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LOGISTICS TODAY Special Reports「物流施設特集/東京都心編」<下>

広域の城北、新PJ相次ぐ城東、好立地の城南

2023年1月16日 (月)

話題LOGISTICS TODAYが全国各地の物流施設にかかる荷主や物流事業者の問題認識とその解決策、注目する物件などについて分析・解説する「物流施設特集」。今回は東京都心に焦点を当てて、物流施設を取り巻くニーズを探る。ここでは、東京都心の「城北」「城東」「城南」の3エリアについて、既存・新設予定の物流施設に対する関心度をランキングでまとめた。

(イメージ)

前回は、物流関連ビジネスを展開する企業を対象とした独自調査の分析結果として、東京とその近郊で物流拠点の新設・集約・移転を検討する企業のうち、半数超が東京都心エリアを候補としている傾向を紹介した。さらに、特に江東区や江戸川区など東京23区東部の「城東エリア」を重視する傾向も明らかになった。さらに、冷凍・冷蔵倉庫の整備を想定する企業も4割に達するなど、社会における輸送ニーズも反映した機能への関心の高さも浮き彫りになった。

ここでは、東京都心で特に物流施設の新設・集約・移転を検討する候補地として注目の高い「城北」(板橋区・足立区・文京区・豊島区・荒川区)▽「城東」(江東区・江戸川区・台東区・葛飾区・墨田区)▽「城南」(大田区・港区・品川区・目黒区)--の3エリアについて、既存または新設予定の物流施設を抽出。関心のある物件にかかる回答に基づきランキングでまとめた。

板橋区を中心に大規模物件への期待大きい「城北」

まずは、東京都北部の荒川沿いを中心とした城北エリア。トップは「板橋トラックターミナル再開発計画」(17.6%)。続いて「板橋区舟渡物流施設計画」(仮称、14.7%)がランクインした。いずれも新規物件だ。

板橋トラックターミナル再開発計画は、東京都や日本政策投資銀行、物流企業などが出資する日本自動車ターミナル(東京都千代田区)が運営する、長距離用の路線トラックと配送用トラックの積み替えや一時的な荷物保管を行う拠点「板橋トラックターミナル」で計画されている、二層式バース専用施設の建設工事プロジェクトだ。

▲板橋トラックターミナル(赤が再開発部分、出所:日本自動車ターミナル)

ターミナルに並ぶ南北4棟ずつのバース施設のうち、北側に二層式バース施設を2棟建設することでバース施設を北側に集約。南側に約5万平方メートルにも及ぶ物流施設の開発用地を創出する。二層式バース施設の整備が終了する2025年度以降を見据えて基本計画を策定する予定で、延床面積15万平方メートル規模と東京都内で最大級の物流施設用地の確保が可能となる。具体的な計画イメージは未定だが、早くも業界の期待を集めており、今後のプロジェクトの行方に注目だ。

日鉄興和不動産(東京都港区)が開発する板橋区舟渡物流施設計画は、東京都心と埼玉県を中心とした首都圏北部を網羅する広域配送を想定した物流拠点。9万1000平方メートルの敷地に延床面積20万平方メートルを超える大型施設を建てるプロジェクトで、23年に着工。24年の完成を目指している。近隣に板橋トラックターミナルや卸売場が立地するなど、物流倉庫ビジネスの展開におけるポテンシャルの高さも魅力のひとつになっている。

▲足立入谷冷凍冷蔵倉庫(出所:日本自動車ターミナル)

城北エリアでは、こちらも新規物件の「足立入谷冷凍冷蔵倉庫」(11.8%)も注目を集める。さらに野村不動産「Landport(ランドポート)板橋」(10.3%)▽大和ハウス工業「Dプロジェクト川口領家B棟」(8.8%)▽野村不動産「川口領家ロジスティクスセンター」(8.8%)--などが評価されている。埼玉県川口市の領家地区は、東京都と境を成す荒川の北東岸に位置。工業団地や住宅地の広がるエリアで、首都高速道路のを介した東京都心や首都圏広域のアクセスがよい。

湾岸部での新規開発進む「城東」、内陸部の物件は機能で勝負

続いては、東京23区の東側に位置する城東エリアだ。湾岸部と内陸の下町で対照的な市街地を形成する特徴的な地域。湾岸部を中心とした物流施設の開発が加速している。この城東エリアにおける関心度で上位を独占したのは、「東京23区の市街地で最後の大型物流施設」の呼び声も高いあの施設だ。

「アライプロバンス葛西A棟」(20.6%)と「アライプロバンス葛西B棟」(19.1%)。アライプロバンス(東京都墨田区)が、前身の新井鉄工所が営んできた東京都江戸川区の旧江戸川西岸にある金属加工工場の跡地で開発するプロジェクトだ。

