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三菱自の軽商用EV、市場変化で異例の再販売

2022年10月21日 (金)

記事のなかから多くの読者が「もっと知りたい」とした話題を掘り下げる「インサイト」。今回は「三菱自が軽商用EVミーブ再販、脱炭素化需要増で」(10月14日掲載)をピックアップしました。LOGISTICS TODAY編集部では今後も読者参加型の編集体制を強化・拡充してまいります。引き続き、読者の皆さまのご協力をお願いします。(編集部)

▲三菱自動車が販売を再開するミニキャブ・ミーブ

荷主三菱自動車がワンボックスタイプの軽商用EV(電気自動車)、ミニキャブ・ミーブの一般販売を1年8か月ぶりとなる11月24日に再開する。いったん終了モデルとした車種を復活させる異例の対応をとったのは、脱炭素化の流れに乗って運送会社などの顧客ニーズが高まってきたからだ。軽商用EVは、自動車業界にとって無視できない市場に成長しつつある。

認知度上がらず、いったん生産終了

三菱自によると、ミニキャブ・ミーブは2011年12月に発売し、配送業などを中心に販売してきたが、21年3月末に生産をいったん終了。その後は一部の法人向けに在庫の販売を続けてきた。発売からことし9月末までの累計販売台数は1万489台。初年度と2年目に年間2000台以上が売れたが、その後下落し、16〜18年度は年間300台以下に低迷していた。この頃はまだ充電設備の整備が進んでおらず、車種の認知度も高まらなかったことを同社は原因に挙げている。

商品ライフサイクルの観点からいったん販売中止を決定したが、19年度から販売台数がV字回復してきた。同社への引き合いは急増し、19年度は796台、20年度は1456台まで販売が回復。会社の方針も転換し、生産と一般販売の再開を決めた。

背景には、気候変動対策の強化を求める国際世論の高まりと、それを受けた日本の政府や経済界の動きがある。企業はESG(環境、社会、ガバナンス)を観点にした投資家の動きに敏感になり、温室効果ガス(GHG)抑制など脱炭素化の動きを強めた。20年10月には政府も、2050年までのGHG排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル宣言」を出した。自動車ユーザーのEVシフトは加速化してきており、物流分野ではトラック輸送によるCO2排出の抑制、中でもラストワンマイル配送などの脱炭素化が急がれ、運送関係者らの目を国内メーカー唯一の軽商用EVに向けさせた。新型コロナウイルス禍によるEC(電子商取引)の急拡大も、宅配車両の増強・更新ニーズを高め、同車種の販売を押し上げたとみられる。

潮目変化で販促に力

潮目の変化を受けて三菱自は、ミニキャブ・ミーブの営業に力を入れている。ことし3月には東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された脱炭素経営EXPOに出展し、3日間で1000人が来場、同車種に対する関心の高さが確認できたという。11月には大阪での展示会にも出展する予定だ。

また、同社は日本郵政グループや東京電力グループとも協力して、地域の郵便局を舞台にミニキャブ・ミーブの実証実験も行っている。太陽光発電など再生可能エネルギーと組み合わせ、電池残量や走行のデータを分析している。このほか、他の40社とも同車種の実証実験や試験導入で合意した。

再販売するミニキャブ・ミーブは、車両の安定性を確保する装置や、暗くなると自動点灯するライト、荷室ユーティリティーナットを追加した程度で、基本的な性能は従来と同じだ。ただ、販売店に商用軽EVの販売とアフターサービスのノウハウが蓄積されてきているのが強みだ。同社は販売店との協力を強めることで、総合的な商品力を高められるとみており、再販後の月間販売台数を400台と想定している。

軽商用EVを巡っては他の軽自動車メーカーもモデル開発を進めており、遠からず市場に投入される見通し。普通商用車も含めると、中国メーカーや日本のスタートアップ企業による格安の外国製EVが日本市場に入ってきており、国内勢とのシェア争いが本格化するのは必至だ。

▲ミニキャブ・ミーブの荷室

ミニキャブ・ミーブは総電力量16キロワット時の駆動用バッテリーと小型モーターを備え、1回の充電当たりの航続距離は133キロ(WLTCモード)。回生ブレーキ機能によって減速時にモーターが発電機として働き、回収した電気を駆動用バッテリーに戻して充電する。AC200ボルト(15アンペア)での普通充電では7時間で満充電となる。最大積載量は350キロ。荷室に大きな段ボール箱(600×450×600ミリ)を14個積める。2シーターと4シーターの2タイプがある。(編集部・東直人)