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輸送中のよもやま話/ドライバー日誌第32回

2023年9月19日 (火)

話題スマートフォンの地図アプリケーションを活用して、目的地までの行程と所要時間を把握する。最新の道路状況は良好で、1時間15分で到着できるようだ。まずは一安心だ。

大阪国際(伊丹)空港を出発し、高速道路のインターチェンジを目指す。助手席に陣取るベテランドライバーとともに、往復で2時間半の「旅」が始まった。

(イメージ)

天気は快晴。青さを増す山々が美しく映える。絶好のドライブ日和と言いたいところだが、荷台には精密機器を2台積んでいる。それを忘れてはならない。改めて気を引き締める。

目的地である兵庫県の物流センターへの道中、ベテランドライバーと、軽貨物のあるべき姿について語り合った。聞けば、こうした法人向け輸送は、新型コロナウイルス禍を契機として大幅に落ち込んだという。収束傾向が顕著な現状にあっても、こうした法人の輸送需要はコロナ禍前の水準には程遠いと感じているという。

むしろ、物流に対する新たな価値観が生まれて、サービスそのものが変質してしまったのではないか。ベテランドライバーの分析は、まさに正鵠(せいこく)を射ているのではないだろうか。

(イメージ)

軽貨物という仕事に携わるようになり、実感することがある。それは、一部の識者を名乗る人間が主張する「軽貨物に対する需要が無限にある」という仮説は、決して実情を踏まえたものではないことだ。むしろ、法人向けの軽貨物輸送需要は、ベテランドライバーの指摘するような苦境にあるのが現実だと感じずにはいられない。「社会における物流需要が堅調である」との仮説は、なのは、消費者向け輸送を含めた全体像なのであって、軽貨物に特化した論調ではないのだ。

ここを見誤れば、軽貨物の担い手は今後、就業機会を喪失してしまいかねない。消費者向け輸送需要についても、無限に拡大を続けることはあり得ない。むしろ、人口減少時代に突入して、いずれは縮小局面に直面することも想定しておかなければならない。社会に不可欠なインフラである物流という機能は、あらゆる現象を敏感に反映する存在であることを、改めて認識しておく必要があるだろう。(つづく)

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