話題衝撃への配慮が必要な、医療用精密機器の輸送案件。私を含めた2人のドライバーによる共同業務である。荷台に2台の機器を積み込んだものの、それですぐに出発とはいかない。
軽バンだけでなくトラックでも同じだが、荷台に荷物を載せる際には、原則としてロープやバンドで固定しなければならない。輸送中に信号や料金所などで停止する際に、どうしても揺れが発生して、いわゆる「荷崩れ」を起こしてしまうおそれもあるからだ。
今回は、軽バンの荷台に機器が2台。かなりの空きスペースが生じる。ましてや、慎重な扱いを必要とする精密品だ。固定は絶対に必要となる。では、どうやって固定するか。
ここは、ベテランドライバーに相談することにする。「2台の機器をそれぞれ、運転席と助手席に接近させるように置きます。そして、座席のシートと箱をバンドでしばって固定するのです」
そもそも箱を荷台で固定するには、何かバンドを通せるだけの固定した部分が欠かせない。がらんとした荷台では、座席の背もたれしかないだろう。もっとも、シートベルトを活用する方法もあるが、今回は箱のサイズを考慮すれば、シートが最適なのだ。
シートから箱を覆うようにバンドを回して、かっちりと固定する。とはいえ、バンドが箱に食い込んで側面を損傷してしまってはどうしようもない。つまり、「最適な」固定の加減が大切なのだ。やや強めに、しかし箱をつぶさない程度に、という絶妙なバランス感覚が求められるのだ。
こうして荷台での箱の固定も完了した。ここでようやく出発となる。とはいえ、決して時間に余裕のある作業ではない。午前11時までに2台の機器を兵庫県の物流センターに届けなければならないのだ。時間との闘いが続く。(つづく)
プロローグに戻る