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物流提案の到達点を巡る、最新展示会のあるき方

2024年3月28日 (木)

話題4月からの制度変更に加えて、規制的措置の含む保安改正など、物流業界はまさに風雲急を告げるといった状況。そのなかでの関西物流展開催だけに大きな注目が集まる。

「4月1日を迎えて最初の物流展示会となります。当然、そうした点に興味を持つ方もいらっしゃいますが、むしろ、これからも続く取り組みの通過点として、あくまでも現時点で考え得る最適なサービスを紹介する場として活用されている方が多いように感じます」と語るのは、同展示会の事務局を務める岩本匡史氏である。

▲関西物流展事務局の岩本匡史氏

24年に向けて練り上げられた各種の製品・技術・サービスの中には、すでにユーザーによる運用事例を重ねたもの、運用のなかでさらに新しいサービスを拡張したもの、課題の中から生まれた新しい提案も登場している。岩本氏は「展示会の出展者、出展小間数も毎年拡大しており、今年は373社1046小間と、過去最大の規模となります」と言う。出展者のリピート率も8割程度と高く、「成果を出せる展示会」としての評価も高い。事前来場登録者数も前回比115%で推移しており、来場目標は会期中2万5000人を見込む。

カテゴリーごとの注目は?出展数最多「搬送、仕分け、ピッキング」

今回の出展カテゴリーは、「搬送、仕分け、ピッキング」「パレット・コンテナ、保管機器」「梱包・包装」「AI・IoT、情報システム・ソフトウェア」「産業・運搬車両、関連機器」「保管・輸送・3PL」「物流施設・不動産、建設、自治体」「セキュリティ、リスク対策、BCP」「物流業務支援」「物流機器部品・技術」の10カテゴリーが準備されている。

「10カテゴリーのうち、今回も搬送、仕分け、ピッキングカテゴリーが最多の出展小間数で326小間で展開します」(岩本氏)。物流法の改正に伴って、物流現場の効率化に直接的効果があるこのカテゴリーは、大きな関心も集めることだろう。「特に外国勢が元気という印象があります。各社実機によるデモンストレーションなど、インパクトの強い展示を予定されているようです」(岩本氏)。

ウイルテック(大阪市淀川区)は中国のMultiway Robotics(マルチウエイ・ロボティクス)、新エフエイコム(栃木県小山市)も中国のVisionNav Robotics(ビジョンナビ・ロボティクス)の、それぞれAGF(無人フォークリフト)を紹介するほか、中国自動倉庫ソリューション大手の日本法人HAI ROBOTICS JAPAN(ハイロボティクス・ジャパン、埼玉県三芳町)や、仏の自動倉庫事業の日本法人EXOTEC NIHON(エグゾテック・ニホン、東京都港区)は次世代型自動倉庫システムSkypod(スカイポッド)を紹介するなど、賑やかなアピールとなりそうだ。「さまざまなソリューションや実機を会場で実際に見て比較検討できるのが、展示会の醍醐味です」(岩本氏)

物流施設・不動産、建設、自治体カテゴリーは、小間数増加最多

昨年からの小間数純増数最多となったのは、物流施設・不動産、建設、自治体のカテゴリー。昨年より43小間増加した139小間が準備されており、「主要デベロッパーそろい踏み」(岩本氏)となる予定。24年問題に対応した中継拠点や、冷凍冷蔵倉庫などの提案で盛り上がりそうだ。

プロロジスが、24年問題への回答として用意した、次代の物流ブランド「岡山」の早島インターチェンジ周辺エリアに開発する施設は、新しい運び方に対応する中継拠点として注目の施設。ぜひ、早島エリアの大きなポテンシャルを確認してもらいたい。

シーアールイーは、開発を進める関東・関西・中部の物流適地での新規拠点の紹介だけではなく、同社の全国賃貸大型倉庫データベースを基にした「マーケットレポート」の最新版を会場限定で配布するとしており、倉庫事業全般の相談窓口となりそうだ。