金属加工業として1世紀を超える歴史を持つ老舗企業ではあるものの、業態転換した総合不動産業者としては”新規参入”の立場だ。それゆえに、物流施設の開発ビジネスにおける戦略は、ずばり「新しい発想の物流施設」の実現だ。

▲アライプロバンス葛西の完成イメージ(出所:アライプロバンス)

アライプロバンス葛西は、南北に広がる3万5039.63平方メートルの敷地の南側にマルチテナント型の「A棟」、北側に「B棟」を計画。A棟の建築面積は1万8994.98平方メートルで22年12月に着工、24年6月に完工する予定だ。B棟については、特定のテナントの要望に応じて建設し棟全体を賃貸する「BTS型」として整備する方針で、A棟の完成後に具体的な計画を進める。

▲アライプロバンス葛西A棟の完成イメージ(出所:アライプロバンス)

A棟は鉄骨造の地上5階建てで、延床面積は8万7122.30平方メートル。計4層で構成し上層の4階と5階をメゾネットタイプで提供する仕様だ。4階までアクセスが可能なダブルランプウェイを整備し、10トンベースで128台のトラックを収容できる。さらに構内に10台分のトラック待機スペースと113台分の駐車場まで整備すると聞けば、東京23区の市街地にある物流施設として破格の規模であることは明白だ。今回の調査における高評価も、それを裏付けている。

城東エリアでは、いずれも新規物件の大和ハウス工業「Dプロジェクト東雲」(14.7%)▽ヒューリック「ヒューリックロジスティクス葛西」(13.2%)--も上位に。ともに物流施設の開発が盛んな湾岸エリアの物件だ。さらに、日本GLP「GLP新砂」(13.2%)▽SGホールディングス「Xフロンティア」(11.8%)▽日本GLP「GLP東京II」(11.8%)--と、既存物件も立地条件や機能に応じて高く評価されているようだ。

この城東エリアは、新規物件が多さが特徴だ。今回の調査では、大和ハウス工業「DPL南砂」(仮称)「DPL浦安III・IV」といった湾岸部に加えて、内陸部でもリノベーション物件として話題を集めるプロロジス「プロロジスアーバン東京押上1」も注目されているようだ。

物流立地ポテンシャルで圧倒的な高さを誇る「城南」

最後に、東京都心の南側に位置する城南エリアにおける関心度について分析する。城東の湾岸部と比べれば物件数は少ないものの、東京国際(羽田)空港や東京港への圧倒的なアクセス性の高さを背景とした新規物件の開発も進むなど、目の離せないエリアだ。

今回の調査で最も高い関心を集めたのは、「東京レールゲートEAST(イースト)」(20.6%)。日本貨物鉄道(JR貨物)が東京都品川区で三井不動産と共同開発したマルチテナント型物流施設で、22年7月に完成した。国内最大の貨物ターミナル駅である「東京貨物ターミナル駅」の構内におけるプロジェクト。20年に先行稼働した「東京レールゲートWEST(ウエスト)」とともに、JR貨物グループ各社の機能を結集した施設として話題を集めた。

▲右手前が東京レールゲートEAST、左奥が東京レールゲートWEST(出所:三井不動産)

ちなみに、東京レールゲートWESTも14.7%と城南エリアで3番目に高い関心度を示しており、両棟の完成による相乗効果の創出に向けた期待も大きいようだ。

▲物流ビル新A棟(仮称、出所:東京流通センター)

東京レールゲートEASTに次いで高く評価されたのが、東京流通センター「物流ビル新A棟」(仮称、19.1%)。23年8月末に完成を予定する地上6階建てのマルチテナント型物流施設だ。開業から半世紀以上が経過した、東京都心を代表する物流施設として高い存在感を誇ってきた「物流ビルA棟」を建て替えるプロジェクト。東京流通センターが1967年より手がける東京湾岸の平和島地区での物流施設運営のリニューアル事業は、17年6月に完成した「物流ビルB棟」に続く今回の新A棟プロジェクトにより、新たな局面を迎えることになる。

東京湾岸の老舗物流拠点である東京流通センターの平和島地区プロジェクト。他を圧倒する良好な立地的優位性を生かしながら機能面を刷新することで、プロジェクトの新たな境地を開拓することになる。東京湾岸エリアにおける物流施設の開発の構図に少なからず影響を与えることになると期待されている。

これら3物件の他にも、プロロジスの手がける「プロロジスパーク東京大田」「プロロジスアーバン東京大田1」、さらに日本自動車ターミナル「ダイナベース」など、立地面だけでなく機能面でも話題の物件がそろう。物流施設の立地条件では東京都心のなかでも他エリアと比べて優位性が高いことから、新規プロジェクトに対する話題性も強い。それが城南エリアの特徴だ。


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