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「ロジスティクスソリューションフェア2024」2月20日〜21日開催

物流を「変えなきゃ・変わらなきゃ」の決意新たに

2024年1月31日 (水)

話題トラックドライバーの時間外労働の上限規制適用が始まる2024年4月1日まで秒読みとなった。物流危機への対応待ったなしの状況となり、あらためて目標に向けて歩み出すべき局面を迎えている。

2月20日、21日の2日間、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催される「ロジスティクスソリューションフェア2024」は、まさに物流改革の現在地を確認し、その進路を見定める物流展示会となり、1月末時点で80社近い企業が出展を表明、それぞれの領域から提案を持ち寄る予定だ。

▲前回開催時の様子



今回この展示会の開催に先立ち、主催する日本ロジスティクスシステム協会(JILS)の理事であり、JILS総合研究所所長である北條英氏と、展示会実行委員長を務める日本電気(NEC)トランスポート・サービスソリューション事業部モビリティソリューション統括部上席プロフェッショナルの武藤裕美氏に話を聞くことができた。物流改革における荷主の課題の大きさをロジカルに説いてきた北條氏と、荷主の立場で改革を進める武藤氏が、24年問題直前での開催の意義、注目すべき課題やこれから物流像などについて、それぞれ違う立場から興味深い知見が語られた。

▲北條英氏

北條氏が24年問題を、「働き方改革関連法案によって24年4月1日以降、トラックドライバーの年間時間外労働の上限が960時間によって発生する物流問題の総称」と端的に定義する。年960時間とはひと月あたり80時間に相当し、北條氏はこれを「過労死ライン」と指摘した上で、「過労死ラインが、今回ようやく上限になろうとしている。そういう産業によって我々が支えられている。この点を本当に重く受け止めなくてはならない」と、日本の物流構造において過度な負担を強いられてきたトラックドライバーの労働環境改善という、当然取り組むべき事項を先送りしてきた問題であることを再認識することを促す。

さらに北條氏は、目下は24年問題に関心が集まるが、30年には運輸部門での温室効果ガス削減(13年度比マイナス35%)、50年にはカーボンニュートラル達成と環境問題における公約実現も、より切迫した対応課題となることに言及。現場に任せっきり、委託先に丸投げにしていた課題を、あらためて、経営戦略としてのロジスティクスで解くこと、そのために必要な形に社会を変容させておくことが重要であると訴える。

▲武藤裕美氏

武藤氏は、個社では取り組みが難しい物流改革と環境対策を、サプライチェーン(SC)全体で対応することで解決の糸口をつかむことが必要だと語る。これまでの発荷主主導の物流だけではなく、「発荷主に加えて着荷主、それを支える物流事業者まで三位一体となって連携していく。川上からエンドユーザーにまで対策を広げていく余地はまだまだある」(武藤氏)と話し、DX(デジタルトランスフォーメーション)による効率化でまだまだ推進できる改革があるとする。物流危機を広めることから、消費者レベルでも課題解決を進めるなど、物流の各階層で何をするべきかを考える段階となっている。

物流危機対応こそが、「経営課題」の最優先事項

業界として取り組むべきトラックドライバーの働き方改革は、それによって引き起こされる24年問題として、物流事業者、荷主、ドライバー、消費者など立場ごとに大きな影響を及ぼす。

ドライバーにとっては労働時間の減少が収入減に直結し、ドライバーのなり手不足が加速することも考えられる。それにともなって物流事業者においても売上、利益の減少も予想される。

荷主への影響について北條氏は「1日当たりに送ることができる荷量、届く荷量が減ってくる。今までのようにものが調達できなくなり、生産計画の見直しなどが必要になってくる」ことや、「作ったものがこれまでのように届けられなくなり、荷主にとって多大な影響が出る」とSCへの影響を説明する。

さらに、コロナ禍前の19年と比べて道路貨物運送業の輸送量がトンベースで今年度には14%、30年には34%不足するというNX総合研究所の推計データを、「14%不足は、1週間に5日届いていたものが4日になるということ、34%では5日だったものが3日しか届かなくなるということだ」(北條氏)と解説し、避け難い物流の変化を明示する。

▲2030年度までの物流需給ギャップの推計(クリックで拡大、出所:NX総合研究所)

一方、武藤氏は荷主企業であるNECの立場から、「メーカーとしては、これまでなるべく在庫を持たないような設計をしてきたが、例えば、調達する部材がこれまでのように届かないとなれば、そのために多めに在庫を持たなくてはいけなくなる。販売の観点では、ユーザーに届けることに支障が出てくるため、より一層、前もってのマネジメントや設計変更が必要になる」とSC全域での変革が必須であると語る。