AI・IoT、情報システム・ソフトウェアのカテゴリーも活性化

AI・IoT、情報システム・ソフトウェアのカテゴリーでは、トヨタ自動車やアイシンなど「初」出展企業にも注目してほしいと岩本氏は語る。トヨタ自動車は海上コンテナ輸送の効率化サービス、自動車部品大手のアイシンは配送効率化ソリューションや、共同配送マッチングサービスを紹介する。それぞれの業界で培ったノウハウの物流課題に生かす提案が注目を集めそうだ。

もちろん、すでに物流業界での運用を重ねることでブラッシュアップしたツールならではの最新提案も見逃せない。Azoop(東京都港区)は、提供する運送業務支援ソリューション「トラッカーズマネージャー」を活用した運賃交渉への道筋など、利益最大化できる経営体制作りを提示し、今まさに運送事業者が取り組むべき原価計算による事業体制作りをバックアップする。

また、日商エレクトロニクス(千代田区)は、いまだに書類を基盤にした非効率な貿易業務を、AI-OCR技術などによって生産性向上に導いた、貿易実務DX(デジタルトランスフォーメーション)サービスの現在地を示す。複雑でアナログな貿易実務領域が、新規テクノロジーによって革新的な効率化を実現することを、確認できる場になりそうだ。

その他、京セラコミュニケーションシステム(港区)の開封検知ソリューションなど、まずは会場で話を聞いてみたくなるような出展が多いのもこのカテゴリーの特長。課題解決に導くような、思わぬ「出会い」も期待できる領域ではないだろうか。

保管・輸送・3PL、物流業務支援カテゴリーでの注目は?

その他、岩本氏は、保管・輸送・3PLカテゴリーでのモーダルシフトやコールドチェーン物流の提案、物流業務支援カテゴリーでの、安全・福利厚生などに関するサービスに注目する。「新しい輸送モードや、人材不足への対応など、24年ならではの課題に対する提案が集まります」(岩本氏)。プロロジスと同じく岡山に、新しい拠点を拡張するカトーレック(江東区)も、定温輸送での実績、さらに4温度帯までのノウハウを生かした付加価値のある施設、物流提案を行う。

物流業務支援のカテゴリーでは、物流法の改正にも応える業務改善・経営改善クラウドサービスをデモ画面によって紹介するX Mile(東京都新宿区)の出展にも注目だ。「多重下請け構造の是正」「生産性の向上」などへの取り組みで、大きなヒントとなるかも知れない。

各種セミナーにも注目。次世代提案を学ぶ機会

今回は、出展者セミナーも昨年より1会場増やして、過去最多のボリュームで開催される。「特別セミナーでは、キユーピー、花王、ファンケルなど、注目の荷主企業の物流施策に注目です」(岩本氏)。最終日の4月12日、A会場14時からの特別セミナーには、本誌LOGISTICS TODAY赤澤裕介編集長が、運送会社とトラックユーチューバーとともに運送事業のこれからを語り合うので、ぜひ足を運んでもらいたい。

また、出展者によるセミナーでは、デジタコ、点呼システムを開発するNPシステム開発が、改善基準告示施行後の運送事業者が取り組むべきことについて、運送業務の現場を知る開発者ならではの知見を披露するのも必見である。

岩本氏は関西物流展の来場にあたっては、「ぜひ、ホームページなどでお目当ての企業やサービスを見つけ、事前準備して来場してもらいたい」と語る。同時に、まだ何をやっていいかわからないといった事業者にも、「まずは会場に足を運ぶというアクションを起こすことが大事」と語る。

「この24年は、各社が経営など、自社のあり方自体を見直すきっかけになっていると感じます。それぞれの構造改革から、物流改革につなげる、そんな取り組みが増えており、会場での商談や相談から新たな連携、新たなアイデアが生まれることにも期待したいです」(岩本氏)

24年4月は、関西物流展でのさまざまな提案を吟味できる知見が、どれだけ習得できているのかが問われている局面と見ることもできるだろう。そのための猶予期間で、準備していた事業者とそうではない事業者との差も、この物流展を機にさらに広がっていくのかも知れない。それぞれが当事者としての取り組みをどう進めてきたのか、出展企業の提案を自らの課題にどう取り込むことができるか、まさに5年間の猶予期間での取り組みの成果が試されている。