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Jアラート発出「直後」の行動計画策定を急げ|提言

2022年11月4日 (金)
LOGISTICS TODAYがニュース記事の深層に迫りながら解説・提言する「Editor’s Eye」(エディターズ・アイ)。今回は、「北朝鮮ミサイル発射による『Jアラート』対応のあるべき姿」をテーマとした提言です。気になるニュースや話題などについて、編集部独自の「視点」をお届けします。

国内政府は3日朝、北朝鮮からのミサイル発射を受けて、「Jアラート」(全国瞬時警報システム)を通じて宮城、山形、新潟の3県に警報を出した。この日は「文化の日」で祝日だったが、ドライバーや倉庫の荷役従事者をはじめとする物流現場に休みはない。現地で事業を展開する各社は警報の発出時に一時、業務を中断して情報の確認を急いだものの、政府による「実際には日本の上空を通過していなかった」との発表などを受けて速やかに通常の態勢に戻すなど、物流サービスへの影響はほとんどなかった。

「何事もなく、胸をなで下ろした」(宮城県の運送会社)のが、物流現場の本音だろう。しかし、本当にこのまま安心してばかりでよいのだろうか。韓国と北朝鮮の対立やロシアによるウクライナ侵攻の例を出すまでもなく、地政学的リスクがこれほどまでに高まっているなかで、もはやミサイルが本土に落下して大きな被害が発生する可能性を具体的に想定した取り組みが必要なのではないか。

(イメージ)

10月4日に続くJアラートの発出。北朝鮮のミサイル発射に伴う発出は2012年からの10年間で6回目となる。気になるのは、情報伝達のトラブルなど警報システムの正確な稼働を巡る議論が百出するなかで、「警報発出後の具体的な行動」についての検証に関する動きが表に出てこないことだ。

ミサイル発射が「有事」にならなかったことは、決して必然ではない。社会に不可欠なインフラである物流は、自然災害をはじめとする有事における復旧・復興を支えた。東日本大震災における物流事業者の取り組みは、その象徴だ。もしもミサイルが国内に着地し被害が発生する事態になれば、物流業界は社会の維持と被災地の復旧・復興に向けた取り組みを即座に始めなければならない。そのために自社や関係先における従業員の安否や拠点の稼働の可否を速やかに確認する必要があるのは言うまでもない。いわゆる「発災直後」の対応だ。

今回のJアラート発出を契機として、物流業界で警報後の具体的な対応を調査する取り組みを始めてみてはどうだろう。国土交通省や各地のトラック協会などが主体となり、輸送事業者をはじめとする物流関連企業におけるアラート発出後の動きを把握することで、「有事」に取り組むべき事柄を時系列で具体的にまとめるのだ。

ミサイル落下は、地震と同じく予測できる事象ではない。裏を返せば、こうした突発的な有事だからこそ、初動の的確さがその後の復旧・復興の成否を分けるのだ。先進的なIT企業を中心に、こうした災害対応支援サービスの開発も進んでいる。北朝鮮の動向が懸念される今こそ、こうした発災直後の具体的で標準的な行動計画の策定を、官民の関係者が連携して整備すべきだ。安穏とJアラートを「おおかみ少年」と揶揄(やゆ)している場合ではない。(編集部・清水直樹)