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商業店舗を活用した物流拠点、その制約を「強み」に変えて新たなスペース提案へ

逆転の新発想「プロロジスアーバン東京辰巳1」

2023年1月5日 (木)

▲「プロロジスアーバン東京辰巳1」完成イメージ。撤退した業務用スーパーマーケットの店舗をそのまま生かして物流施設に用途を変更した(出所:プロロジス)

話題東京都心で物流施設の集積が加速する江東区の湾岸エリア。首都高速道路湾岸線や国道357号といった道路網の整備により、東京国際(羽田)空港や成田国際空港へのアクセス性の高さが注目されるようになった。湾岸部の住宅や鉄道といった都市開発も進んだことにより、弱点とされてきた従業員の確保力も強化。新型コロナウイルス感染拡大に伴い停滞していた経済活動も復活に向けて動き出すなかで、物流施設開発プロジェクトが一気に開花した印象だ。

江東区の湾岸部で、物流施設の開発適地として注目されているのが辰巳エリアだ。首都高速道路の湾岸線と都心へ向かう深川線が交差するジャンクション(JCT)を形成。都心内陸部へアクセスしやすい立地は、湾岸部のなかでも優位性の非常に高い地区として認知されるようになってきた。

こうした辰巳地区のポテンシャルに着眼したのが、米プロロジスだ。撤退した業務用スーパーマーケットの店舗をそのまま生かして物流施設に用途を変更。外装などの工事を経て2023年3月に物流施設「プロロジスアーバン東京辰巳1」として稼働する。プロロジスが国内外で展開する、都市部での効率的な配送サービスを支援する物流施設ブランド「プロロジスアーバン」シリーズの一つとして、都心部における活発な物流施設ニーズに対応する。

産業集積だけではない強み、それは「通勤利便性の高さ」

プロロジスが江東区を含めた東京都心湾岸部の物流施設群のなかで、プロロジスアーバン東京辰巳1に優位性を求めるポイント。まずは立地条件のよさだ。

「東京駅から5キロ圏内に位置し、あらゆる産業が集積する場所への配送拠点として、極めて利便性が高い立地が最大の特徴です」と話すのは、プロロジスの加藤晋二郎・開発部ディレクターだ。

▲プロロジス開発部ディレクターの加藤晋二郎氏

立地産業と称される物流施設ビジネスだが、とりわけ辰巳エリアはその性格が強い。道路網の拡充や都心へのアクセス性の高さから、産業集積が顕著になるとともに、湾岸部におけるタワーマンションなどの住宅開発が急加速したことも、こうした立地優位性をより高めている構図だ。

「JR京葉線の潮見駅から徒歩10分という通勤利便性も、立地面でのさらなる強みに繋がっています。東京メトロ有楽町線の延伸による新駅の開設も予定されるなど、将来的なポテンシャルも期待できる絶妙なエリアです」(加藤氏)

立地の強みを引き出す機能面での「逆転の発想」による創意工夫

プロロジスアーバン東京辰巳1の立地面における圧倒的な強みを武器に、荷主企業などに積極的なアプローチを進めるプロロジス。それを裏付ける要素となるのが、施設面における創意工夫だ。

プロロジスがプロロジスアーバン東京辰巳1を同シリーズに位置付ける意味合いは、その立地条件によるところが大きい。とはいえ、その機能に都市型物流施設ならではのメリットを提案できない限りは、立地がいくら適していても宝の持ち腐れになってしまいかねない。

プロロジスアーバン東京辰巳1プロジェクトは、商業施設として設計された既存建物のコンバージョン案件であるがゆえに、一般的な物流施設の仕様にはない、解決すべき点があった。

「こうした課題に対応する取り組みとして発案したのが、弱点を『強み』として訴求する戦略でした」(加藤氏)。物流施設として不足するスペックがあるならば、その範囲内で差別化できるサービスを提供できないか。まさに「発想の転換」に挑んだのだ。

▲3階にある冷凍・冷蔵庫。業務用スーパー時代に食品の低温保管スペースとして活用していた設備を生かす

ここで着目したのが、最上階の3階にある冷凍・冷蔵庫だ。業務用スーパーの運営事業者が食品の低温保管スペースとして活用。設備も比較的新しいことから、プロロジスアーバン東京辰巳1における戦略的なサービスとして活用できないかと考えた。

「辰巳というエリアは、銀座や錦糸町といった飲食店が集積する場所へのアクセスに極めて高い優位性があります。物流施設として十分に活用できる構造になっている1階をラストワンマイル配送拠点とするならば、上階は低温での配送が必要な食品や医薬品などの商材の保管スペースやセントラルキッチンとしての使い方も訴求できます」(加藤氏)

立地条件やニーズに対応した「空間」提供拠点に

プロロジスにとってプロロジスアーバン東京辰巳1プロジェクトは、22年9月に完成させた「プロロジスアーバン東京押上1」に続く、既存建造物の改修による戦略的な開発案件だ。短距離配送に適した機動力の高い拠点が求められているにもかかわらず、新たな開発用地の獲得は難しい。さらには新たな「空間」活用ニーズも高まっており、自由な設計で大空間オフィスとしても利用できる--。

「辰巳エリアを対象とした市場調査で、医療関係の倉庫需要も多いことが分かっています。また、大規模展示場や放送局も多いことから、映像関係のスペースを求める声も寄せられています。こうした立地ならではのスペース拠点として訴求していく考えです」(加藤氏)

都心ならではのこうした要請に対して新たな「解」を示すことにより、新たな物流施設開発のあり方を訴求する。今回のプロジェクトは、プロロジスのしたたかな戦略を象徴している。

「プロロジスアーバン東京辰巳1」施設詳細
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