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物流関連企業の各種製品・サービスも相次いで受賞

「アライプロバンス浦安」、グッドデザイン賞に選定

2022年10月7日 (金)

▲2022年度グッドデザイン賞に選ばれた「アライプロバンス浦安」。正面に広がる庭は四季の植物を楽しめるスペースに(出所:アライプロバンス)

認証・表彰日本デザイン振興会は7日、「2022年度グッドデザイン賞」の受賞者を発表した。物流関連では、アライプロバンス(東京都墨田区)のマルチテナント型物流施設「アライプロバンス浦安」(千葉県浦安市)外構部分におけるデザイン構築案件「浦安物流倉庫プロジェクト」(バス待合所、ランドスケープ)などが選ばれた。

アライプロバンス浦安は、「物流施設のイメージを変える」とのスローガンを掲げて景観にも配慮した斬新なデザインを採り入れたことが評価された。物流施設の外構部分におけるデザイン性が評価される機会は珍しく、業界における物流施設開発の新たな潮流となる可能性もありそうだ。

1903年創業のアライプロバンスは、35年に新井鉄工所として設立。石油・天然ガス掘削機器をはじめとする金属加工業を展開してきたが、2020年の総合不動産業への業態転換に合わせて商号をアライプロバンスに変更した。その後は物流施設の開発に注力。その第1号物件が、自社工場の跡地を再開発して21年10月に完成したアライプロバンス浦安だった。

▲菅原大輔氏

アライプロバンスは外構部の設計にあたって、国内外で数多くの受賞歴がある建築家・デザイナーである、SUGAWARADAISUKE建築事務所の菅原大輔氏をランドスケープデザイナーに起用。外構部デザインの当初計画を抜本的に見直し、「『無機質』『3K』(きつい・汚い・危険)といった物流施設のイメージを変える、明るくスタイリッシュで、わくわくするような施設」をイメージしたコンセプトを設定した。

路線バスの待合所を含めた外構部分に「庭」を配置。建屋の周囲に自然な雰囲気を重視した意匠を採り入れるとともに、正面だけでなく裏側の東京湾に面した部分にも植生を施すなど、従業員の就業環境の確保や来場者への心地よい接遇シーンの演出につなげている。ともすれば殺風景な印象になりがちな湾岸倉庫エリアの景観に、新たな憩いのムードをもたらす効果も見込んでおり、街づくりの要素も意識したデザイン構成としているのが特徴。物流施設の概念をも変えるような斬新な設定に挑んでいる。

▲バス待合所と一体化した外構部のデザイン構成は、周囲に安らぎを与える景観をも創出している

▲施設の奥には、植栽とともに海に面した休憩スペースも

グッドデザイン賞の審査にあたっては、こうした物流施設におけるデザイン性を重視することにより、施設の関係者に快適で創造的な空間を提供した成果が高く評価された。

アライプロバンスは「今後も地域に根ざした総合不動産会社として、人と街との結び付きを意識しながら、社会に向けた新たな価値を創造していく」とコメントした。

デザインの優れたさまざまな製品・サービスなどに贈られるグッドデザイン賞は、国内で唯一の総合的デザインを評価・推奨する機会だ。工業製品からビジネスモデルやイベント活動など幅広い領域を対象としている。

▲ファシルの社会貢献型災害対策の取り組み「シェアする防災セット」

物流関連案件では、アライプロバンスのほかに、東日本旅客鉄道(JR東日本)の新幹線・特急列車などを活用した高速輸送サービス「はこビュン」(グッドデザイン・ベスト100)、ファシル(静岡市駿河区)の社会貢献型災害対策の取り組み「シェアする防災セット」(同)、イノフィス(東京都新宿区)やミズノのアシストスーツ、トラスコ中山の問屋によるエンドユーザー直送ビジネス、LOZI(ロジ、名古屋市中区)のモバイルトレーサビリティーアプリなどが選ばれた。

物流施設の新たな価値を生むプロセスとして「デザイン」を位置付けたアライプロバンス、その真価をどう創出していくかが注目だ

物流施設を展開する上で、「デザイン」という概念をどう位置付けるべきか。ともすれば業界で語られる機会も乏しかったこの命題。7日に発表された2022年度グッドデザイン賞で、ひとつの「解」が示された。

物流施設を活用したビジネスを展開するにあたり、付加価値を提供するために注力すべきポイントは何か。開発事業者が抱く最大の難題だろう。都市部の幹線道路を走れば、まず探すのに困ることはないであろう物流施設。数ある候補のなかから自社の物件を選んでもらうためには、ライバルと比べた「差」「違い」「強み」を明確にしなければならない。

物流施設の業界で絶対的な差別化ポイントとして認識されてきたのは、立地と面積だろう。特に立地については、サプライチェーンという概念が重視されるようになって重要性がより高まった。

荷主企業は、主要港湾や大消費地へのアクセス性だけでなく広域輸送や中継輸送を意識した候補地選定を重視。扱う商材に応じた機動的な物流拠点を設定する動きも加速するなど、その価値を見定める着眼点は変化してきている。保育所の設置や休憩施設の充実、さらには地元の地域コミュニティーとの共生といった概念は、まさに荷主企業にとって従業員獲得における強力なエンジンとなるだろう。

付加価値の認識における変貌は、開発事業者にとっても同様だ。立地や機能といったハードの部分における差別化とともに、入居企業に対するよりよい就業環境の提供は、もはや欠かせない価値となっている。持続的な成長が求められる社会の創出を実現するにあたって、こうしたソフト面での取り組みは実務的な機能とは次元の異なる付加価値そのものなのだ。そこに着目したのが、アライプロバンスだった。

アライプロバンスは、2020年7月に事業内容を金属加工業から総合不動産業に転換。老舗企業である一方で、物流施設開発は「新たな挑戦」の舞台だ。そこで存在感を創出し付加価値を提供するには、他社との圧倒的な差別化が不可欠だった。差別化といっても、決して独りよがりなものではダメ。業界の潮流を先取りした、ビジネス拡大効果をもたらすものでなければならない。その帰結が、第1号物件であるアライプロバンス浦安における施設面での「デザイン性」の追求だった。

冒頭の命題。アライプロバンスは物流施設ビジネスにおけるデザインの位置付けとして、新しい付加価値の創出に向けたプロセスという「解」を示し、それがグッドデザイン賞という形で開花したのだ。アライプロバンスは、それをどのように果実としていくのか。「解」の正しさが証明されるのはこれからだ。(編集部・清水直樹)

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