ブースを展開する予定だ。来場者数も過去最多の8万人を想定している。コロナ禍が未だ収束しない状況ではあるものの、経済活動の回復がある程度進んできたことも、追い風になるだろう。しかし、今回の国際物流総合展がこれまで以上に注目を集める要因は、コロナ禍からの回復だけではないと考えている。

──その要因は何か。

北條 物流ビジネスに対する問題意識が、これまでになく高まっていることだ。今回の国際物流総合展における出展ブースのテーマ動向は、「脱炭素」「物流の2024年問題」「グローバルサプライチェーン」「DX」「SDGs」のキーワードで表現できる。いずれも4年前にはほとんど物流業界で語られることのなかったテーマではないだろうか。つまり、物流業界の抱える諸問題は、最終的にこうしたテーマに収斂(しゅうれん)されると考えるべきだ。

──見本市の果たす役割もこうした問題認識を反映して変化を迫られそうだ。

北條 国際物流総合展の来場者は、自社の現場で抱える問題を解決する方策を求めている。一方の出展者は、こうした来場者に解決策を提示することによりビジネスにつなげる思惑も当然あるのだが、同時に業界内における最新のトレンドや新たな課題を把握する絶好の機会でもあるはずだ。自社の強みである機器やシステム、サービスを披露するだけでなく、業界で話題になっている課題を適時に把握できる場を創出すること、それが見本市の役割になってきていると実感する。

共同出展の増加が示唆する「ストーリー」での問題解決策

国際物流総合展は、国内における物流業界の動向を映し出す最大の舞台だ。その出展動向からは、業界で生まれている新たな動きが垣間見えるという。

──過去最多の出展ブースが集まる今回の国際物流総合展。特徴的な動きは。

北條 複数の企業・団体による共同出展が増えたことが最大の特徴だろう。見本市といえば、1社が個別にブースを出したり登壇したりするのが一般的な姿だった。今回は2社や3社で連携してブースを構えたり講演に臨んだりするケースが目立ち、新しい見本市の風景になろうとしている。

──こうした風潮が生まれた理由として考えられることは。

北條 各企業がコンポーネント(構成要素)となって相互に連携することで、一連の課題解決策を提示する動きが、物流業界でも広がり始めたのだろう。来場者が抱える問題は、決して単一の要因で構成されるものではなく、さまざまな要素がからみ合っている。とりわけ物流というビジネスは社会インフラであるシステムそのものであることから、こうした傾向はより強いと考えられる。いわば「点」ではなく「ストーリー」で解決策を示す手法だ。そこに欠かせないのが「全体最適」の発想であり、単純にロボットを1台導入すれば済む「部分最適」では対応できないからだ。

──今回の国際物流総合展では、こうした動きにどう対応するか。

北條 今回の国際物流総合展では、来場者が自らの問題認識に基づいて訪問するブースや講演を選択する動きがさらに強まると考えられる。先ほど掲げたキーワードでもわかるように、物流業界における問題認識の類型化が進んでいると考えられるからだ。国際物流総合展の公式ウェブサイトでは「課題から探す」アイコンを用意。ジャンルごとにそれぞれの課題を多く設定して、合致する可能性のあるブースの紹介ページに誘導する仕掛けを設けている。共同出展・登壇に対応した取り組みの一つと言えるだろう。

「経営」の観点で物流を語る契機に

近年の物流業界における目まぐるしい変化は、将来における国内の物流・ロジスティクスの方向性に決定的な影響を与える――。そんな見方が産業界で広がっている。業界最大の見本市である国際物流総合展は、こうした将来の物流・ロジスティクスの姿をどこまで示すことができるのだろうか。

──今回の国際物流総合展で、訴求したいメッセージは。

北條 物流・ロジスティクスに「経営」のトレンドを注入していく、そんなきっかけにしたいと考えている。社会に不可欠なインフラとしての認識が広がってきた感もある物流だが、未だに産業界全体における物流領域の位置付けは「コスト」の域から脱却できていないと感じている。「物流は経営戦略の一環である」と考える経営者がもっと増えれば、現場の問題認識もさらに的確なものとなり、結果として物流全体の最適化を促すことになる。その動機付けとして国際物流総合展が位置付けられれば、さらに意義深い存在となりうる。

──若い世代への理解促進も不可欠だ。

北條 新たなアイデアとして、学生を国際物流総合展に招待して物流に係るさまざまな取り組みを学ぶ機会を創出してみたい。物流という機能に経営トレンドをもたらすには、まずは物流業務そのものの理解を促す必要がある。物流という仕事を身近に感じてもらうことも見本市の役割の一つであり、業界の発展に寄与する取り組みであるはずだからだ。