「このままではいけない」ことが、各々の立場からあらためて提起された形だ。

規制の立法化、荷主の取り組み加速で期待される商慣行の見直し

24年に引き起こされる課題とそれによる影響の大きさは明らかだ。では、その対策としてどこから取り組むべきなのか。

北條氏は、あらためてロジスティクスによる経営の見直しと、政策パッケージで行政が示した規制法の立法化によって効率化の取り組みを加速させること、さらにそれによって前進する物流改革の取り組み、進ちょくを注視して、社会全体で改善を促していくことを、取り組みの優先事項に挙げる。また、政策パッケージにおける改革の大きな柱である「商慣行の見直し」において、多重下請け構造の改革など、業界の構造的問題においても規制措置を前提とした改善への動きが加速することに期待を寄せる。

武藤氏からは、荷主企業として求められる対応を検証し実行に移すことの大切さが共有された。NECでも荷主主導での積極的な取り組みとして、政策パッケージの要請にも対応する「CSCO」(Chief Supply Chain Officer、最高サプライチェーン責任者)を設置するなど、物流改革を進めている。

また、1社での物流網の維持が難しくなっている現状に触れ、物流の維持のための協働が急務とし、「国内での企業同士で連携した対応が必要」(武藤氏)と強調、具体的な対策として、パレット化やモーダルシフト、共同配送などの活用が、ますます進展するであろうとする。

標準化見据え、最新テクノロジーをどう活用していくのか

山積する物流課題に、効率化ソリューションをどう活用していくのか、今回の物流展示会でも、数々のソリューションが出展され、テクノロジーへの関心も高まる。

北條氏は物流のソリューションの中で、テクノロジーの占める重みが大きくなってきていることを評価しながらも、それを使う人々、提供する人々の標準化意識の変容も必要だとする。フィジカルインターネットの実現を見据えて「今こそ標準化を猛烈に、いや、獰猛(どうもう)に推し進める時」と語り、今後、改革の推進における重要な技術として、標準化を推進する「つながる技術」、さらに見える化の技術が重要になってくると指摘する。

武藤氏も「テクノロジーはあくまでもツール。ツールを有効にどう使うかが大事」とし、課題設定や、協調領域での取り組みの進展、共通言語化、オペレーションを含めた標準化へと取り組みが進むことに期待を込めるとともに、現場のデータを集積し、さらにそれを分析しオペレーションに組み込む技術に注目する。

眼前の物流の転機を、チャンスに変える兆しは見えているか

今回のフェアのテーマは、物流界の「転機をチャンス」とすること。「転機」となる業界の現状は共有された。では、それをどう「チャンス」とするのか。

北條氏は、政府主導で規制法が示されたことをチャンスと捉える。「縦割りで、今までコミュニケーションや、情報共有しなかったところに風穴、横穴が開けられる」と、規制法立法化が業界にもたらす変化の大きさを語る。

一方、武藤氏はこれまでの物流課題への個社対応から、「社会全体でやろうという情勢が出てきた。これこそが、ある意味チャンス」と語り、物流危機を通して業界一丸での取り組み機運が生まれたことに、課題解決のチャンスを見出す。

物流24年問題の解を求める人々に、その選択肢を提示する

「ロジスティクスソリューションフェア2024」が、まさにこの時期に開催されることについて、北條氏は「物流24年問題の解の選択肢を提示する」こと、武藤氏は「参加者全員で物流改革を考え、サステナブルな社会形成の場とする」ことを目指す。

▲ロジスティクスソリューションフェア2024の出展分野(クリックで拡大)

フェアの実行委員長の武藤氏は「今回のフェアではコンセプトを一新、『DX』『GX』(グリーントランスフォーメーション)さらに『HRM』(ヒューマン・リソース・マネジメント)を出展分野として設定し、24年と、さらにその先の物流提案が集まる形に。また、多様なソリューションやサービスなどの最新情報をショー&カンファレンス方式で紹介するのも見どころ。2月21日11時からは、LOGISTICS TODAY赤澤裕介編集長によるガイドライン取り組みの実態調査をテーマにした講演も予定している」とPRする。さらに、オンラインによる展示会、「LSF Online」を1月22日より開催しており、リアルの展示会終了後の3月15日まで参加可能な交流の場を用意して、物流課題解決を目指す関係者間での連携も後押しする。

業界の「変えなきゃ」を先導するJILSと、「変わらなきゃ」で行動するNEC。さらに、その思いを同じくする物流事業者が、物流危機対応の前衛で行く先を指し示す展示会となる。そこからそれぞれの課題として何を読み取るのか、業界の一員としてその決意を共有できるのかが、私たちに問われている。