ロジスティクススーパーやコンビニエンスストア(CVS)でチルド食品の販売が堅調に推移するなか、「チルド物流のエキスパート」を掲げるダイセ−エブリー二十四(愛知県一宮市)は、特色のある共同配送システムにより、着実に事業の規模とエリア拡大を進めている。定期幹線便を融合させることで、荷物を広範囲から集荷できる独自の共同配送ネットワークを構築。物流の効率化が叫ばれるなか、自社の配送ネットワークを社外に公開する「オープン化戦略」が奏功し、顧客がさらに顧客を呼ぶという好循環で成長を続けている。1983年の発足から40周年を迎え、ビジネスモデルの特徴や足元の業績、共同配送に関する取り組みなどについて田中孝昌社長に聞いた。(編集部・安本渉)
──ビジネスモデルについて。
基本的に弊社の顧客である荷主は食品メーカー。メーカーから運賃をもらって複数から荷物を預かり、共同配送で小売・流通が運営する物流センターまで運んでいる。定期幹線便がダイセーが運営する物流センター間を走ってつながっている点が特徴だ。
──具体的には、どのような配送フローか。
例えば、あるメーカーの工場で荷物を積み込む。そして、また別のメーカーで荷物を積み込んで、各所から集めた荷物を自社センターに集約する。さらに別の幹線便から届いた荷物も一緒に載せて、納品先が運営する各センターへと配送する。共同配送はコスト削減だけでなく、ジャストインタイムへの対応といったサービスレベルの向上にも貢献できる。
(出所:ダイセーエブリー二十四)
──自社の配送ルートや時間をまとめた「主要納品先一覧」を公開している。
トラックが「どこを何時に出て、どこへ何時に到着するのか」というスケジュールを公表している。2007年4月に初版を発刊してから年2回改定し、現在では2000冊を印刷して顧客に配布しているものだ。最新版では毎日共同配送で納品している8000か所のうち、量販店、CVS、運送会社などの物流センターを中心に主要な916か所を隠さずにオープンにしている。
──掲載されている情報が非常に詳細だ。
エリア別に出発・到着のセンター名から、発着時刻、車両トン数まで載せている。通常、こうした情報は企業のコアコンピタンスで公開しないのが一般的だが、逆にオープンにすれば、さまざまなリクエストが集まってきて新たな取引やビジネス創出にもつながる。私たちの存在意義(ビジネスモデル)は、この付加価値をどう上げていくかということに尽きる。
──昨今の物価高の経営面への影響と価格転嫁は。
各種コスト上昇に伴い、取引先に価格転嫁はお願いしている。主要な取引先である食品メーカー側も、2024年問題に強い危機感を持っているので、値上げの話をいままで以上に真剣に聞いてくれていると感じている。一方で、弊社としては「コストが上がったから、その分値上げしてください」という考え方でお願いはしていない。物流課題の解決につながる「提案」をセットにする形で、付加価値を付けて値上げをお願いしている。
──具体的に、どのような「提案」をしているのか。
例えば、食品メーカーが抱えている物流課題に対して、物流のプロとして寄り添い、解決策を提示することだ。メーカーは物流費の削減だけでなく、納品先からの物流の効率化に関する要望を受けていて、頭を悩ませていることも少なくない。昔に比べて指定時間の幅が短くなったり、急に納品時間帯が昼夜逆転してしまったりとケースはさまざま。コスト以外に関する相談を受けるケースは着実に増えている。
──そうした取り組みが、昨年末に経済産業省などから優良事業者として表彰を受けた。
江崎グリコ、バローなどとともに人工知能(AI)を活用して配送ルートの適正化に取り組んだものだ(※記事下に関連記事あり)。チルド物流は納品条件が厳しいため、効率化が難しいと言われる。配送ルートは担当者の経験に基づいて属人的に作成されてきたが、これをAI配車システムに切り替える試みを行った。空きスペースを有効活用するなどして、車両台数の削減や積載効率向上、ドライバーの働き方改革、CO2削減につながった点が評価された。今後もメーカーや着荷主側とともに「生配販」一体となって進めていければ。
──物流の24年問題を含めて、ドライバーの人材確保や労働環境の改善は。
収入の問題を抜きにして語ることはできないテーマだが、かつては「たくさん働き、たくさん給料もらいたい」という人が多かった。そんな時代と現代は異なり、家族との時間や趣味などワークライフバランスを重視する人も多い。そうしたニーズに会社として、どのようにアジャスト(適合)していくのか。一方で、他の業界からドライバーへ転職する人も多くなっていると肌身に感じる。せっかく異業種から物流業界へ来てくれた人が、安心してハンドルを握ることができる仕組みを確立していく必要がある。
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■LOGISTICSTODAYのYou Tube公式チャンネル物流報道局では、ダイセーエブリー二十四の田中孝昌社長が登場する「明日の一手」を近日公開予定です。
チルド物流の現状とエリア戦略、創業40周年に関連した取り組み、「納品先一覧」が誕生したエピソードなどここでしか聞けないトークが満載です。乞うご期待ください。
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