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生まれ変わる「物流のまち」づくり〜平塚・施設特集

2023年7月20日 (木)

話題平塚市は神奈川県の東西のほぼ中央、相模平野の南端に位置し、茅ヶ崎市の西側に広がる。市の東側は相模川を境とし、西部丘陵地を除いて全体になだらかな地形と、3.8キロにわたってのびる相模湾の風景は、人気の「湘南エリア」としてベッドタウン需要も高く、総人口26万人と、街自体が大きな消費地でもある。

▲JR平塚駅前のロータリー

市内の鉄道駅はJR東海道線平塚駅のみだが、市周辺の主な駅から市内へのバス移動も整備されているなど都心へ向かう不便さはない。平塚駅周辺から海へとつながる南部エリアは、夏の海水浴をはじめとした観光地需要も高く、駅ビルやショッピングモール、広い国道沿いには大型チェーン店が立ち並ぶなど、ファミリー層に人気の住宅地でもある。

厚木ブランドと肩を並べる物流ポテンシャル

神奈川の中央を東西に分断する相模川周辺エリアには物流施設が集まっており、以前の特集でも紹介した厚木市を筆頭に、座間、海老名など、いずれの街でも新たな物流施設の建設が続く。

平塚市も、旧海軍工廠跡地や相模川西岸に沿って工業地域が発展。化学工業、金属製品製造業、輸送用機械器具製造業などの工場が集まり、特に、自動車関連の工業地域としての特色をもっていることから、その物流を支える事業も発展した。

都心部から40キロ圏内。戦後すぐに区画整理からの街づくりに取り組んだことで市内の道路が整備され、平塚駅を中心に碁盤の目のように道路が配置されているほか、JR線と交わる道路も立体交差化され、東名高速・厚木インターチェンジ(IC)や新東名・厚木南IC、圏央道・寒川南ICなど広域配送への接続点としての使い勝手も良い。市の北端は、物流ブランドとして名高い厚木市と接するだけに、物流エリアとしての優位性は厚木と同等、エリアによってはそれ以上とも言える。

市北部再開発の中心となる物流施設

戦後復興からの再開発では、特に平塚駅周辺から海岸沿いにかけての一帯が、市の発展を担う中心エリアとなっていた。湘南のイメージをベースにした開発の意図も大きかったのだろう。

しかし、現在、新たに厚木市に隣接する市の北端エリアを、街の中心地へと開発するプロジェクト「ツインシティ整備計画」が進められている。

▲バス停「ツインシティ大神」

神奈川県が中心となって進めているツインシティの整備とは、平塚側大神地区と、相模川対岸で東海道新幹線新駅を誘致する寒川町倉見地区とを新たな道路橋(仮称ツインシティ橋)でつなぎ、両地区の機能分担と機能連携が図られた一体的な都市を整備するプロジェクト。全国との交流連携の窓口となるゲートを形成し、環境と共生するモデル都市をめざすとしている。「ツインシティ基本計画」を2000年3月に策定し、さらに具体的な都市づくりを進めるために、02年4月に「ツインシティ整備計画」を策定、それに基づいた新しいまちづくりが着々と進められている。

平塚市側ではこのツインシティ大神地区を市の「北の核」として、経済を活性化する新たな原動力と位置付けている。もともとこの地区の7割ほどが田畑であったが、区画整理事業を経て、公共施設や複合商業施設、学校、公園、住宅エリアを計画的に開発し、大きな雇用の創出が期待されている。ツインシティ大神地区はプロジェクト完成時の居住人口3300人、就業人口6000人を計画している。15年からスタートした事業は、29年に全エリアの完成を目指す。

物流は、平塚開発エリアの「心臓」

そしてこの計画の初期段階からその中核をなすのが、物流施設である。

大神地区の中央を南北に貫く国道129号線を中心とし、接続する道路の整備と仮称ツインシティ橋の設置によって、南北および東西への移動の利便性が格段に上がる。その立地から、厚木ICへの接続では厚木市北部の物流施設群よりもむしろアクセスが良く、新東名の全線開通となれば、中部・関西エリアとの接続点としての価値がますます大きくなるのは間違いない。行政がリードする整然とした「まちづくり」の骨格のなかで、巨大施設がその心臓となって動き始めた状況だ。


▲ツインシティ大神地区に建ち並ぶ物流施設群

このツインシティ大神地区に、三井不動産はMFLP平塚II(19年10月竣工)「同III」(23年3月竣工)を、大和ハウス工業はDプロジェクト平塚(21年3月竣工)とDPL平塚(22年8月竣工)、また日本GLPは20年11月のGLP平塚Ⅰ竣工を皮切りに、今年6月の「同II」、8月の「同III」竣工で大型拠点を形成するほか、信濃運輸も配送拠点を構えるなど、物流各社が集結する様は圧巻である。

今まで南が「街の中心」としての役割を担ってきたが、この開発計画により平塚市はもう一つ「物流のまち」としての顔も持つことになる。



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平塚市では、海軍の火薬工場を中心とした戦争需要から産業を発展させてきたが、それゆえに戦時下は苛烈な攻撃対象ともなった。

1945年の「平塚大空襲」では市域の戸数の7割が消失する大きな被害を受けたという。しかし、翌年には早くも「平塚都市計画事業土地区画整理事業」に着手して街の再建に取り組み、51年に第1回として開催した「湘南ひらつか七夕まつり」は、平塚復興まつりを発展させたものとして街を代表する観光行事にまで成長した。コロナ禍前の2019年開催では、3日間合計で155万人を動員している。2年間の休止を挟んで、昨年より街の風物詩も再開し、これでようやく市民の日常も戻りつつある。

平塚にとって、この七夕祭りは、ただ観光客が集まるイベントではなく、街の「戦後復興」と密接に結びついているからこそ、特別な意味を持っている。湘南海岸、地元サッカーチーム、カップルの聖地・湘南平など、平塚の個性を打ち出す「まちづくり」にかける思いの強さもまた、「復興」の記憶と無縁ではないのかも知れない。

新たな街の顔となるツインシティ開発地区では、ことし1月に「まちびらき」が行われた。4月には「ジ・アウトレット湘南平塚」が開業し、物流施設に囲まれたショピングモールにたくさんの人々が訪れるなど、新しい「まちづくり」は続く。小学校も昨年この地区に移転開校され、子供たちの声が物流のまちを活性化する。やがて、ツインシティ育ちの子供たちが成長する時、物流のまちの巨大施設群を故郷の原風景とする、新しい世代の平塚市民が誕生するのだろう。



▲(下)THE OUTLETからの眺望。右奥には物流施設が見える。


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