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神戸港中計案、「選ばれ続ける総合物流港」目指す

2022年10月20日 (木)

(イメージ)

行政・団体神戸市は19日、向こう10年の間に神戸港が目指す方向性を示す「神戸港中期計画案」を策定したと発表した。港湾・産業分野で目指す姿として「グローバルサプライチェーンの中で、世界から選ばれ続ける総合物流港」を掲げたが、市が公表した概要には阪神港に関する言及はなかった。

開港150年を迎えた2017年に「30年先を見据えて今後、神戸港が目指していくべき将来像」として神戸港将来構想を策定しているが、新型コロナウイルス感染症の拡大でサプライチェーンの変容が顕在化。世界的なカーボンニュートラルによる脱炭素化の動き、自然災害の頻発・激甚化など、社会を取り巻く環境が大きく変化しつつあることを踏まえ、将来構想に確実につなげていく意味を込めて中期計画を策定することにした。

具体的には「港湾・産業」「にぎわい・都市」の2分野に分けて取り組むテーマを設定。世界から選ばれる総合物流港を目指しつつ、コンテナターミナルの一体利用・多様な海上輸送モードの充実(在来貨物)、倉庫などの物流施設の更新、高度化・カーボンニュートラルポート(CNP)の形成、AI(人工知能)ターミナル形成、DX(デジタルトランスフォーメーション)を通じた生産性や労働環境の向上・耐震、高潮・津波対策、神戸港港湾BCPの充実——などの施策を列挙した。

また「にぎわい・都市」分野では「非日常の空間を提供し、国内外からの来訪者を魅了するみなと」の実現に向け、都市の魅力を高め交流人口を誘発する施策や、海路・空路を生かしたまちづくりを意識した神戸港のあり方を提示した。

▲神戸港将来構想内のロジスティクスターミナルのイメージ(出所:神戸市)

神戸港中計、かつての繁栄の「復権」から脱却した施策が必要だ

奈良時代の大輪田泊をルーツに、近代以降は世界有数の国際港湾として隆盛を誇った神戸港。戦後の高度経済成長期には世界有数のコンテナターミナルとして君臨し、東アジア各地からの貨物の中継拠点としても存在感を発揮した。

しかし、それも今や昔。こうした東アジアにおける貨物中継機能は近隣諸国の戦略港湾にその座を奪われ、1995年の阪神・淡路大震災による被災が追い討ちをかける形となった。現在も国際戦略港湾に指定されているものの、政府が特定港として定めた阪神港の一角を成す関西の主要港湾の地位に甘んじているのが実情だろう。

そんな神戸港のここ10年先までの中期計画案が策定された。管理する神戸市が、開港150年を迎えた節目となる2017年に定めた「神戸港将来構想」の推進に向けて、足元のさまざまな社会情勢を踏まえた取り組みを示した形だ。しかしその中身を見ると、どうも時代錯誤を感じてしまう。神戸市には、かつての栄華を誇った世界に冠たる神戸港のイメージが残像としてくっきりと残っているに違いない。そう感じずにはいられない。

神戸市は、神戸港が「世界から選ばれ続ける総合物流港」になることをスローガンに掲げている。いわば「復権」を目指すというわけだが、そこには「多様な海上輸送モードの充実」「倉庫等の物流施設の更新、高度化」など、およそ具体性に乏しいありふれたキーワードが並ぶ。そもそも、現在の神戸港は「世界から選ばれている」港湾なのか。むしろ、阪神港の枠組みのなかで関西経済に貢献する方策を掲げるのが、現実的な役割ではないか。

神戸港が関西経済を象徴する存在であること。それは間違いない。京浜港と比べてもアジアに近い阪神港の一員として、独自の存在感を発揮することができれば、新たな神戸港の歴史を紡ぎ出すことができるかもしれない。それには、神戸港の復権という発想から脱却する必要がありはしないか。神戸市の意見募集(パブリックコメント)にも、神戸港だから実現できる取り組みのヒントになるアイデアが寄せられることを期待している。(編集部・清水直樹)

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