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国交省、10月から車輪脱落事故防止キャンペーン

2022年10月3日 (月)

▲(左から)新品のホイールナット、劣化したもの(出所:国土交通省)

行政・団体国土交通省は10月1日、大型車ユーザーらに適切なタイヤ脱着作業を周知するため、車輪脱落事故防止を呼び掛けるキャンペーンを始めた。車齢4年以上の大型車ユーザーにダイレクトメールを郵送し、ホイールナットの適切な保守管理について緊急点検を行う。大型自動車メーカー4社と連携した取り組みで、期間は2023年2月末まで。

対象は18年9月30日以前に登録された大型車38万台。点検の結果、劣化したホイールナットの交換が必要な場合、メーカー4社から左側後輪分の新品のホイールナットを無償提供する。

同省によると、21年度に発生した車輪脱落事故は20年度比8件減の123件で、64%が冬季(11月-翌年2月)に集中している。車輪脱落事故による人身事故は5件発生している。

国交省によるタイヤ着脱時における保守管理の緊急点検、業界は揺らぐ信用への「危機感」を持ってほしい

深夜の高速道路のサービスエリア。駐車場には大型トラックが整然と並び、ドライバーが車外で歓談したり運転席で仮眠したりしながら、束の間の休息のひとときを過ごす。そのなかで、タイヤの状態をチェックする作業を黙々と進めるドライバーを目にして、その背中から乗務員の使命感が伝わってくると同時に、日本の誇る輸送品質の真髄を見た思いがしたものだ。

国交省が、大型車の車輪脱落事故の増加を踏まえたホイールナットの緊急点検を実施する。近年、確かにタイヤの脱輪事故が増加傾向にある。ことし1月12日には、群馬県渋川市の国道17号を走行中の大型トラックから左後輪の2本のタイヤが外れて、うち1本が歩道の男性を直撃する事故も発生している。

運送現場にとって、高齢化が進んでいるのは乗務員だけではない。商売道具であるトラックについても、経費を削減するために更新を遅らせるケースも少なくない。とはいえ、車齢に関係なく通常の整備をきっちりと行うのは当然の話。法定の手順は最低限のことであり、それ以上にトラックの整備を抜かりなく行うことで、貨物の最適な輸送と乗務員の安全、さらには道路での安全走行を実現できるのだ。

(イメージ)

国交省がこうしたトラックの点検作業の浸透に率先して乗り出すのは、歓迎すべき話なのかもしれない。しかし、果たしてそうだろうか。トラック運送業を営む上での基本というべきタイヤ着脱時の保守管理を当局に指導されて強化する。運送事業者にとって、それはプライドが許さない「干渉」とは映らないのだろうか。陸上選手にとって試合前のスパイクの調整と同じ意味合いだろう。冒頭で紹介したサービスエリアでタイヤを点検するドライバーなら、絶対に許せないに違いない。

国交省のこうした取り組みは、運送事業者による自主的な保守行動への信頼が薄らいでいることの裏返しだ。運送事業者は自らの業界全体の「危機」と捉えて心機一転、原点に返って業務に携わるべきだ。それが実現して初めて、社会のインフラの一翼を担う運送事業者の役割を果たせるに違いないからだ。(編集部・清水直樹)

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